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試合から逆算したコンディショニングが戦えるチームの土台になる/コンディショニングの実践者(6)

毎年、主力選手の顔ぶれが変わる中、4年連続でJ1残留を果たしているのが、ヴァンフォーレ甲府だ。どのように、ベテラン揃いのチームのフィジカルコンディションを整え、試合で最高のパフォーマンスを発揮できるように導いていくのか。谷真一郎コーチに話を聞いた。(取材・文/鈴木智之)

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――ヴァンフォーレ甲府のフィジカル・コンディショニングコーチとして、開幕前のキャンプは重要な仕事だと思います。シーズンを通して戦う体づくりをするために、どのようなプランニングをしたのでしょうか?

:今季開幕前のキャンプは。過去最長の27日間行いました。キャンプでの大きなテーマは「中・長期間の離脱者(けが人)を出さないこと」です。キャンプ前はシーズンオフなので、選手のコンディションはもっとも低い状態にあります。さらに甲府には42歳の土屋征夫選手、39歳の盛田剛平などの大ベテランがいます。そのため、サッカーの競技特性から外れたトレーニングをすると、ケガのリスクがかなり高まります。そこで、選手の体調、身体のキレ、顔色を見ながら、メニューを組んでいきます。

――コンディショニングで大切なことは、どのようなことでしょうか?

:私の考えは「一日でも長くグラウンドに立つこと」です。キャンプでケガをして1週間、2週間と離脱してしまうと、他の選手とのコンディションの差は開く一方です。そこで復帰を焦ると、状態が良くないままトレーニングをするので、ケガのリスクが高まってしまいます。そうならないために、選手が少しでも違和感を覚えたら練習を休むように指導しています。

――選手によっては、練習を休むとポジションを奪われてしまうのではないかと考える人もいます。

:そこは、チームとして意思統一しているので問題ありません。コンディショニングは選手、監督、スタッフとのグループワークです。「いま無理をして、ケガをして1週間離脱するのと、午後の練習を休んで、リフレッシュした状態で明日の練習に参加するのと、どちらがいいと思う?」という話をすると、「今日の午後は休みます」「トレーニングの最後のセッションは抜けます」と、選手が判断します。その判断を間違えて、余計にトレーニングをすることで肉離れを起こし、中期の離脱となってしまったらアウト。コンディションを積みあげられなくなってしまいます。コンディショニングの重要性は、監督や他のスタッフも熟知しているので、身体に違和感のある選手が練習を休むことは、ネガティブにはとらえていません。

――今季開幕前のキャンプでは、どのようにして選手のコンディションを作り、高めていったのでしょうか?

:一次キャンプは静岡県で行ったのですが、フィジカルトレーニングとサッカーのトレーニングを融合させて、フィジカルと同時にサッカーの戦術的な要素も身につけていきました。コンディション面では、最終日にフルコートで60分間、トレーニングができる状態に持って行きました。その後、2日間のオフを挟んで宮崎県で二次キャンプをしました。そこではトレーニングマッチの時間を徐々に伸ばし、90分の試合を数試合こなすことで、戦術面の浸透とコンディションの向上を図りました。螺旋階段を登るように、徐々にコンディションを高めて、開幕戦の日には足がうずうずして、速く試合がしたい! という状況に持っていきました。

――長期に渡ってトレーニングが続くキャンプ中、身体のケアはどのようにしていたのでしょう?

:キャンプ中は1日に複数回、練習をすることもあります。通常よりも疲労しやすいので、回復が非常に重要になります。そのため、食事で1日に5000キロカロリーを摂取するよう、選手たちに伝えています。これは一般の成人男性が摂取するおよそ倍の量で、3食で摂ろうとすると、膨大な食事量になってしまうので、とくに朝ご飯をたくさん食べるように指導しています。あとは補食ですね。トレーニングと休息、回復はセットで考えるべきです。トレーニングで壊れた筋肉を修復させるためには、アミノ酸が不可欠。食事で補えないものは、選手が自主的に摂取しています。トレーニングの内容や疲労度によって、目的を持って何を摂取しないといけないかを考えるのも、選手に求められる能力だと思います。

――コンディション調整のために、行っている取り組みはありますか?

:選手たちに毎日体重を量らせています。体重がプラスマイナス1kg違うと、プレーの質が大きく変わります。毎日、体重を管理して微調整しながら、もっともコンディションが良い状態を探っていきます。一番の目的は、良いコンディションで試合を迎えること。そのために良いトレーニングをし、タンパク質やアミノ酸を中心としたバランスのとれた栄養や食事、良い休息をとることで、頭と身体のコンディションを向上させ、シーズンを戦い抜くための強固な土台を作っていきます。開幕前のキャンプでは、それができたと思います。今季も5年連続のJ1残留に向けて、チーム一丸となって戦いたいと思います。

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谷真一郎(たに しんいちろう)
1968年、愛知県名古屋市生まれ。愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』である。

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