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「ディフェンスは腰を落とせ!」は間違い。腰を落とすと身体が動かないワケ/鬼木祐輔(フットボールスタイリスト)

 COACH UNITED編集部です。今回は、去る5月24日に開催されたフットボールスタイリスト・鬼木祐輔氏のイベント「姿勢と移動の仕組みから考える、ボールを奪うためのディフェンス」についてのレポートを掲載させていただきます。
 
 イベントの内容は多岐にわたっており、ここで全てをお伝えすることはできません。その代わり、骨子となる考え方について、鬼木氏の一人語り形式によってお送りします。(取材日:2014年5月24日 取材・文:澤山大輔)

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腰を落とすと、身体が動かなくなってしまう

 目的と手段という観点から、2本の足と重心について考えたいと思います。重心とは、ヘソの下のあたりにあります。2本の足の間に挟まって乗っかっています。ここで重要なのは、足は重心を運ぶための手段でしかないという考え方です。
 
 サッカー、フットサルという競技は、球技スポーツの中では唯一「移動するための手段である足で、何かをしなくてはいけない」というスポーツだと思います。例えばセパタクローは移動は特になく、ラグビーに関してはキックオフ以外だとポンと蹴るだけ、アメフトもフィールドゴールを入れるだけです。「ボールを繊細に扱い、何かをしながら移動しなくてはいけない」これはサッカーとフットサルだけの特性だと思います。
 
 重心は、2本の足の間に挟まっています。これが、広がったらどうなるか? 「ディフェンスは腰を落とせ!」は間違いだったの記事でも触れましたが、落とす・落とさない・どの程度の高さにするのかというのは足の長さや筋力にもよります。股関節の余白があるなら、高さは低くても問題ありません。ですが、足を広げすぎるとやはり足があまり動かなくなります。この幅が、大事になってきます。

 運動とは、重心が移動するということです。重心を移動するために足幅が広くなってしまうと、重心は「ここにとどまり続けよう」とします。例えばクレーのグラウンドでざっと滑ってしまい、足幅が広くなり、広くなった結果重心が埋まり、そこにとどまろうとし、次の動きができなくなる......そういう経験はおありかと思います。
 
 最近、訳あってフットサルのプレーを見ることが多いのですが、フットサルで大事なのはセットプレーだという話をよく聞きます。しかし、セットプレー時に見ていると、パスを通された後に体が動かない、コースを消しているつもりなのに通されてしまう、全然身体が動かない、そういうケースが散見されます。重心を落とす、足幅を広げて腰を落とすと、逆に身体が動かなくなってしまうということです。

重心移動だと、あまり疲れない

 移動方法には、体重移動と重心移動の2種類があります。体重移動は、私たちが日常見ている運動のほとんどに入ります。体育でやるような動きはほぼ体重移動でしょう。例えばヨーイドン、構えてドン、あるいは反復横跳び。これらはすべて体重移動ですね。身体を押して、押して、動く。切り返し、踏ん張って動く、それが体重移動です。
 
 重心移動というのは、歩行のことです。足を出したら、勝手に次の足が浮いて出てくると思います。いちいち「次にここに足をついていこう」という考えてはいなくて、行こうと思ったら勝手に足が伸び、足は必ず身体の下にあると思います。

 人間には、転びそうになると手や足を勝手につくというメカニズムがあるそうです。ハイハイの時期が短くなった影響で、最近の子どもは手が出なくなったという話もあるようですが、だいたいは転びそうになったら手が出るし、足が出るものだと思います。2月の大雪の時、凍った路面で私は滑ってしまいまして、ポケットに手を突っ込んでいたためそのまま転んでしまいましたがリュックサックがクッションになって助かったということがありました。ポケットに手を突っ込んでいなければ、とっさに手は出たと思います。
 
 ただいざ運動をしよう、力を出そうとなると、本来の歩くという動きが使われない。これはあくまで僕がそう見ているというだけなのですが、幼稚園児を見ていると、『アラレちゃん』みたいな、キーンみたいなそれほど疲れない走り方をしているように思います。ただ、幼稚園でもヨーイドンやかけっこの練習をし始めると、なぜか硬くなってしまう感じがあります。
 
 僕は、体重が60キロあります。物理的な話をすると、60キロのものを60キロの力で押すと釣り合ったまま動きません。ある程度強く動かすには、例えば90キロや100キロといった力を出さないと動かないと思います。大きくバンと動く、ヨーイドンでダッシュする、というのはそういう発想だと思います。
 
 反復横跳びなども、その発想だと思います。ただ、反復横跳びってものすごく疲れますよね。ヨーイドンでダッシュ、これを繰り返しているので。ですが、反復横跳びを30秒間やると非常に疲れますが、30秒歩く分にはあまり疲れませんよね。あまりスピードが出ていないということもありますが、重心移動だとあまり疲れません。
 
 昔の人は、移動は全部歩行あるいは走りでした。「飛脚」は、大阪から東京まで4日間でモノを運んだといいます。当然、疲れるような走り方では運べません。なるべく疲れない走り方をした結果、重心移動をする走り方を選択したのではないか? と考えられています。

 では、サッカーだと体重移動・重心移動のどちらが多いのでしょうか? 私は3月末から4月頭にかけてスペインに行って、バルセロナの試合を観てきました。その時、彼らのウォームアップを観察したら、とにかく「力みがない」ことに気づきました。ぐっと踏ん張る感じがなく、ジョギングやダッシュでもスッと動き出す感じがあります。
 
 いま指導しているチームでも、ウォーミングアップから「なるべく踏ん張らないでスタートしよう」ということを言っています。10数年生きてきて身についた習慣はなかなか取れませんが、僕が言っているのは「重心が落ちた状態で、足をウンって踏ん張って前に進もうとすると、体重全部を足で押さなければいけないから疲れるし、怪我しそうじゃない?」と。先に、重心を移動させることで勝手に傾いていき、力を入れなくてもスッとスタートできます。
 
 ある中学3年生、この子はあまり身体が動かないタイプだったのですが、「コーチ、最近身体が軽いです」と言ってくれました。1500メートル走で、去年の体力テストから1分縮まったそうです。1分というのは、それまでがちょっと遅すぎの感もありますが(笑)「だいぶ疲れずに走れるようになりました」と。
 
 実際、お尻をクッと上げて、腰が軽くカーブを描くような形で、肩甲骨は特別寄せない姿勢を作り、それをそのまま傾けていくとスッと力が抜けて勝手にスタートできます。これぐらいの距離(と、イベントスペースの10メートル程度を走り抜ける)なら、30歳の僕でもアップなしに全く息を切らさずにスタートできます。
 
 こうした重心移動の動きが、特にサッカーというスポーツでは重要になってくると思います。

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鬼木祐輔(おにき・ゆうすけ)
サッカーがうまくなるために「身体を上手に動かす」という観点からサッカーを捉え、その方法を一緒に考えいていきます。しなやかで、シュッとしていて、立ち姿が美しく。 頑張らない、息まない、力まない。サッカー選手をスタイリングして行きます。現在は幼稚園児から高校生までのスクールやチームでサポートを行っております。また、ケガをしないための身体作りやケガから競技復帰までのお手伝い。自分で自分の身体の状態を知るためのお手伝いもしています。ケガでお悩みの方もご相談ください。ノリシロヅクリ.com