TOP > コラム > 元フットサル日本代表・小宮山友祐氏「サッカーにつながるフットサルテクニック」(守備編/基礎編)

元フットサル日本代表・小宮山友祐氏「サッカーにつながるフットサルテクニック」(守備編/基礎編)

サッカーの指導方法として、注目を集めて来たフットサル。ピッチのサイズがサッカーの9分の1であるフットサルは、子どもたちがボールを扱う回数が多く、足元の技術を上げるのに適しているとされています。しかし、今回講師を務める元フットサル日本代表のFP小宮山友祐氏は、「フットサルをすることが、サッカーの守備面での向上にも生きると思うんです」と言います。2月のフットサル特集・後編では、かつて高校の教員歴を持ち、現在も大学の非常勤講師として教壇に立つ同氏に、サッカーにも役立つ守備のためのトレーニングメニューを教えてもらいました。(取材・文/河合拓)

20150216_01.JPG

■ボールウォッチャーにならない守備戦術

守備をする上で一番大切なのは、「ボールを前に進ませないこと」と小宮山コーチは説明します。もし、相手選手に裏を取られてしまい、そこにパスを通されてしまえば、GKと1対1の決定的な場面をつくられてしまいます。

なぜ、こうした局面ができてしまうのでしょうか。本来はマークしなければいけない選手をフリーにし、ボールを受けられる状態にしてしまうからです。マークを外してしまう要因は、大きく分けて2つあります。一つは圧倒的な瞬発力で、置き去りにされるフィジカルの差。もう一つは、マークする選手から目を離してしまい、動かれてフリーにされてしまうケースです。コートの狭いフットサルでは、前者のようなケースは稀です。ほとんどの場合が、後者のようにボールウォッチャーになってしまい、マークを見失うパターンです。

今回の基礎編では、ボールウォッチャーにならないための2つのトレーニングを紹介します。一つ目はピッチの4分の1を使って行う、攻撃側が2人、守備側が1人の2対1のトレーニングです。ベースはサイドでの1対1の練習ですが、センターサークルの4分の1の中にもう一人、攻撃の選手が入ります。サイドの選手は、センターサークル内にいる味方にパスを出して、マークを外してから、リターンパスを受けることも可能です。中央の選手は、センターサークルから出てはいけないという制限があります。ただし、サイドにいる選手からのパスを3回受けた場合、自由に攻撃に加われるというルールです。つまり、守備をする選手は3回パス交換される前に、ボールを奪わなければなりません。

ボールを奪う選手は、パスを受けようとする選手の動きに付いて行き、ボールを受ける瞬間に寄せることが大切です。小宮山コーチは「マークで大事なのは、距離」と言います。サッカー・フットサルを問わず、指導者はよく「寄せろ!」と指示を出します。しかし、指示を受けた肝心の選手たちが、どの距離まで寄せればいいのか分かっていないことも多いのではないでしょうか。

そこで、守備のスペシャリストとしてフットサル日本代表で長年にわたり活躍した小宮山コーチは、より具体的にヒントを出しました。「相手と1メートルくらいの距離に近づこう。1メートルと言っても難しいから、『手を伸ばしたら相手に触れる距離』。そこまで近づくことが寄せるということ」と伝え、選手のスタートポジションをこの距離に設定しました。

■裏を取られる経験の蓄積が守備センスを磨く

DFがマークに付き、手を伸ばしたら相手に触れる距離を保ち続ければ、なかなかパスを受けることはできません。しかし、どうしてもボールを見てしまい、マークを外してしまう現象が起きてしまいます。そのたびに「ボールを見ないよ!」と声を掛ける小宮山コーチですが、このように裏を取られてしまう経験をすることも重要だと話します。

「フットサルは、ピッチが狭いため、マークを確認しやすいはずです。でも、逆に言うと『近くにいるだろう』と、見ているつもりにもなってしまいます。一瞬、目を離しただけでも裏を取られるというのが、フットサルでは実感しやすい。いろいろなケースに遭遇すると思いますし、その経験をしていれば、より注意して裏を取られないように気を配るようになると思うんです」。このメニューの最後に小宮山選手は自ら手本を示し、次のメニューに移りました。

2つ目のメニューは、2対2の練習です。このとき、2対2をやる選手はボールを持ちません。マークを外してキックイン(サッカーのスローイン)を受けることを目的にします。キックインを蹴る選手は、味方が完全にマークを外したときだけパスを出すことができます。マークを外してボールを受けた選手は、左右どちらのゴールにシュートしても良いルールです。ただし、それぞれのゴールにはGKが守っています。シュートを決めたら攻撃の勝ち、守り切れば守備の勝ちとなります。

「この練習は、とにかく付いていくことが大事になります。ただ、最初は相手を見ているのに、どうしてもボールが気になって、相手選手から目を離してしまうときがあります。ボールは見なくていい。とにかく相手を見続けて付いていきましょう。ボールがどこに出てきそうかは、GKが指示を出して教えてあげましょう」と、GKと連携をとりながら守ることの重要性を説いていました。

小宮山コーチは最後に選手たちを集めて、1対1のマークを外さないためには、相手の体のある部位を見て守るといいというヒントを与えています。これを知っておくだけでも、かなりマークが強くなるはずです。ぜひ動画をチェックして、そのポイントを覚えてください。

>>2月のCOACH UNITED ACADEMYは元日本代表も参戦の「フットサル特集」 入会はコチラ<<

小宮山友祐(こみやま・ゆうすけ)
1979年12月22日生まれ。神奈川県出身。小学校1年からサッカーを始める。高校3年時にフットサルと出会い、2000年にFC FUNへ入団。その後、FIRE FOXへ移籍し、全日本選手権優勝に貢献する。大学卒業後の4年間、高校で教員を務めるが、フットサルに専念するため退職。2007年、Fリーグ開幕の年に現所属チーム・バルドラール浦安へ移籍。日本代表歴9年、AFCフットサル選手権2度優勝(2006、2012)、フットサルW杯3大会連続出場(2004、2008、2012)。2012フットサルW杯タイランドでは日本代表のキャプテンを務め、日本フットサル史上初のベスト16に貢献した。近年は慶応義塾大学SFCや明海大学で非常勤講師として教壇にも立つ。