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サッカーサービスが提唱する「賢い選手を育てるための"エコノメソッド"」(前編)

スペイン・バルセロナを中心に、ヨーロッパやアメリカ、アジア各国で選手の指導、コンサルティングを行うサッカーサービス。日本にも拠点を持ち、U-12のスクールを展開する彼らが、独自のトレーニングメソッドである「エコノメソッド」を広めるための講習会を開催しました。前後編の2回に分けて、その内容をお届けします。(取材・文/鈴木智之)

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サッカーサービスが提唱する「エコノメソッド」。これは「賢い選手を育成する」をテーマに彼らが編み出したメソッドで、日本でも今年からU-12向けのスクールが開設され、エコノメソッドのトレーニングが受けられる環境がある。

サッカーサービスのフェランコーチは言う。

「運動能力を高めるものやボールコントロールの技術に特化したものなど、サッカーには多くのトレーニングメソッドがあります。エコノメソッドは、サッカーに必要な様々な要素を鍛えることのできるトレーニングです。なかでも私たちが重視するのが、良い判断のもとに賢くプレーすることです。高い技術、強いフィジカル、メンタルに加えて、よく考え、最良の決断ができる選手が、私たちの理想とする良い選手だと言えます」

では、エコノメソッドとは具体的にはどのようなものなのだろうか。フェランコーチによると、次の4つから成り立っているという。

1:習得テーマをともなった練習メニューを、どのように構築するか
2:どうすれば、良い決断ができるかを、選手に気づかせることができるか
3:試合中、どのようなコンセプトのもとにプレーをするべきか
4:試合中、周りの状況を見るために、何をすればいいか

練習メニューをどう構築するか。これは指導者たちが頭を悩ますテーマだろう。多くの書籍やWebサイト、講習会などで練習メニューを知ることができるが、ポイントになるのは選手のレベルに合ったトレーニングとコンセプトを設定することにある。フェランコーチが説明する。

「選手の年齢やレベルに合わせて、課題を与えます。6歳の選手と18歳の選手が同じトレーニングをしても意味がない。大切なのは選手の発達の段階を踏まえて、年齢やレベルに合ったコンセプトを身につけさせるためのトレーニングを行うこと。サッカーには多くのコンセプトが存在しますが、一つの練習に多くのコンセプトを用いると、選手が混乱するので効果的とは言えません。選手がどのプレーを集中すればいいのか分からなくなり、何も身につかずに終わってしまう可能性もあります。そのため、一回の練習につき一つのコンセプトを用いて、その部分にフォーカスした指導をします」

賢い選手を育てるためにポイントになるのが「状況判断を高めること」だ。そのためにエコノメソッドでは、ボール、敵、味方の3つが常にそろった状態でトレーニングを行うという。どれか一つが欠けていても、実際の試合の状況とはかけ離れてしまうので、ウォーミングアップ等を除き、メインの練習を行う際にはこの3つがセットになっている。

「選手はまず、行動を起こす前に周りを見て、何をするかを判断します。チームメイト、敵はどこにいて、ボールはどこにあるのかを把握することによって、自分のプレーを決断するのです。決断を行った後に、プレーを実行します。エコノメソッドでは、周りを見ること、つまり"認知"が重要なポイントになります。よく周りが見えていれば、いいプレーの決断ができるからです。そのため、常に認知が必要な練習を行います。ただボールを蹴ること、ドリブルをすることといった一つのプレーだけにフォーカスしたメニューはほとんど行いません。それらに特化してしまうと、技術的にはすごくいい選手になれるかもしれませんが、試合中、常に良い判断・決断ができるようになるかと言ったら疑問が残ります。なぜなら、周りの状況を見るトレーニングをしてきていないからです」

サッカーはチームスポーツであり、対人競技であるため、常に周囲の状況がどうなっているかを確認し、移り変わる状況に合った最適なプレーをすることのできる選手が良い選手だと言える。そのためには選手個人の基礎的な技術、判断から、数名のグループ戦術、チームとしてどのようなコンセプトで戦うかといった部分がポイントになる。身につけた技術を、いつ、どのような場面で発揮するか。チームとしてどうプレーするかといった部分は、指導者の哲学、コーチングによるところが大きい。

「私は日本で多くのチーム、選手を見てきました。彼らはプレーの実行、つまり技術的な部分は非常に高いものがあります。しかし、世界的な視点で見て良い選手というのは、周りの状況がよく見えていて、いい決断ができ、その上で技術的にも優れている選手です。私たちが提唱するエコノメソッドは、認知に働きかけるトレーニングです。これこそが、良いプレーをするために重要なことだと考えています」

サッカーサービスだけでなく、スペインやドイツを始めとするサッカー先進国の多くの指導者が、日本サッカーについて「技術的には高いものがあるが、選手の個人戦術や状況判断には、まだまだ向上の余地がある」という共通の印象を持っている。裏を返せば、その部分を向上させることができれば、日本サッカーは一段上のレベルに到達できるとも言える。

では、エコノメソッドを使ってどのようなトレーニングを行い、選手たちにどのようなアプローチをすれば、個人戦術、グループ戦術の質を高めることができるのだろう。近日公開予定の後編では、具体的なトレーニングメニューと選手へのアプローチに迫りたい。

後編>>

サッカーサービススクールHP


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