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海外の指導者たちはなぜトガって見えるのか?

日本の文化・習慣では"ありえない"ことでも、異国では当たり前のように行なわれていることがある。そんな世界の常識の中に、日本サッカーの指導を変えるヒントが隠されているのではないか――。前編では「敬語」という日本の文化が、選手に考える機会を失わせてしまう可能性について言及した。後編では「サッカーを理解する選手」を育成するために海外の監督が考えているポイントの違いについて、引き続き南米と欧州で海外経験のある宮野友輝氏と今井謙太郎氏に聞いた。(取材・文/隈崎大樹 写真/woodleywonderworks

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<<考える選手を育てるのに「敬語」はご法度!?

■南米の指導者は"加点式育成"で長所を伸ばす

ネイマール(ブラジル)、メッシ(アルゼンチン)、スアレス(ウルグアイ)――世界最高峰の実力を持つFCバルセロナ(以下バルサ)では、26人のメンバー中9人もの選手が南米人だ。バルサでは下部組織の育成システムが整い、優秀な選手が育つ環境があるにも関わらず、なぜわざわざ大陸の異なる南米国から選手を獲るのだろうか? それは、南米の選手が欧州の育成方法と異なる"加点式育成"で育ってきたため、タイプがまったく違う選手だからだ。

「私がブラジルで練習試合をしていたとき、チームメイトのFWが果敢にシュートをするものの、なかなかゴールを決めることができなかったんです。10本打ってネットを揺らしたのはたったの1回。私は試合後、監督が彼に9本外したことを修正するようにアドバイスするだろうと思っていました。しかし、実際はまったく逆で、1本のゴールについて『ここはよかった』『もっとこうした方がいいぞ』と言っているのです。日本であれば学校の教育が顕著ですが、『できないことを克服すること、能力を平均化すること』に重きを置いています。ブラジルでは『まずは得意なことにフォーカスし、そこをとことん伸ばす』ことを重視しています」(宮野氏)

たしかに欧州でプレーをする南米の選手は、強烈な"何か"を持っている。冒頭に挙げたネイマールであれば華麗なボールタッチ、メッシなら高速ドリブル、スアレスはゴールへの嗅覚と、プレーに強烈な個性がある。南米では選手の長所をとことん伸ばす指導により、スペシャリストが自然に育つ仕組みが出来上がっているのだ。

■欧州は"はめこみ"指導で組織サッカーを仕込む

長所をとことん伸ばす南米の育成メソッドとは異なる指導法を持つ欧州。こちらはとことん"型にはめる"指導を行なうという。

「これは欧州のチーム、特にスペインの監督に言えることですが、監督は選手に自分の戦術を徹底的に叩きこむんです。そこではプレーに関する"決まり事"がたくさんあります。たとえば僕が練習をしていたとき、監督が笛を鳴らしてフリーズをしました。そして僕に『ケンタロウ、なぜそこにボールを止める? もっと前に運ぶプレーをするんだ』とプレーの修正を求められたのです。そのとき、心の中では自分のプレーは間違っていなかったと思っていました。そもそもサッカーは選択肢がたくさんあるスポーツ。それなのに監督は真っ向から僕のプレーを否定して『このプレーをするんだ』と、あたかもその場面ではそのプレーしか正解ではないような言い方をします。正直はじめは納得がいかなかったですが、いくつかのチームを渡り歩いていくうちに、どのチームの監督も同じように指導するのを目の当たりにし、『これがこの国のサッカーなのか』と納得しました。スペイン人が他の欧州の国に比べ、体格が小さいことも理由のひとつです。ダンプカーのようにチャージをしてくるドイツ人やイギリス人に真っ向から勝負しても勝ち目はありません。だからこそいかにして相手と接触せず、かつゴールへ向かってボールを出し受けするかがスペインサッカーの生命線になるのです」(今井氏)。

ボールコントロールひとつとっても、監督の中では「良いか悪いか」の判断基準が明確にある。そこまで細かくなる理由は、監督がハッキリとした「哲学」を持っているからだ。ここでいう「哲学」とは、「チームの勝利のために選手にどのようなプレーをさせればよいのか?」という問いを、「各ポジションの選手がどのようなプレーをすればよいか」まで掘り下げて考えた末の答えである。

■どちらの育成も監督が責任を負うから成り立つ

南米と欧州の育成方法はどちらもトガり過ぎている感は否めない。しかしそこには監督がチームを勝たせなければならないという厳然とした責任があり、その責任を負うべく監督が自身のサッカー観を突き詰めた結果に過ぎない。

「日本ではなかなかこのようなケースは少ないですが、海外ではアマチュアクラブでも、チームの成績が悪ければ監督が解雇されてしまいます。ですから監督はどうしたら勝利できるかを徹底的に突き詰めて、自分のチームを形成していくのです。かつて私がブラジルで所属していたクラブの監督が、1年間で3回も変わりました、もちろん理由は成績不振です。そのときの責任はすべて監督にあるとされるのが世界のサッカー事情。選手は一切責められることはないんです。選手は100%の力を出してプレーをすることだけに集中すればいい。そうすることで、監督と選手がお互いをリスペクトしながら妥協できない関係を作っていくんですよ」(宮野氏)。

日本では試合に負けると、監督が「走り足りなかったから負けたんだ」と言い、試合後にダッシュをさせるクラブがあると聞く。それは世界の監督から見たら「あいつは軍隊の隊長か? ただの責任逃れじゃないか!」と言われるに違いない。選手が走り足りないと思ったら、それは監督が走るサッカーを教えきれずに試合に挑んだから。選手の気持ちが緩んでいたら、それは監督が選手とのコミュニケーションを怠っていたから。実際にはそこまでではないとしても、監督は「負け」という結果が出た時点で、自分の至らない部分に責任を負わなければならないものなのだ。

日本でも監督と選手の責任をハッキリと分ける環境を作り、監督はチームを勝たせるために自身のサッカー哲学を突き詰めていけば、南米のようなスペシャルな能力を持つ選手や、欧州のような組織サッカーに精通した選手、ひいては日本人特有の"何か"を持った選手が輩出されることだろう。

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