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あなたのチームはなぜ守れない⁉スペインでは13歳までに教える"守備(ディフェンス)の個人戦術"とは

スペイン・バルセロナを拠点に、世界中のクラブ、選手の指導&コンサルティングを行っているサッカーサービス。サッカーのプレーを分析し、コンセプトを抽出してトレーニングに落とし込み、選手に理解させて習得させる分析力と指導力は卓越したものがあります。そんな彼らが「日本トップ選手のプレーから見る、守備における日本の育成年代の問題点と課題」をテーマに、講習会を行いました。指導者だけでなく、サッカーをもっと深く理解したい、試合を見るときのポイントを知りたいという人にとっても、必見の内容です。

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■日本サッカーに足りないのは「守備(ディフェンス)のコンセプト」

みなさん、こんにちは。サッカーサービスのフランです。私は以前、日本サッカー協会の管轄である、JFAアカデミー福島U-13のコーチとして、日本の選手達の指導をしていました。その間、多くの日本の試合を見てきました。

日本代表やJリーグ、育成年代の試合を見ていると、とくに守備(ディフェンス)面でのコンセプトが知られていない。あるいは知っているのかもしれませんが、選手がプレーの中で表現できていないと感じることがありました。そこで、日本サッカーがより良くなるために、知っておきたい守備のコンセプトについて、紹介したいと思います。

まず、自分のチームが守備(ディフェンス)をしている状況で、ボールを持っているのは相手チームです。攻撃時のプレーの優先順位として、攻撃側はまずDFラインの裏のスペースを狙います。そこでボールを受けることができれば、得点の可能性が高くなるからです。ただし、守備側も当然、最終ラインの裏のスペースはケアします。とくにセンターバックの選手は、自分の背後をとられることはもっとも避けるべきです。

攻撃側は最終ラインの裏にボールを送れないとなると、次に狙うのはDFラインの前のスペースです。いわゆる「バイタルエリア」と呼ばれる、MFラインとDFラインの間にボールを入れて、DFラインを崩させるように仕向けていきます。

FCバルセロナのように、ボールをポゼッションして攻めることを得意とするチームは、ピッチの中と外、前と後ろという形で自在にボールを動かして相手選手を誘導し、進入するスペースを作ろうとします。このときに、守備(ディフェンス)側の選手がプレーの判断を誤ると、相手に攻めこむスペースを与えてしまい、パスやドリブルでスペースを使われ、ピンチを招いてしまいます。

そうならないために、指導者は「守備のコンセプト」を選手に与える必要があります。選手個々が状況を見て、どう判断してプレーの決断をするか。適切なプレーの認知、判断、決断をすることが、良いプレーにつながると考えています。

■ブラジルW杯日本代表の試合で起こった2重のミス

ここでは、「U-13年代で身に付けるべき、守備の個人戦術」について、紹介します。1つ目は「守備(ディフェンス)のときは、まず内側のパスコースを切ること」です。つまり、「ピッチの外から中へ」あるいは「ピッチの中央からゴール前へ」ボールを入れさせないことを第一に考えます。

もちろん、相手にプレスをかけ、ボールを奪うことも重要です。しかし、ボールホルダーに対して、何も考えずに寄せることが良いプレーではありません。相手の足元からボールが離れていたり、コントロールをミスしたときは、すぐさま奪いに行くべきです。そこで必要なのは「いまは寄せてボールを奪いに行くべきか」それとも「ゴールへ向かうパスコースを切るべきか」を、ピッチ内の状況から判断し、より良いプレーを選手自身が選択することです。これは、U-13年代で身につけるべきコンセプトであり、日本の多くの選手に、改善の余地があるプレーです。

「守備時の判断」については、日本代表の中にも、理解していない選手が見受けられます。以前、ブラジルW杯のコートジボワール戦を分析しましたが、中盤の選手の判断ミスにより、ピッチの内側のスペースに簡単にパスを通され、ゴール前にボールを運ばれる場面が何度か見られました。

例を挙げましょう。自陣のセンターサークル付近にいたコートジボワールのボランチが、ドリブルで前にボールを運びます。このとき、日本のボランチは前方に数歩出てしまい、自分の背後に相手が進入するスペースを作ってしまいました。コートジボワールの別の選手は、そのスペースでパスを受けて、サイドにパスを展開。ペナルティエリアに進入され、ゴール前にクロスボールを上げられてしまいました。この場面では、コートジボワールの選手のキックミスにより、事なきを得ましたが、ここでは「選手個人の判断ミス」と「グループの判断ミス」という2つのミスが重なっていました。

まず「選手個人の判断ミス」ですが、ボールホルダーに寄せるべき状況ではなかったのにも関わらず、不用意に前進し、自分の背後のスペースを空けてしまったことにあります。そこに、グループとしての判断ミスである「空けたスペースを左サイドにいるMFが埋める動きをしていない」というミスが加わり、コートジボワールの選手にバイタルエリアでフリーでパスを受けられ、ボールをゴール前まで運ばれてしまいました。

前方に出てプレスをかけに行ったボランチの選手は、自分の背後を見て、味方がスペースを埋める動きをしないのであれば、ラインを自ら崩して、前方へ飛び出るべきではありませんでした。「カバーリングがいるのを確認した上で、自分の持ち場を離れてプレスに行く」というのは、U-13年代で身につけるべきコンセプトです。

■U-13年代までに身に付けておくべき守備の個人戦術とは?

選手が知っておくべきは、守備(ディフェンス)の基本的なコンセプトである「ラインを保ってディフェンスをすること」です。常に背後を見て状況を認知し、ディフェンスラインのギャップ(空間のズレ)を調整します。相手と味方の位置を見て、常に立つ位置を調整していきます。

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相手チームがボールを持っている場合、守備側はFW、MF、DFのラインを保ちながら、ピッチ内側へのパスコースを消すための動きをしていきます。そのベースがあった上で「ボールを奪いに行く」というプレーが威力を発揮します。冒頭でお伝えしたとおり、組織がない中で個人の判断でボールを奪いに行くと、かわされたときに大きなスペースができてしまい、ピンチを招くことにもなりかねません。

では、守備の組織、コンセプトの共通理解があった上で、どのタイミングでボールを奪いに行くのが良いのでしょうか? プレーの順番としては、まず背後を見てピッチ中央へのパスコースを消し、ゾーンを守ります。そして相手がプレッシャーを感じ、コントロールミスをして足元からボールが離れたときに、100%の力で寄せます。ほかにも、相手が攻撃方向とは反対(後方)を向いた時も、寄せに行くチャンスです。スピードを出して寄せましょう。

選手個人の判断をベースに、グループとしてどう動くかは、U-12、13の選手であれば、十分に理解できるコンセプトだと思います。この年代で、もっともベーシックな守備(ディフェンス)の個人戦術を身につけることができれば、その上に、状況に応じた個人戦術、グループ戦術、チーム戦術と積み重ねていくことができます。トレーニングを通じて、選手がコンセプトを理解して身につけ、試合で発揮できるように導いていく。それが、我々指導者がすべき、指導であると思います。

守備(ディフェンス)のコンセプトは、プレーエリア、状況によって様々な種類があります。それらを紹介するために新たにメールマガジンを開始いたしました。日本サッカーの課題である守備(ディフェンス)をテーマに、全5回にわたって指導法やトレーニング法を解説していきます。ぜひご登録ください。


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