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14~18歳の「専門的トレーニング期」に行う1日の練習プラン

サッカーサービスのダビット・エルナンデスです。前回はプロに至るまでの段階的な育成について話をしました。今回はステージ2である、『専門的トレーニング期』の指導について話をしたいと思います。前回はセカンドトップのサポートの動きを例にあげて説明しましたが、今回はセカンドトップの選手に対して、トレーニングの中でどうやってサポートの動きを意識させるかについて解説します。

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■テーマを絞り実戦へと近づけていく

トレーニングの時間を2時間程度とすると、最初はウォーミングアップを行います。次に5対3のような練習を通じて、サポートに意識を向けさせます。仮に、しばらくサポートのコンセプトについてトレーニングをしていなくても、5対3の練習でサポートにフォーカスすることで、ベーシックな部分を思い出すことができます。

このように、その日に学ぶテーマを絞ってトレーニングを組み立てるのであれば、練習時間の25%は、すでに知っている、馴染みのあるトレーニングからスタートするのが良いでしょう。

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ただし、5対3の練習には、DFとMFラインのギャップがないため、あくまで普遍的なサポートの練習に過ぎません。そこで、次の段階では練習時間の25%を使い、より実戦へと近づけていきます。

ベーシックな練習で選手たちにサポートの意識を思い出させたところで、次のステップに進みます。『6対6(+GK)』です。実戦と同じ広さでゴールを使い、4-4-2のFWの1人は高い位置、1人は下がり目にポジションをとります。

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守備側はGK1人、DF4人、MF2人です。攻撃側はFW2人、MF4人の6対6(+GK)となります。この練習のテーマは、セカンドトップがFWを良い形でサポートすることと、MFがセカンドトップに良いパスを出すことです。オフェンスチームはゴールに向かって攻撃をし、ディフェンスチームはセンターラインを越えたら1点など、ルールを設定します。

ここまでで、一日の練習時間の約半分が経過しました。残りの半分はさらに実戦へと近づけていきます。『ピッチ中央で数的優位を作る8対8+1フリーマン(+GK)』です。

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両チームのMFとフリーマンが入っている、ピッチ中央のグリッドで区切られたゾーンには、攻撃側の数的優位(2対2+フリーマン)が生まれています。MFが数的優位になっていると、その選手からFWへパスが通りやすくなります。

守備側はボールを奪ったあと、自チームのMFと連携を取り、ゴールへと攻めていきます。もしかしたらプレーの展開上、逆サイドのDFとFWは2、3分、ボールに触る機会がないかもしれません。しかし、それは実戦でもよくあることです。

■全ての選手に対してコーチングすることは避ける

トレーニングの組立としては、25%を基本の習得に費やし、残りの25%でトレーニングの難易度を上げます。そして、残りの50%は実戦に近づけていきます。もし、指導者が一人ではなく、複数いるとしたら、この練習の場合、他のポジションのトレーニングも同時にコーチングすることができます。

メインの指導者が「セカンドトップの選手のサポート」にフォーカスしてコーチングをし、アシスタントコーチが「CBのチャレンジ&カバー(いつマークに出て、どういうときにラインから出ないのか)」や「サイドバックのカバーリングの動き(いつ中に絞ってカバーリングに入らなければいけないか)」などについて、ピッチの横から守備側にコーチングをすることはできるでしょう。

我々はメインのコーチが、全てのポジションの選手に対してコーチングすることは、避けたほうがいいと考えています。もし、コーチがひとりしかいないのであれば、テーマは絞ったほうがいいでしょう。たとえば、DFラインにミスが出ているのだとしたら、それをメモしておき、別の日にテーマを設けて指導をするのです。

今回紹介したテーマ、練習はトップレベルの選手を対象としたトレーニングメソッドではありません。また、フルコートが必要というわけでもありません。グラウンド状態などは、チーム事情によるところが大きいと思います。大切なのは、状況に応じて、目の前の選手に合った指導をすること。それこそが、指導者の役割だと我々は考えています。


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ダヴィッド・エルナンデス・リヘロ/ David Hernandez Ligero
サッカーサービス社代表。2012年より日本サッカー協会プロジェクトコンサルティングディレクターを務めるほか、2010年より、日本のジュニアからJリーガーまでの指導・コンサルティングを実施。カタルーニャサッカー協会副テクニカル・ディレクターやVic大学「フットボール方法論」教授などを歴任し、プジョルのパーソナルトレーナーを務めた経験を持つ。


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