TOP > コラム > 常にポジションを考え、駆け引きし続ける力/小さなFWが生きる道

常にポジションを考え、駆け引きし続ける力/小さなFWが生きる道

8月前半のCOACH UNITED ACADEMYは「小さなFWが生きる道」をテーマに、世界の強国と比べて相対的に小柄である日本の選手が、とりわけFWという苛烈なポジションでいかにプレーすべきかを考える。講師は昨年まで現役でプレーし、2015年5月よりストライカー養成のための『TRE2030 STRIKER ACADEMY』を設立した長谷川太郎氏。167センチというサイズながらJリーグや海外クラブで生き抜いてきた氏の知恵は、ジュニア年代でも"小さなFW"が活躍できるヒントとなるに違いない。(取材・文・写真/澤山大輔)

>>長谷川太郎氏のセミナーは8月10日(月)COACH UNITED ACADEMYで公開! 入会はコチラ<<

20150810_01.jpg

<<「見られずに、見る」ポジショニングの極意

■誰もが岡崎慎司のようにプレーするには

2015年8月8日、イングランド・プレミアリーグ開幕戦。サンダーランド戦に出場したレスターの岡崎慎司は、チームが4得点を挙げる中、記録上は得点もアシストも残さなかった。しかしクラウディオ・ラニエリ監督は、得点もアシストも残さなかった岡崎を最後までピッチに残した。最もゴールに近いポジションであるFWにも関わらず、である。スタメンフル出場ほど、監督からの評価を表わす材料もないだろう。

では、いったい岡崎はどのようなプレーを見せたのか? それを逆説的に言えば、「漫然としたプレーをしなかった」ということだろう。常に最適なポジションを考え続け、ストライドで優る相手に対してスタンディングで待つのではなく視界の外で待ってボールが出る瞬間に目の前に現れたり、味方のFWがシュートモーションに入ると察知するやセカンドボールがこぼれる場所を予測していち早く移動したり、エリア内を斜めに走って背後の味方にシュートコースを空けたり...。結果として表われなくても、岡崎は「結果を出すため」のポジションを取り続けた。

フィジカルで優る外国人相手でも、常に有利なポジションを取り続けることで上回る、少なくとも味方を助けることができる――。そうした質の高いFWの動きに特化したトレーニングを行なっているのが、『TRE2030 STRIKER ACADEMY』の長谷川太郎氏だ。長谷川氏はCOACH UNITED ACADEMYのセミナー【実践編】において、「動きの極意」と題したセッションの中で次のように語る。

「身長の低いFWが相手CBの前でプレーすれば、ボールが入った瞬間に潰される可能性が高いでしょう。しかし、こちらがボールを握っているとき、相手の組織は原理原則に応じてポジションを変えます。その中でいかに相手の背後を取るか、駆け引きをするかが重要です」

そのためにまず重要なのは、「DFと逆に動くこと」だという。

20150810_02.jpg

「例えば上図の右サイドバックがボールを持って、相手4バックがこちらから見て右にスライドしたとき、そのまま漫然と走って受けようとしても出し手は出せません。そうではなく、例えばある程度まで付いて行くフリをして、相手を見ながら斜めに落ちる。DFラインと"逆の動き"をしているので、味方は見つけやすくなります。また、相手の右CBはボールとこちらを同時に視野に入れられず、左CBは私に付いてくると今度は裏のスペースを空けてしまうのでマークに付きづらいのです」

長谷川氏はさらに、引いてボールを受ける際にも工夫が必要だという。

20150810_03.jpg

「引いて受けるとしても、まっすぐ降りて受けようとすると相手CBの視野の中で"見られた"状態になります(上図参照)。こちらはフィジカルで劣るわけですから、その状態になることはなるべく避けたい。となると、例えば降りる前に一瞬裏に抜けるフリをして、相手CBの意識を裏に引っ張った上で斜めに動いて落ちる。そうすると、相手に見られるのではなく相手を見るポジションを取ることができます」

長谷川氏はまた、4バックが相手だとしても「DF4人と対決すると考えず、誰と駆け引きするかを決めることが大事」とも言う。実際、レスターの岡崎は常にぼんやりしたポジションを取らず、誰と対決して誰に付かれないようにするかを考え続けていた。

今回のセミナーテーマはあえて「小さなFWが生きる道」と題したが、190センチのCBがゴロゴロしているヨーロッパでは、岡崎を含めほとんどの日本人FWが「小さなFW」だ。その意味で長谷川氏が展開するここまでの考え方は、日本国内であろうと海外であろうと、身体のサイズで勝負できないすべてのFWにとって有効な処方箋となるのではないだろうか。

折しも2015年の東アジアカップで、日本は2分け1敗の最下位に終わった。得点数は3、FWによるゴールはゼロ。それが敗因のすべてとは言わないが、取るべき選手が得点を取れず「1試合平均1得点」という結果、味方を十分に助けられたと言えない状況は、決して看過できるものではない。安易に"決定力不足"というフレーズに逃げ込むのではなく、FWの動きを細分化して評価する視点が必要だろう。長谷川氏が提示するいくつかのヒントを、この機会にぜひCAOCH UNITED ACADEMYでご視聴いただきたい。

長谷川太郎(はせがわ・たろう)
1979年8月17日生まれ。東京都出身。現役時代のポジションはFW。柏ユース→柏、新潟、甲府、横浜FCなど。2005年にバレー、石原克哉と3トップを組んで17得点をマークし、J2日本人得点王となる。2014年、インド・ムハンメダンFCを退団し現役引退。2015年1月、一般社団法人『TRE2030 STRIKER ACADEMY』を設立、本物のストライカー養成を目指して日夜励んでいる。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
長谷川太郎氏のセミナーを含む
毎月本+過去65本以上が
980円で見放題のオンラインセミナーを公開中!

自宅にいながら"プロの指導法が学べる"コーチのための会員制オンラインセミナー
COACH UNITED ACADEMY(コーチユナイテッドアカデミー)
≫コーチユナイテッドアカデミーとは?