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【CUA質問箱】女子の育成年代に必要なフィジカルトレーニングとは?

4月のCOACH UNITED ACADEMY(以下、CUA)は「フィジカル」をテーマに、育成年代のトレーニングを"間違えない"ための基礎知識をお送りしています。今回は【CUA質問箱】と題し、本テーマに関して視聴者からお寄せいただいた質問に、フィジカリズム・堀内秀憲氏より回答いただいた内容をご紹介します。(取材・文/澤山大輔 写真/keithminer

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■トレーニングの前提は、選手個々の成長発達レベル

まずはご質問の背景について、お送りいただいたメールの内容を引用させていただきます。ご指導されているチームの現状をふまえつつ、堀内氏の回答をご参照ください。
「女子U-12チームは5種から4種への移行にともない、非常に難しいチーム運営をしております。フィジカルに関しては、女子のみで活動してきた女子選手にとって、男子チームとの対戦は約1学年半くらいの実力差があると思われ、県内女子単独チームは男子大会や男子リーグ参戦を控えるところがほとんどです。とくに男子選手とのクイックネス、トップスピードの差は大きい印象があります。

しかしながら、幸いにも当チームはこれまで、週末の練習のみで県内女子ではほぼ毎年上位に食い込む成績をあげてきており、地域ナショナルトレセンにも選手を輩出しています。また今年度末には地域の招待大会女子で準優勝、女子8人制大会でもサッカーどころの各県が揃う2位トーナメントに進出できました。

ただし、これは男子チームを掛け持ちしている女子選手と一緒に活動しているメリットを享受しているからとも言え、今後男子と掛け持ちしている女子選手と一緒の活動が難しくなる私たちのチームとしては、オリジナルの女子選手と男子選手との格差をもっと埋めて行きたいところですが、フィジカルトレーニングを週末のみの活動に新たに組み込むことは、時間的制約の中で非常に難しくなってきています」

このように難しいチーム運営を迫られる中で、今回3つの質問をいただきました。

<質問①>
女子U-12年代のチームに必要なフィジカルトレーニングにはどのようなものがありますか? またどのようなタイミング(例えば、一日おきなのか、週に1回で良いのか、隔週に1回で良いのか)でさせるべきですか?

「まず前提として、トレーニングプログラムを作成する際には"選手個々の成長発達の程度を評価してプログラムを立てる"ということが重要であり、単純に『女子』『U-12年代』という条件だけで判断することはできません。

その上で申し上げますと、限られた短い時間の中で効率的にトレーニングを行ないたいのであれば、どちらかというと神経系の発達を促すようなトレーニングを行なったほうが良いかと思います。『素早く動く』『なるべく早いタイミングで反応する』『なるべく多様な動作を経験する』などです。

ラダートレーニングなども良いですが、こうしたトレーニングでは動きの方向や種類が決められてしまいます。クロスカントリーや不整地(舗装されていない道)を走ることも、神経系と体幹が効率良く鍛えられるので良いでしょう。また、イメージ作りに映像で海外のリーグ戦を観ること、さらにサッカーに限定せず異なるさまざまなスポーツをプレーすることもお勧めです。

またトレーニングの頻度に関して、神経系のトレーニングは毎日実施するのが良いでしょう。仮に筋力トレーニングを行なうのであれば、週2回行なう場合と比較して週1回行なうのでは効果が1/4程度に落ちるということが分かっていますので、こちらも毎日に近いスケジュールで行なうと良いと思います」

<質問②>
週末のみの活動で、土曜日はゲームやトレーニングマッチ、日曜日は1年生から6年生まで一緒の練習ですが、現在、アジリティトレーニングと体幹系のトレーニングを隔週で交互に、日曜日練習のウォームアップに織り交ぜようか検討しています。アジリティは低学年にも有効とみているので、毎週行ないたいところではありますが、体幹や筋力系のフィジカルトレーニングは女子では成長期の早さを踏まえて3年、4年あたりからさせても良いように思いますが、適正ですか?

「まず、アジリティトレーニングに関しては毎日行ないたいところです。『鬼ごっこ』などを学校の昼休みや放課後などにやることも良いでしょう。

また体幹の安定性向上を目的として、筋力系フィジカルトレーニングを小学校3年生、4年生頃に行なうことは、多少の効果は出るでしょう。しかし、サッカーなどのいわゆるオープンスキルスポーツでは、とくに小学生や中学生などに対するプランクやサイドプランクといった静的トレーニングはお勧めできません。

楽しみながらダイナミックに動く中で、結果的に体幹の安定性向上や筋力アップを図れるメニューのうち、個々のチームの周辺環境を考え、できることから選択するのが適当かと思います。年齢は同じであったとしても、成長発達のスピードは3?5年程度の個人差が出てきます。チーム全体で同じメニューを行なうことは、非常に効率の悪いことになります。1年間での身長の伸び具合などを目安に成長発達の段階ごとにグループ分けをし、それぞれに合ったトレーニングメニューを組むことが効率的かつ適切かと思います」

<質問③>
前述の通り、アジリティも体幹系のフィジカルトレーニングもウォーミングアップの段階で織り交ぜています。それは適切ですか? それとも一番最初ですか? 一番最後にしたほうが効果ありますか? あるいは練習と練習の間に別個に織り交ぜるほうが効果的ですか?

「アジリティトレーニングは神経系のトレーニングになりますので、神経がフレッシュな状態で行なうことが大原則です。チームによりウォームアップの方法は違うと思いますが、疲れてしまう前、つまりウォームアップの段階またはウォームアップの直後に実施したほうが良いでしょう。

体幹系トレーニングについては、プランク等の静的なものを実施しているのであれば行なわないほうが良いでしょう。メインの練習メニューにもよりますが、それらに神経系トレーニングが含まれているのであれば、フィジカル系トレーニングを先に行なうことで練習の効果は劇的に下がることになるはずです」

以上の内容はオンラインセミナーでも解説されておりますので、この機会にぜひご視聴ください。

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堀内秀憲(ほりうち・ひでのり)
フィジカリズム副代表。順天堂大学スポーツ健康科学部スポーツ科学科卒。理学療法士、NSCA-CSCS、PHI Pilatesインストラクター、NASE-Japanインストラクター。土屋潤二氏主催・一般社団法人 日本オランダ徒手療法協会準徒手療法士養成コース脊柱A(中級コース)修了。柔道初段。フットサル日本代表FP皆本晃選手、キックボクシング日本ランカー、某競技世界ランカーをはじめ、幅広いクライアントを担当する。
【フィジカリズム】https://www.facebook.com/physicalism