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当たり前になりつつあるプレー後の栄養摂取。運動開始前とプレー中のエネルギー補給は新たなトレンドになり得るのか

 プレー後のエネルギー補給はサッカー選手にとって不可欠だ。特におにぎりやゼリー飲料の摂取はほとんどのクラブで行われており、今では2種年代でも導入しているチームが増えている。

 その一方でプレー開始前やプレー中のエネルギー補給はまだまだ認知されていない。特にアマチュアレベルではコストの問題などもあり、優先順位は高いとは言えないのが現状だ。しかし、パフォーマンスを考えれば、プレー後以外にも補給することが望ましい。

 では、具体的にプレー開始前やプレー中、活動後にエネルギー補給をすることはどういうメリットや違いがあるのだろうか。そして、体内に摂取すべきものは状況によって異なるのか。

 新たなトレンドを探りつつ、エネルギー補給の現状に迫った。

(取材・文/松尾祐希)

■栄養補給の最新のトレンドは?メインは活動後に摂取する商品

 試合後や練習後のエネルギー補給は選手たちにとって欠かせない。トレーニングやゲーム後の身体はエネルギーを消費した状況で、筋肉の細胞も損傷した状態に陥っている。また、血中の糖度やアミノ酸も低下しており、体を動かす役割を持つ電解質も不足している状況だ。

 試合後に素早く栄養を補給すべきなのもそうした側面が大きい。Jリーグのほとんどのクラブでは、練習後や試合後に食事をすぐに摂取。失ったエネルギーを補給し、翌日のトレーニングなどに備えている。この動きは2種年代にも波及し、導入しているチームも増えてきた。例えば、山梨県の韮崎高校や神奈川県の桐光学園高校ではおにぎりを持参もしくは用意しており、京都の京都橘高校ではマネジャーがトレーニング後に摂取する補食を丼物を中心に日替わりで準備している。このように練習後や試合後に口にする取り組みを行っているチームも少なくない。

 また、商品の充実もプレー後の栄養補給がより身近になった要因だろう。ドラッグストアやスポーツ用品店に行くと、ゼリー飲料などが所狭しに並んでいる。特にゼリー飲料は激しい運動後でもスムーズに摂取できるのがメリット。様々なフレーバーで選手の口に入り易いのも、手に取りやすくなった理由の一つだと言えるだろう。

 こうして見ると、どちらかと言えば、練習後に摂取する商品が多い。では、プレー前やプレー中に何かしら摂取はしなくていいのかだろうか。

 決して疎かにしていいわけではない。なぜ、体を動かしている最中や試合や練習開始前にエネルギー補給が求められるのだろうか。

 マラソンでは10kmごとにスペシャルドリンクが置いてある。それを取ることでエネルギーをチャージし、42.195kmという過酷な戦いを走り抜く。サッカーでも試合中に何らかの形で摂取しているが、プロ選手以外はエネルギー補給を効果的にできていない。

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 そこはメーカー側も敏感に感じ取っている。大正製薬のマーケティング本部ドリンク・飲料ユニットの菅野拓哉氏もその一人。自身のスポーツ経験や入社後の営業活動で思うところがあったという。

 日本ではドラッグストアやスポーツショップに行くと、効果別に商品が陳列されている場合が多い。しかし、海外ではシーン毎に分けられている場合がほとんどで、「海外はスポーツに対する切り口が面白い」と感じたという。その中で現在の状況を菅野氏はこう分析する。

「現在、糖質オフのゼリー飲料や濃縮されたジェルタイプの商品がネットや店頭で少しずつ並ぶようになってきました。スポーツ関連商材の多くは、練習後に摂取するプロテインやアミノ酸が市場のパイを大きく占めています。しかし、運動開始前や活動中のエネルギー補充は、市場でまだまだ存在感がありません。そこは私たちが中心となり、そうした商品開拓をしていかないといけないと強く感じたんです」 

■なぜ、試合前や試合中にエネルギー補給をした方がいいのか

 では、なぜ試合前や試合中にエネルギー補給をしたほうがいいのだろうか。

 筋肉にはカルノシンという成分が多く含まれている。激しく身体を動かすと、筋肉のペーハー値が下がって収縮速度が落ちてしまう。カルノシンは筋肉中でペーハー値の低下をしにくくすることが知られている。そうした成分が含まれているものを試合中や試合前に体内に取り込めば、疲労度が軽減され、時間の経過とともにパフォーマンスが落ちるリスクを避けやすくなるのだ。

 そうした市場の動向や選手のサポートを踏まえ、大正製薬は新たな商品の開発に着手。野球、ラグビー、サッカーを中心に多くのスポーツ選手をサポートしている中で、アスリート向けの商品を世に送り出した。 "リポビタンショット for Sports"と"リポビタン ゼリー for Sports"だ。前者はプレー前やプレー中、後者はプレー後の摂取を推奨するものとなる

 大正製薬は株式会社ドームが運営するスポーツサプリメントブランド・DNSと連携しながら、未知数の部分が多かったアスリート向けの商材を製作。"リポビタンD"と同様にアンチドーピング認証である「インフォームド・チョイス認証」も取得し、スポーツ選手が安心して摂取できる商品を開発した。では、"リポビタンショット for Sports"と"リポビタンゼリー for Sports"を摂取すると、具体的にどのような意味があるのか。菅野氏は言う。

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「 "リポビタンゼリー for Sports"は、エネルギー補給がメインになります。アルギニン、シトルリン、糖分が入っており、試合の前後や試合中にグリコーゲンを回復させるために使っていただいて構いません。 "リポビタンショット for Sports"はベータアラニンがベースになります。特にベータアラニンが800mg配合されているので、試合前や試合中の摂取に適している商品だと考えています。ベータアラニンは筋肉中にあるカルノシンという構成成分になります。」

 "リポビタンゼリー for Sports"と"リポビタンショット for Sports"。前者はおにぎり1個分(200kcal)のエネルギーとなるので、プレー中に失った栄養を回復させるためにシーンを選ばずに使用して問題ない。一方で後者はベータアラニンの作用を考えると、プレー開始30分前や活動中の補給がベストだと言える。

■業界の概念を覆し、新たなトレンドを生み出せるか

 実際に選手を対象にしたサンプリングでも、ポジティブな評価を得ているという。

「ゼリー、ショットともにスッキリして美味しいと評価を得ています。ショットに関しては7月からサンプリングを始めたので、これから効果面について話を聞いて行く予定です。ただ、2品とも味への評価が高い。運動中も運動前後も飲みやすい商品でなければいけません。そこの評価を得ているのはありがたいですね」

 商品の認知はまだまだこれから。特に新たな利用シーンを想定しているリポビタンショット for Sports"は、多くの人に知ってもらうことが必要だ。

「認知の面はまだまだ弱いと感じています。エネルギーを取ることや試合開始前や活動中の栄養補給について、今後はその重要性を発信していきたいですね」と菅野氏も言う。
 
 栄養摂取の新たな取り組みが生まれれば、選手たちのパフォーマンスに大きな影響を与える可能性を秘めている。