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「攻守の切り替え」をテーマにした実戦的トレーニング/育成年代におけるフットサルの指導

COACH UNITED ACADEMYのセミナーでは、ボンフィンフットボールスクール・ゼネラルマネージャーであり、JFAのフットサルテクニカルダイレクターを務める小西鉄平氏に「育成年代におけるフットサルの指導」をテーマに、全4回に渡り講義を行っていただいた。その最終回としてトランジションコントロールのより実戦的なトレーニングについて紹介する。(取材・文/鈴木智之)

<<ゲームを支配するために重要なトランジションコントロール

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■攻守に瞬発力を生み出すトランジションコントロール

小西氏がセミナーを通じて発信するのが「チームとして、攻守に瞬発力を生み出すこと」。選手全員の意志が統一され、チャンスの局面になるとフィールドプレイヤーとゴレイロ(GK)の5人が連動し、わずかな時間でゴールに迫る。あるいは、素早い寄せでボールを奪う。

チームとしての瞬発力を生み出すために、選手同士の共通理解は欠かすことのできないものだ。選手同士の共通理解――つまり「チームコンセプト」を選手に植え付けるのが指導者の役割であり、コンセプトのもとにプレーの判断基準が確立され、選手がプレーする際の目安になっていく。

フットサルは試合中、攻守が目まぐるしく切り替わるスポーツだ。そのため、プレーの判断に要する時間は短く、ボールを持って次のプレーを考えていたら、すぐさま相手チームの選手に囲まれてしまう。

フットサルの競技特性上、試合の主導権を握るために重要なのが「トランジションコントロール」だ。前回の記事では、トランジションコントロールをテーマにしたトレーニング前編をお届けした。後編ではより実戦に近い形で、トレーニングを紹介したい。

まずは「攻撃4対守備3+GK1」のトレーニング。使用するのはハーフコートで、攻撃側と守備側に分かれて開始位置に立つ。攻撃側はゴールを決めることを目的とし、シュートが入れば1点。守備側は攻撃側からボールを奪い、パスを3本つないだら1点とする。

トレーニングをオーガナイズするコーチからは「まずはゴールを狙おう」というアドバイスが送られていた。フットサルはコートが狭いため、シュートレンジが広い。ジュニア年代であっても、ゴールから離れた位置からシュートを狙うことができる。コーチングでは「ゴールへの意識づけ」とともに、「どこにポジションをとれば、ゴールの可能性が上がるか」という部分にもフォーカスしていく。

トレーニングのテーマは「攻守の切り替え」であり、トランジションが最優先なのだが、それはあくまでゴールを奪うための手段であって目的ではない。目的は「シュートをゴールに決める」ことである。そのため、相手にボールを奪われたら、もっとも近くにいる選手が奪いに行くことを徹底。そして、奪ったボールをすぐにシュートへ持ち込む。もしシュートの可能性がなければ、パスを繋いで相手ゴールに迫り、シュートチャンスを作り出す。

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前回の記事で紹介したように、ウォーミングアップから攻守の切り替えを意識づけさせた上で、トレーニングの後半は試合に近い状況で行う『総合的なトレーニング』を通じて、判断や決断、技術といった、フットサルに必要な要素を高めていく。

続いて行われたのが「4+GK対4+GK」。ボールを保持しているチーム(攻撃側)は菱型にポジションを取り、相手ゴールに一番近い選手にパスを入れ、ゴールを目指す。「菱型の頂点に位置する選手は、ハーフラインを超えられない」というルールを設定し、攻撃の深さを作ることを意識させる。

トレーニング中、後方の選手がボールを持った状態でまず狙いたいのが「相手選手の背後」だ。相手ゴールに近いところに、どうすればボールを入れることができるのか。そのためには、奪ったボールを縦に入れる意識を持つとともに、足元だけでなくスペースで受けることも重要になる。

最後は5対5のゲームで締めくくり。ここでも、すばやい攻守の切り替えを意識させるために「相手ボールを敵陣で奪って、シュートを決めると2点」「相手からボールを奪い、パス3本つないでシュートを決めたら2点」「それ以外は1点」というルールを設定。ゴールを決めるために、相手ゴールに近いポジションをとり続ける。あるいはパスを受ける選手は相手守備者の背後のスペースを狙うといった、ポジショニングや判断についてもコーチングしていく。

■ティーチングとコーチングを使い分けコンセプトを理解させる

小西氏はトレーニングのポイントについて「相手のすばやいプレスを回避する判断やテクニック、3人目の動きが出ると良い」と話し、「そこに注視したティーチングとコーチングの使い分けも大切」と語る。

最後に小西氏が、指導者に向けて次のようなアドバイスをくれた。

「育成年代のトレーニングは、その日だけで100%完成することはありません。日々の積み重ねの中で選手に意識させ、理解させて納得させる。その結果、選手自身が行動できるようになることが大切だと思います。そのために指導者ができることは、選手が自信を持ってプレーできるような声掛けをすること。やみくもに否定するのではなく、自信をつけさせるためのアプローチをしてほしいと思います。指導者それぞれにアイデアがあり、プレーの状況を理解した上で、選手も理解できるように働きかけていく。それが育成の指導者に大事なことだと思います」(小西氏)

COACH UNITED ACADEMYでは、ここで紹介したトレーニングの動画を配信中。全4回の動画でフットサルの原理原則を学び、「攻守の切り替え」を実際にトレーニングにどう落とし込んでいるのかを、ぜひご覧頂ければと思う。

<<ゲームを支配するために重要なトランジションコントロール

小西鉄平(こにし・てっぺい)
1977年10月9日生まれ。神奈川県出身。県立旭高校卒業後、横浜スポーツ&カルチャークラブ(Y.S.C.C.)でプレー。指導者としてボンフィンフットボールスクールコーチ、FリーグU-23選抜監督、ミャンマー女子フットサル代表監督などを歴任し、現在はボンフィンフットボールスクール・ゼネラルマネージャーを務める。また日本サッカー協会(JFA)のフットサルテクニカルダイレクターとして、トップチームの強化や指導者養成にも携わっている。JFA公認A級コーチジェネラルライセンスおよびJFA公認フットサルB級コーチライセンス保持。

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