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シュートを決めるアイディアが増える!フットサルを学ぶ利点

※サカイク転載記事(2015年1月16日掲載)※

サッカーに励む子どもが同時にフットサルもするようになるとサッカーが下手になる――。

一部のジュニア年代のコーチは、そのような認識を持っているようです。

曰く、フットサルによってプレーが小さくなる――。
曰く、フットサルをプレーすると足裏でしかプレーしなくなる――。

このような見方は、正しいのでしょうか。フットサルによってサッカーが下手になることはあるのでしょうか。今回は、元フットサル日本代表で、現在は子どもたちにフットサルの指導もしている小宮山友祐選手(Fリーグのバルドラール浦安に所属)にお話をうかがってきました。(取材・文/杜乃伍真)

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■サッカー少年がフットサルをする利点とは

「『フットサルをプレーするとサッカーのプレーが小さくなってしまう』。確かにぼく自身もそのような声を聞くことがあります。しかし、それは何を基準にしてプレーが小さい、と言えるものなのでしょうか。全日本少年サッカー大会は11人制から8人制に移行し、ピッチが狭くなりました。もっと大きな視点からいえば、日本代表はザッケローニからアギーレに変わり、サッカーのスタイルが変わりました。サッカーはつねに変わっていくし、サッカーの正解はひとつではありません。であるならば、選手たちはその変化に対応していかなければいけないのですから、それに必要な技術や判断力、視野の確保、空間認知能力などを子どものころから引き上げていく必要があります。ぼく自身、江戸川区でフットサルのアカデミーの指導をさせてもらっていますが、フットサルにはそれらの能力を引き上げる要素が詰め込まれています。

サッカーでは、どんなに速くて強いプレッシャーをかけられても、いつもどおりにプレーできる選手が重宝されます。その意味では、フットサルはサッカーよりも狭いエリアで、つねに激しいプレッシャーを受けた状態でプレーをするわけですから、サッカーをプレーする育成年代の子どもたちにとって非常に有効な競技といえます。子どものときにさまざまなグリッドや競技人数やルール設定でプレーすることは子どもの成長につながるでしょう。大事なことは、周囲の大人が子どもの成長を長い目で見て、U-12年代の指導では一体なにが大事なのかということを、しっかり念頭に置いて指導できているかどうかだと思います。大人たちの偏見によって、子どもからフットサルが奪われてしまうことほど、不幸なことはありません」

子どもがフットサルをプレーすると、ボールを足の裏で足下に止めるようになってしまう――。

これも一部の現場で囁かれる声のようです。しかし、小宮山選手も言及していますが、"フットサルは足の裏でボールを止めることが一番"だというような指導をしているわけではありません。相手にボールを奪われずに次にプレーしやすい場所が足元であることが比較的多く、足元に止めるための有効な手段として足の裏でのコントロールが用いられるのです。

「重要なのは、次のプレーをしやすい位置にコントロールする、という状況判断が伴ったうえで、足の裏を使ってボールをファーストコントロールすることです。そのときにアウトサイドでも、インサイドでも、足の裏でも、足のどこを使おうとも、子どもが次のプレーをしっかり考えて足の裏を使うことを選んだのかどうか、それを見極めてあげればいいのです。足の裏を使ってプレーすること自体は、プレーする技術や幅が広いということですから悪いことではありません。子どもが、足の裏を使うときに、つねに足下にボールを置くようであれば、コーチや周囲の大人が正しい方法論を教えてあげればいいのです」

フットサルによってサッカーでも活かせるスキルや戦術を身につけられる。これは世界の常識です。フットサルのプロリーグが盛んなブラジルやスペイン、ポルトガルといったフットサル強豪国では、子どものころは、フットサルとサッカーをどちらもこなしながら、自分自身の適性を見極めて、高校生になるころにどちらを優先するかを決めるといいます。それほど日常にフットサルが浸透しているのです。仮にあなたの子どもが通うフットサル教室が「フットサルでは必ず足の裏でボールを止めよう」と、子どもの判断を尊重せずプレーの幅を限定してしまっているとすれば、それはそのコーチの指導が有害なのであり、フットサルという競技自体が子どもの成長を阻害するということには当てはまらないのではないでしょうか。

■フットサルをプレーすることでバイタルエリアでのアイディアが増える

「U-12年代のうちはサッカーが楽しい、フットサルが楽しい、と子どもが思えることがもっとも大事。ぼくが子どもたちや親御さんによく言っているのは『フットサルとサッカーは、ルールも、ボールも違うけれど、足をつかうという意味では一緒のスポーツ』だということなんです。サッカーとフットサル、双方のよい部分を吸収していけば子どもはぐんぐんうまくなっていきます」

では、U-12年代でフットサルに取り組んだときに身につけられる強みを、小宮山選手はどう考えているのでしょうか。

「わかりやすいのはバイタルエリアでのプレーでしょう。一番大事な『シュートを決める』という局面での判断の引き出しが増えていきます。現代サッカーは、最終ラインでつないでボランチに当ててサイドに展開して、という部分はどのチームでもそつなくこなすものです。でも、大事なのはそこから先。その先のエリアでどういう技術で相手を崩すのか、あるいは、バルセロナのように連動するのか。その技術やアイディアやパターンがフットサルをプレーすることで間違いなく増えると思います。

たとえば、ポストプレーひとつとっても、サッカーの場合は往々にして、ポストプレーヤーはボールが来たらすぐに叩いたり、あるいはダイレクトで叩いたり、というパターンが一般的なプレーでしょう。でも、フットサルの場合はピヴォと呼ばれるポストプレーヤーが相手を背負ってボールを収める技術が確立されているので、ピヴォは受けたパスをリターンするふりをして反転し、ディフェンダーと入れ替わってシュートを狙ったり、ピヴォを起点にパスを出した選手がそのまま走りこんで絡んだり、ピヴォに対して3人目の選手が絡んだり、というプレーがスムーズにできるようになります。それがサッカーでも応用できるようになればと思います。ペナルティエリアのなかでポストプレーヤーがキープしたときに、相手ディフェンダーがファールをすればPK。あるいはそこにどう絡むのかというアイディアを養っていけば、ゴール前の崩しのパターンは増えるでしょう。ぼくは、いまフットサルを教えるなかで常々驚かされていますが、子どもたちは教えてもいないアイディアをどんどん出してシュートを決めていきます。

フットサルの場合はオフサイドがない分、セカンドポストといって味方のシュートを逆サイドのポストのフォアまで詰めて押し込む、というシュートパターンもあります。子どもたちがオフサイドを気にせず自由な発想をプレーに表現しやすい状況にあるのです。それをサッカーに置き換えるのであれば、今度はオフサイドにならないようなアイディアをどんどん出していけばいいのです。フットサルにはパラレラという、ウェーブのように一瞬遠回りをするようにしてから前へ動き出す攻撃の動き方のパターンがあるのですが、そのパターンも当たり前のように習得していれば、オフサイドラインをグループで突破する方法論を習得できるでしょう。これはJリーグでも浦和レッズなどがときどき見せてくれる攻撃のパターンですが、もっといろいろなチームがフットサルで頻繁に行われるバイタルエリアでの崩しを取り入れてもいいと思います」

だからこそ、子どものころからフットサルに励み、その攻撃パターンの習得が当たり前のようになれば、それだけでもサッカーの攻撃局面において強みになるのです。


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