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AFC U-19選手権@ミャンマー 本日開幕

10月9日(木)の今日、AFC U-19選手権がミャンマーで開幕する。来年開催されるU-20W杯(ニュージーランド)出場権を懸けた大会で、鈴木政一監督率いる若き日本代表がどのような戦いを見せるのか。U-19日本代表分析レポート。(現地取材・文・写真/安藤隆人)

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AFC・U-19選手権が今日、いよいよ開幕する。

この大会は2年おきに開催されるもので、ベスト4以上に入ると翌年開催のU-20W杯出場権を得ることができる。いまや日本サッカーはA代表が当たり前のようにW杯に出場するまでに成長したが、U-19のカテゴリーは3大会連続でU-20W杯行きを逃している。

U-20W杯出場の切符を3大会続けて逸することは、日本サッカー界にとってゆゆしき問題である。U-19日本代表はプロ1年目、2年目のメンバーが主流。所属チームでレギュラーとしてプレーする選手はほとんどおらず、彼らの実戦経験の乏しさが問題視されている。代表チームでも日本は極東の島国ゆえに、世界の舞台で戦える機会は希少だ。W杯規模の国際大会ともなればそこから得られる経験値は非常に高く、若い年代から世界のトップと真剣勝負をすることによって、選手たちの意識を刺激し、レベルの向上につなげることができる。日本サッカーの将来を考えたとき、U-20W杯での経験がいかに大切かが、このことからも分かっていただけるだろう。

このような貴重な経験をできる場を、これ以上失い続けることはできない。4大会ぶりの出場を果たすべく大会に臨むU-19日本代表だが、鈴木政一監督率いる今回のチームはこれまでにない才能豊かな選手たちが名を連ねた。

C大阪で早くもエースとして活躍するFW南野拓実は、その最たる例。チームが残留争いの渦中にいるだけに同選手を派遣するかどうか不透明だったが、最終的に鈴木監督の思いにクラブが応える形となった。このチームにおいて南野の存在は絶大だ。キープ力に長け、裏への飛び出しの鋭さを誇り、さらには決定力の高さをも合わせ持つ。前線にいるだけで違いを生み出すことができる選手だ。この絶対的エースには鈴木監督も「欠かせない選手」と全幅の信頼を寄せており、「いるだけで決定力が高まり、得点も期待できる。相手の注意を引きつけてくれるので周りも生きてくる」と高く評価している。

南野を中心とした若き日本代表は、[4-4-2]のフォーメーションから「組織力を大事にしたサッカー」(鈴木監督)を展開する。鈴木監督はメンバーをある程度固定しながらチームづくりを進めてきた。最初から軸を据えずにさまざまなタイプの選手を起用し、そこからチームづくりを行ってきた歴代の監督たちとは異なり、鈴木監督は早い段階で軸を固定し、そこからチームを築き上げてきた。その意図を監督は「組織力を高めるために、判断の共有が必要。いい判断の共有をするためには、自分を知ることと、仲間を知ることが大事。そのために長い時間同じメンバーでプレーさせることが重要となり、そこからプレーの精度を高めることになる」と説いている。

南野のほかにもMF望月嶺臣、松本昌也、川辺駿、DF三浦弦太、内山裕貴、GK中村航輔といった選手が立ち上げから主軸を担い、チームを支えてきた。ケガで招集できなかったMF深井一希、小屋松知哉などもいるが、鈴木監督の考えていたチームの骨格ができた。彼らを中心に据え、攻守のバランスを整える選手、攻撃にバリエーションを生む選手をさらに選出することで、理想に近いチームとなった。

その中で注目なのが、急成長中の京都U-18のMF奥川雅也、千葉で上り調子のFWオナイウ阿道、清水の下部組織の選手で"最高傑作"と言われるFW北川航也だ。奥川は独特のリズムで突破を図る典型的なドリブラーで、破壊力を誇る左足にも定評がある。ナイジェリア人の父を持つオナイウは、ずば抜けた身体能力が武器。北川はテクニック、パワー、正確性と意外性を持ち合わせた規格外の選手で、大会での活躍が期待されている。

上記3選手は、今の日本に必要な『異物』と言えるだろう。異物というと聞こえはよくないが、これは『他に類を見ない、強烈な個性の持ち主』のことを表す。曲者とも言うべき選手たちだ。近年、組織的なサッカーが若年層に幅広く浸透してきた反面、『個性の欠落』したサッカーになってしまう傾向にあった。パスがうまくても個で打開することができず、停滞した流れを一変させるほどに相手に脅威を与える存在がいなくなった。それでは国際大会のようなトップレベルの試合で勝つのは難しい。

「奥川にはドリブルで思い切って仕掛けてほしい。オナイウは前線で起点をつくってほしいし、北川はコンディションが上がってくれば必ずやってくれる選手」(鈴木監督)。

安定した軸の上でスペシャリティーを持った3人がスパイスとなり、どのような刺激をチームに与えるか。ここが大会のカギとなるだろう。

今回、日本は『死のグループ』に入った。中国、ベトナム、韓国と同組だ。初戦の中国はパワーがありやりづらい相手であり、2戦目のベトナムは対戦成績2戦2勝ではあるが、侮れないチームだ。韓国は間違いなく最大の強敵で、どの試合でも苦戦が予想される。

例えグループステージを突破しても、4強入りしなければ意味がない。予想される準々決勝の相手はイラクか北朝鮮。どちらが出てきても容易ではなく、U-19日本代表を待ち構えているのは、文字通り"茨の道"だ。

「私は2年間彼らとともに歩んできた。やるべきサッカーは理解してくれていると思っている」(鈴木監督)。

チームの枠組みづくりから始まり、最後に『異物』が加わった。2年間の集大成でどのような化学反応を見せてくれるのか。注目の試合がまもなく始まる。