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ドイツ人コーチが考える「トレーニング設定」の原則/ジモン・ペシュコーチの流儀 前編

今年の夏、東京の板橋区・足立区を中心に活動する「ジュニスターサッカースクール」(代表:安英学/横浜FC/元北朝鮮代表)による興味深い取り組みが行なわれた。それが『インターナショナルトレーニング』だ。ドイツのジュニア年代(U-11)の選手6名とコーチが来日し、同年代の日本、コリアンの子どもたちと練習をしつつチームを結成して試合を行なうというこのトレーニングの模様を、前後編2回に渡ってレポートする。(取材・文・写真/鈴木智之)

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■「試合のためのトレーニング」に必要な要素とは

ドイツから来た子どもたちは、レバークーゼンやボルシアMGなど、ブンデスリーガのアカデミーにスカウトされた選手で、この企画をオーガナイズしたジュニスターサッカースクールのリャン・スソンコーチは、「この年代ではドイツでトップレベルの選手たちです」と語る。

合同練習は4回、U-7&U-9とU-12のカテゴリーに分けて行なわれ、主に指導にあたったのがジモン・ペシュコーチ。昨季までケルンにある「1.Jugend.Fußball-Schule(1.JFS)」で2004年生まれのチームを担当し、ブンデスリーガのアカデミーやオランダ、ベルギーなどの強豪アカデミーを撃破するチームを作り上げた気鋭の指導者だ。また1.JFSでの4年間で、FCケルンやレバークーゼンを始めとする強豪アカデミーに選手を多数輩出しており、育成手腕には定評がある。

ジュニア年代で結果を残しているジモンコーチに、トレーニングのときに大切にしていることを尋ねると、次のような答えが返ってきた。

「試合のためのトレーニングをすること。試合で必要なプレーから逆算してチームの長所を伸ばし、短所を改善していきます。試合を見てビルドアップが必要だと思えばそのためのトレーニングをしますし、グループ戦術が必要なのであれば2対2のチャレンジ&カバーといったように、試合を見た上でどんなトレーニングをするかを決めます」

ジモンコーチには大切にしている心構えがあるという。それが「試合が一番の練習」という言葉だ。

「これはドイツのライフ・ペーターという人が言っていた言葉で、私も共感しているのですが、常に実戦に近い練習の状況を作ることを意識しています。練習メニューはあくまでもひとつの形です。何をするかはチームの状況を見て判断します」

インターナショナルキャンプのある日のトレーニングでは、フットサルコートの半面を使い、フットサルゴールを設置して2対2+2GKが行なわれていた。そこではGKを最終ラインのサポート役として、3対2の形を使って相手の守備を突破するというテーマが設定されていたのだが、選手の順番が回ってくる際にも、グリッドの外側でコーディネーションのトレーニングをしてからピッチに入るというルールが設けられていた。さらには、どちらのボールで始めるかは、コーチの指示を聞いて瞬時に判断するといった、試合の状況(常に動いた状態でプレーが始まる/認知をしてすばやく状況を判断する)に近づけるための工夫が随所に盛り込まれていた。

選手たちは順番を待っている間も気を抜くことができず、常にグリッドの中で何が起きているかを見て、フィジカルの準備とともに頭の準備もしなければいけない。練習のオーガナイズひとつとっても「試合の状況に近づける」ことにフォーカスして、すべてのルールが決められているのが印象的だった。

■いかに「拮抗したシチュエーション」を作り出すか

とはいえ、すべての選手が最初から試合の状況に近い設定での練習を上手くできるとも限らない。ボールコントロールがおぼつかない選手に対して、試合に近い状況を作り判断を求めるメニューにトライさせても、上手くできないケースがほとんどだ。ジモンコーチはそうした懸念点も踏まえた上で、トレーニングの組み立てについての考えを述べる。

「先ほどの練習はGKを使った2対2の練習だったのですが、彼らはそのトレーニングができる技術レベルを備えていたので、判断の要素を入れました。しかし、技術的にそこまで到達していない場合は、その前のボールコントロール、ファーストタッチの練習から入り、1対1や2対1といったトレーニングをします。選手のクオリティがあっての練習設計ですからね。技術や判断は1日、2日で身に付くものではありませんが、常にトレーニングをして半年もすれば、コーチが言わなくてもできる段階に到達しますよ」

選手のレベルを分け、いかにして強度の高い、密度の濃い練習をするか。それもジモンコーチが大切にしていることだという。なぜなら、トレーニングの強度、集中の度合いは拮抗している状況の中で培われていくものだからだ。

「レベル5の選手とレベル10の選手が一緒に練習をしても、お互いにとって良いことはありません。簡単に1対1で勝てる相手と練習をしても、上手な方の選手のレベルアップにはつながりませんし、レベルの低い選手はつまらないと感じてしまうでしょう。同じレベルの選手同士で練習をするようにオーガナイズをします。1対1や2対2、パス回しの練習でもそれは同じです。片方は上手くできる子たちのグループ、もうひとつは少しレベルが落ちるグループに分けます。いかに拮抗したシチュエーションを練習中に作り出すか。そこを大切にしています」

ジモンコーチが考えるレベル分け、トレーニング設定の裏側にあるのは「最も効果のある状態でトレーニングをさせたい」という思いだ。それは何も90分という練習時間に限ったものではない。次回の後編では、「選手たちが集中して練習できるために、トレーニングの前後の時間を大切にしている」と語るジモンコーチの、メンタルコントロール術を紹介したい。

後編:ドイツ人コーチから見た日本の「文化的課題」とは>>

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