TOP > コラム > 深呼吸は「先に息を吐くこと」がポイント。大儀見浩介が語る集中力

深呼吸は「先に息を吐くこと」がポイント。大儀見浩介が語る集中力

IMG_3110_580.JPG

COACH UNITED編集部です。前回に引き続き、大儀見浩介さんに集中力の高め方についてお話を伺いました。

なお、ここに紹介してあるのはごく一部であり、COACH UNITED ACADEMYではさらに多くの具体例を用いて動画による解説をいただいています。未入会の方は、この機会にぜひご加入ください。(取材・文:鈴木智之 写真:COACH UNITED編集部)

>>大儀見浩介さんが「集中力」をわかりやすく解説!COACH UNITED ACADEMYの入会はこちら<<

――前回に引き続き、『集中力』について話を伺いたいと思います。集中力を高めるための具体的なテクニックには、どのようなものがありますか?

一番簡単ですぐにできるのが『深呼吸』です。人間は緊張したり、プレッシャーを感じると、自然と呼吸が浅く、速くなっていきます。緊張をほぐし、リラックスして集中を高めるために深呼吸をして、気持ちを落ち着かせます。

このときにポイントになるのが「先に息を吐くこと」です。私が選手たちに「深呼吸をしてみよう」と言うと、ほとんどの人が先に息を吸ってから吐こうとします。しかし、緊張した状態で先に息を吸うと、よりプレッシャーを感じることになります。なぜなら、すでに呼吸が浅く、速くなっているところに、さらに息を吸おうとするので、過呼吸のような状態になってしまうのです。

――たしかに、息苦しくなってしまいます。

そうならないためにも、まずは口から息を細く、長く吐き出します。「スーッ」と音をたてるように、ゆっくりと吐き切ってください。そして、鼻から息を吸い込みます。

次に、息を吸い込んだときの3倍以上の時間をかけて、ゆっくりと口から細く、長く吐き出します。このとき、ネガティブな気持ちやマイナス思考を吐き出すイメージを持つと良いでしょう。ゆっくりと深呼吸を繰り返すと、気持ちが落ち着いてきます。

――最近、試合前の円陣のときに深呼吸をするチームを見かけることがありますが、これも集中力を高めるために行っているのでしょうか?

そうですね。集中力を高めるとともに、リラックス状態を作ることやチームメイトの気持ちをひとつにする効果があります。これはぜひ実践していただきたいのですが、円陣のときにみんなで深呼吸をすると、呼吸を合わせることで集中が高まり、チームの一体感を感じることができます。

円陣を作るときに気をつけてほしいのが、肩を組んで下を向いた状態では行わないこと。肩を組んだ状態で真っ直ぐ立ち、斜め上を見ます。人間は下を向くとマイナス思考になりやすく、胸郭が圧迫されるので呼吸が浅くなってしまいます。その状態では余計にプレッシャーを感じたり、ネガティブな気持ちが出てきかねないので、円陣を組むときは下を向かず、顔を上げる。これはすぐにできるので、ぜひやってみてください。

――試合中、「集中が切れているな」と感じたときは、どのタイミングで深呼吸をすればいいですか?

ボールが外に出たときや、ファウルがあってプレーが止まったときなどです。焦りからミスをしたときは、呼吸が浅く、速くなっている可能性があります。大舞台などプレッシャーがかかる試合のときは、知らず知らずのうちに過緊張になっていることもあるので、自分の心の状態をセルフモニタリングすると良いでしょう。また、普段の練習のときから深呼吸を使い、呼吸で気持ちをコントロールできるようになると良いと思います。

――集中力を高めるために、ハーフタイムはどのように使うと良いのでしょうか?

私がメンタルトレーニングコーチとしてベンチ入りするとき、ハーフタイムの時間の使い方は意識しています。選手は興奮状態に陥っているので、まずは深呼吸をさせて落ち着かせます。リラックスした状態を作ってから、監督が後半のゲームプランを選手たちに伝えるようにします。気持ちを落ち着かせる前に監督があれこれ指示を出しても、選手たちは興奮状態になっているのでなかなか耳に入りません。

――その手順も、あらかじめ決めておいたほうがいいのでしょうか?

大会のときに、いきなりやろうと思っても難しいので、練習試合のときから「集中力を高めるためのハーフタイムの使い方」として、いくつかのパターンを決めておくのも良いと思います。

たとえば、ハーフタイムにロッカールームに戻ってきたら、まずは椅子に座って目を閉じて深呼吸。それを何度か繰り返して気持ちを落ち着かせたあとに、監督が指示を出す。ロッカールームを出て、グラウンドに向かう直前に円陣を組んで、気持ちを高めてから後半を迎えます。

数年前の高校選手権で優勝したチームに、メンタルトレーニングコーチとして帯同していたのですが、大会MVPとも呼べる活躍をしたある選手は「いつもこんなにワクワクする気持ちで試合ができたらいいのに」と言っていました。それほど、メンタル面を自分たちの意志で高めていくことは大切なのです。

――朝から試合のことばかりを考えていると、精神的に疲労し、本番を良い状態で迎えられないことがあります。このときはどうすれば良いのでしょうか?

人間の集中力は長時間続きません。そのため、朝から集中を高めようと、肩肘張っていてもしかたがないんです。

大切なのは気持ちの切り替えです。なでしこジャパンの選手たちは、試合の直前までニコニコ笑いながら、リラックスしています。しかし、ひとたび試合が始まると、抜群の集中力を発揮して最高のパフォーマンスを発揮します。

彼女たちを見ていて、印象的なのが笑顔です。笑顔を作ることでリラックスし、集中のオン・オフのスイッチを切り替えているように見えます。意識的に行っているわけではないと思いますが、メンタル面から見ても、なでしこジャパンの選手たちは試合に向けて非常に良い準備をしています。試合前、彼女たちがどんな表情をしているか。テレビを見ながらチェックするのもおもしろいと思います。

大儀見浩介(おおぎみ・こうすけ)
株式会社メンタリスタ代表取締役。静岡県清水市生まれ。東海大学第一中学校(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に、元日本代表の高原直泰氏とともに全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将として鈴木啓太氏(浦和レッズ)とプレーした。東海大学進学後、高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、様々な分野でメンタルトレーニングを指導している。

>>大儀見浩介さんが「集中力」をわかりやすく解説!COACH UNITED ACADEMYの入会はこちら<<