02.05.2014
心の壁を取り除こう! 新チームに導入したいアイスブレイクのススメ
■アイスブレイクとは?
年度末が近づき、新しいチームが始動する季節が近づいています。とは言っても、選抜チームでもない限り、そして選抜チームだとしても、基本的に新チームには前年のメンバーの大半が残り、何人かの子供の入れ替わりにとどまるのが通常の形だと思います。そして新たにチームに加わった子供も、すぐにその環境に順応するはずですが、その後押しをするには『アイスブレイク』というメニューを導入するのもいいかもしれません。
いわゆるアイスブレイクと呼ばれるメニューは、短期的に効果を上げることができるレクリエーション的なものと、長期的にチームを強化することができるチームビルディングと呼ばれるものとに分けられます。新たにチームに加わった子供をなじませようと考えた際、まず行うと効果的なのがレクリエーション的なメニューになります。
レクリエーション的なアイスブレイクは、人が心の中に作る氷のような心理的な壁を崩すために行われます。この心理的な壁にはいくつかの種類があることが知られています。たとえば、初対面の人の間に生じるもの。また、コーチや指導者に対して感じる心理的な壁もあります。そして特に選抜チームのような環境で多いのですが、「その場に居る自分が場違いではないのか」と萎縮し、自分に対して心理的な壁を作ることもあります。これらの心理的な壁は、それが存在し続けて何もいいことはなく、できれば早急に取り除く必要があります。
練習のため集まった子供たちの間に心理的な壁を感じた場合、実施をおすすめするのが短期的に効果を上げる事ができるレクリエーション的なメニューです。このメニューに関しては、ボールを使わずに行えるものも多く、低学年の子供たちを対象にしても受け入れてもらいやすいものとなっています。もちろん、サッカーの要素を取り入れたものも存在しています。
■メニューの作り方
アイスブレイクのメニューの作り方に関しては、いくつかの段階があります。その第一段階がスキンシップです。知らない人と行動を共にする場合、接触の有無は大きな要素となります。そもそも日本の場合、日常的に握手する習慣が無いため、握手自体が意味を持つこととなります。握手の次は、手を繋ぎ続ける。そしておんぶしたり、抱っこしたりと段階を進めて行きます。このようにしてスキンシップの段階が進むことで、子供たちがそれぞれに持つ、人に入ってほしくない自分の領域が狭くなります。
ボールを使わず、接触もないメニューとして例えば「数かぞえ」というものを紹介しましょう。
これは集まった子供たちで輪を作り、1から順番に数を言わせるというもの。同時に同じ数字を言わずに全員が数字を言い終えたら終了となります。複数のグループが作れるのであればグループ間で競争してもいいでしょう。また、最後の数字を言うと負け。ただし、同時に同じ数字を言っても負け、という形でルールを変更させてもいいでしょう。ゲームの要素が含まれる一方で、接触もないため、見知らぬ子供の数が多くても抵抗なく受け入れられるメニューとなっています。場がほぐれてきたら、徐々に手をつなぎ体に触れるメニューへと進化させればいいのです。
手をつなぐメニューとしてはこんなものがあります。例えば二人一組で手をつなぎ、一組を鬼にして鬼ごっこするというもの。普段一人でやっていることだとしても、手をつながせるだけでも十分にアイスブレイクメニューとして成立します。
アイスブレイクにはボールを使ったメニューも当然のことながら存在します。よくあるのが、人数に合わせたグリッドを作り、その中でドリブルさせながら他人のボールを蹴りだす、というものです。慣れてきたら、二人一組で手を繋がせ、同じようにドリブルさせながらよその組のボールを蹴りださせます。
スキンシップを含むメニューに加え、常にお互いの名前を呼び合わせるようにするのも効果的です。名前を呼び合うということはお互いに名前を教えあう必要がありそこで会話が生まれます。またコーチにとっても名前を覚える良い手段の一つとなります。パスを要求したり、道具をもらったりする際に、常に名前を言わせるように指導するといいと思います。
会話はチームの絆を強める大事なツールであるため、そうせざるを得ない状況を作るのもいいでしょう。目隠しをさせた仲間を声で誘導するというメニューなどはコミュニケーションを取らざるをえないため、選手たちのつながりは深まります。
■相互理解の深化
会話が必要なメニューによる効果の一つが、コミュニケーションの進展による相互理解の深化にあります。また、メニューによっては子供たちそれぞれがイニシアチブを握らなければならない状況を作ることも可能です。これによって一人ひとりの子供がそれぞれに主導権を握る経験をすることができれば、自己主張できる子供を増やすことができるかもしれません。
キャプテンシーのある子供がすべてを取り仕切る状況は、好ましいようで諸刃の剣でもあります。なお、ここまで来るとアイスブレイクは、チームビルディングの段階に入っていきます。年度ごとの1年のスパンでチームを作る場合に、効果的な手法の一つとなります。
対象となる学年や目的、チームの置かれた段階に応じ、メニューを考えてみてください。
江藤高志(えとう・たかし)
1972年12月生まれ。大分県中津市出身。99年にコパ・アメリカ観戦を機にライター業に転身し、04年シーズンから川崎の取材を継続。取材に活かすべく2007年にJFA公認C級ライセンスを取得する。近著として、川崎U12を率いダノンカップ4連覇など成績を残した髙﨑康嗣元監督の「『自ら考える』子どもの育て方」の構成を担当した。
写真 新井賢一