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「見られずに、見る」ポジショニングの極意/小さなFWが生きる道

8月前半のCOACH UNITED ACADEMYは「小さなFWが生きる道」をテーマに、世界の強国と比べて相対的に小柄である日本の選手が、とりわけFWという苛烈なポジションでいかにプレーすべきかを考える。講師は昨年まで現役でプレーし、2015年5月よりストライカー養成のための『TRE2030 STRIKER ACADEMY』を設立した長谷川太郎氏。167センチというサイズながらJリーグや海外クラブで生き抜いてきた氏の知恵は、ジュニア年代でも"小さなFW"が活躍できるヒントとなるに違いない。(取材・文・写真/澤山大輔)

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■"小さなFW"大国、日本の活路がここにある

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、2012年時点の日本人男性の平均身長は170.9センチ、平均体重は64.6キロだという。東アジアカップに臨む日本代表メンバーの平均身長は約179センチとそれより大きく上回っているが、だからといってその程度の身長がなければ活躍できないのか?というと、必ずしもそんなことはない。

実際、初めての代表選出で期待のかかる浅野拓磨(サンフレッチェ広島)は171センチだし、登録こそMFだが得点力に優れる武藤雄樹(浦和レッズ)も170センチ。今回の代表には選ばれていないが、佐藤寿人(サンフレッチェ広島/170センチ)や大久保嘉人(川崎フロンターレ/170センチ)もJリーグで際立った活躍を見せている。

育成年代では、その時点でより身長の高い選手をFWに起用し、その選手めがけて長いボールを蹴りこむチームもまだまだ少なくない。そうしたサッカースタイルの是非はここでは論じないが、「日本人の平均身長ぐらいの背丈であっても、FWとして得点を量産することは可能である」ということは、上記のJリーガーたちが数字をもって証明していると言えるだろう。

では、具体的に彼ら"小さなFW"はどのように自分を活かしているのか? 自身も身長167センチと小柄な部類に入る選手ながら、2005年にJ2甲府で17得点をマークして日本人得点王となった長谷川太郎氏(TRE2030 STRIKER ACADEMY)は、"相手に見られず、相手を見るポジショニング"が非常に重要であるという。

「得点を奪うことに長けている選手は、細かい動きに多くの工夫を持っています。サッカーでは主に4バックを使うチームが多いですが、小さなFWが特に考えるべきことは『相手にどれだけ見られないでプレーするか』『相手をどれだけ見てプレーするか』の2点です。ここを考えることで、相手に潰されずに良いプレーができるようになります」(長谷川氏)

具体的には、どういうポジショニングをすれば良いのだろうか?

「たとえば味方がボールを持っている局面で、ボランチから右サイドバックにボールが渡ったとします。そのとき、相手のディフェンスは原理原則としてこちらから見て右にスライドします。そこで下図のポジション(相手DFの視界)で受けようとしても、FWは相手DFに"見られて"プレーすることになり、ボールが入っても潰されてしまったり、あるいはパスのタイミングを読まれてインターセプトされたりします」

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「そうではなく、下図のように相手DFの視界の外で受けるようにすると、相手DFはボールとFWを同時に視界に入れることが難しくなります。この考え方が非常に大事なのです」

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身長の大きな、フィジカルコンタクトの強い選手ならそこまで気にする必要はないかもしれない。しかし、上背のない選手はいかに相手に潰されないように、かつ相手を出し抜くポジショニングを取るかが肝要だ。

「あるいは、4バックのCB2人の間にわざとポジションを取ります。このポジションは両CBに見られないポジショニングなのですが、これが1メートル左に寄ると、相手DFに見られてしまいます。しかし味方が右サイドでボールを持っているなら、向かって右のCBにより近いポジションを取れば、相手はよりマークに付きづらくなります。このように『間』でポジションを取るといっても、ボールの位置によってマークしづらいポジショニングは異なります。これを意識してポジショニングを図ることが、非常に重要になってきます」

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今回のCOACH UNITED ACADEMYでは、長谷川氏に「動きの極意」「ゴールキックの競り方」「ポストプレーの工夫」「CK時のポジショニング」「セカンドボールを拾うコツ」という5つのテーマに絞って解説いただいた。動きの質という意味では、育成年代にとどまらずすべてのプレーヤーにとって実践的な内容になっている。この動画を見れば、身長が低いというだけでFWの価値が決まらないことがよくわかるはずだ。一人でも多くの"小さな"選手が、FWとしての能力を開花させることを願ってやまない。

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長谷川太郎(はせがわ・たろう)
1979年8月17日生まれ。東京都出身。現役時代のポジションはFW。柏ユース→柏、新潟、甲府、横浜FCなど。2005年にバレー、石原克哉と3トップを組んで17得点をマークし、J2日本人得点王となる。2014年、インド・ムハンメダンFCを退団し現役引退。2015年5月、『TRE2030 STRIKER ACADEMY』を設立、本物のストライカー養成を目指して日夜励んでいる。

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