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走ること=重心を前に投げ出すこと/"間違えない"ためのフィジカル講座

4月のCOACH UNITED ACADEMYは「フィジカル」をテーマに、育成年代のトレーニングを"間違えない"ための基礎知識をお送りしています。後半はフィジカリズムの横原和真氏を講師に迎え、速く走るために押さえておくべき原理原則をお話しいただきました。今回は、「走る」という動作の正しい定義と、「速さ」につながる重要な要素である『重心』について解説します。(取材・文/澤山大輔)

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■走りの速さを決定づける3つの要素とは

――速く走る方法については、サッカー指導の現場でもいろいろな見識が語られるようになりました。しかしどのような理論を取り入れているにせよ、長らくゼロコンマ数秒の世界で戦う陸上界から学べるところはいまだに大きいのではないでしょうか。サッカー界では斬新に思える方法も、陸上界ではすでに常識というケースも散見されるように思います。横原さんの専門である陸上では、速く走るための要素を何であると考えているのでしょうか?

横原和真(以下、横原):速く走るための要素としては、極めて多くのことが挙げられます。しかしそれらすべてを論じると膨大になってしまいますので、ここではサッカー選手や指導者の方が原理原則として取り入れられるよう、とくに重要な3つの要素に絞ってお話ししたいと思います。その3つの要素とは、『重心』『軸』『股関節』です。この3点について、2回に分けて説明させていただきます。

まず『重心』について。重心というのは、基本的にまっすぐ立っている状態ではへそのあたりにあります。つま先立ちになると、重心は少し上がります。そして腰を下げると、重心はへその下あたりまで下りてきます。このように、普通に立ったりしゃがんだりするだけでも重心というものは動くわけです。

――なるほど。

横原:しかし、私の専門である陸上のような『クローズドスキルスポーツ』と、サッカーのような対人要素が強い『オープンスキルスポーツ』とでは、重心の捉え方も違ってきます。対人競技ではそれ以外にも多くの要素を考えねばならず、「重心を意識して走る」という意識づけをされたことは陸上競技ほどには多くないでしょう。そこであえて、重心を意識した走りをしっかり身につけることで、いまより速く走ることが可能になってきます。

――重心を意識して移動させることが、速く走るためのカギなのですね?

横原:そうです。そもそも『走る』とはどういうことでしょうか? 走ることの本質を端的に言えば、それは「重心を前に投げ出すこと」です。言い換えると「重心の移動が先にあり、重心を移動させた結果として身体がついてくる」ということになります。この考え方は、非常に重要です。というのも、この原理を理解しないまま脚を使って一生懸命"脚から"移動しようとすると、身体の軸が斜めになり、重心が後ろに残ったまま足を接地させることになります。こうした身体の使い方はスピードが出ないだけでなく、さまざまな問題を引き起こします。

――身に覚えがあります。私も脚が遅かったのですが、その実態は踏ん張って土を踏みしめて大地を蹴る、要するに"脚を先に移動させる"ことばかり考えていました。そして実際、足首の負傷が非常に多かったです。

横原:次回の記事でも解説しますが、重心ではなく脚から先に移動させることは負傷の原因になります。さらに、サッカーには真っすぐだけでなく横の動き、斜めの動き、後ろの動きなど複雑な動きが発生します。さまざまな動作をする中で間違ったフォームで動けば、当然ながら負傷の確率は上がってしまうでしょう。

まずは重心移動の原理をふまえ、正しい動作を身につけること。その上で「自分がどこに動きたいのか」「どう身体を動かせばいいのか」を常に意識することが大事です。くれぐれも「重心が先に動き、身体は後からついてくる」ということを押さえておいてください。

なお『重心』『軸』『股関節』に関しては、COACH UNITED ACADEMYでも動画で詳しく解説させていただいています。映像で視覚的に理解されたい方は、この機会にぜひご入会ください。

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横原和真(よこはら・かずま)
1983年11月15日生まれ。フィジカリズム・ランニングコーチ。日本陸連公認コーチ、日本陸連公認ジュニアコーチなど。現役時代はハードル走を専門とし、全国大会の常連に。西日本インカレ優勝、全日本インカレ7位、日本選手権4度出場などの実績を持つ。引退後はスポーツ事業会社に勤務する傍ら、陸連公認コーチ等多くの資格を習得し、陸上のみならずラグビーやサッカーなど他種目でも選手育成・指導に取り組む。その語り口のわかりやすさ、実践的な指導内容には定評がある。
【フィジカリズム】https://www.facebook.com/physicalism