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「選手目線から見た、指導者の正しい在り方」/ FC東京育成マイスターが紐解くコーチング学

7月のCOACH UNITED ACADEMYでは、FC東京の育成哲学を紹介。普及部長・川村元雄氏を中心に、FC東京で100試合以上に出場した佐藤由紀彦コーチ(育成部/U12育成担当)と、札幌、水戸、金沢でプレーした経験を持つ、権東勇介コーチ(普及部)の3名で、育成についてディスカッションを実施した。ここでは、多岐に渡ったテーマの一部を紹介したい(取材・文 鈴木智之)

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■成長期の過程で出会う指導者の質がサッカー人生に大きく関わってくる

ディスカッションのテーマは「選手目線から見た、指導者の正しい在り方」。司会を務める普及部長・川村元雄氏は「サッカーを続けていくと、プロになる瞬間がある。その時に向けて、育成年代の選手に対して、元Jリーガーであり、現在は指導者の二人から心構えを聞かせてほしい」と投げかける。

佐藤コーチは高校時代、名門・清水商業高校のエースとして、高校選手権、インターハイ、国体、高円宮杯など主要タイトルを総なめ。華麗なプレースタイルも相まって、高校サッカー界のアイドル的存在だった。プロを目指してサッカーに励んでいた少年時代を、次のように振り返る。

「小学生のときの目標は、全日本少年サッカー大会に出る事でした。当時のアイドルは高校サッカー選手権に出る選手たちで、電車を乗り継いで県予選から見に行っていましたね。中学になると、目標が全国大会に出て優勝することに変わり、高校2年生の時にJリーグが発足したので、全国優勝はもちろんのこと、Jリーガーになることが目標でした。小中高時代は優勝を義務づけられていたので、苦しいことの方が多かったですね。コーチは基本的に厳しくて、怒られてばかりでした。ただ、ふとしたときにコーチに褒められたり、周りの大人に『よくやったね』と言われたので、その効果が何年も続きました。当時はまだ子どもだったので、褒められたいがゆえに一生懸命やっていたのだと思います」

普段、あまり褒めてくれないコーチだったからこそ、たまに褒められたことが無性にうれしく、その気持ちが何年も続く――。佐藤コーチはそのようなうれしさを胸に秘め、日々のトレーニングに励んでいたという。

権東勇介コーチは東京都町田市の出身。サッカーどころ町田の名門、町田JFCでサッカーに打ち込んだ権東コーチは、中学時代の指導者との出会いが、プロになる道を切り開いてくれたと語る。

「サッカーに熱心な地域で育ったので、勝ち負けにこだわる少年時代で、ひとつの試合の勝ち負けが、将来につながるような環境でした。そんな中でも、試合に負けた時にコーチから『お前らが悪い』と言われたことはなくて、『自分の教え方が悪かった』という言い方をする人でした。選手のせいにすることなく、常に『お前はできるんだ』と励ましてくれたことは、いまでもはっきりと覚えています」

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■痛みを「共感」することで選手たちから人望を得ることができる

多感な中学時代、チームメイトの中には、サッカー以外に目が向いてしまう仲間もいたという。そんな中、彼らの前に立ちはだかったのが、中学時代の監督だった。

「監督はとにかく熱い人で、チーム全員の矢印を同じ方向に向けさせるため、色々な声掛けをしてくれました。記憶に残っているのが、良いものは良い、悪いものは悪いとはっきり言ってくれたことです。良いことをすれば褒めるし、悪いことをすれば叱る。当たり前のことですが、とくにいまの時代、大人が子どもにはっきりと良い、悪いと言えないことも多いじゃないですか。でも、とくに中学生のような多感な時期に、間違ったことをしたら『それは間違っている』と、大人がはっきり言うことは大切だと思うんですよね」

権東コーチは中学時代の経験から、指導者となったいま、選手が間違ったことをしたら「それは良くない」「それは良いね」と◯なのか×なのかを、はっきりと言うように心がけているという。

佐藤コーチはJリーガーとして、岡田武史、石崎信弘、大熊清といった、数々の監督の下でプレーしてきた。そんな佐藤コーチが指導者から大きな影響を受けたエピソードとして「監督が弱みを見せた瞬間」について話してくれた。詳細はぜひコーチユナイテッドアカデミーの動画をご覧頂ければと思うが、監督が選手の前で弱みを見せたことで、試合に向けてモチベーションのスイッチが一気に入ったという。

かつてはJリーガーとして第一線で活躍し、現在はFC東京の普及部でU12カテゴリーの選手たちの指導に当たる佐藤、権東両コーチ。彼らは指導者であると同時に、子どもを持つ父親でもある。ディスカッションのテーマは、指導者、父親の両面から、どのように子どもたちに接していくかといった内容にも踏み込んでいく。普段、動画として表に出ることはほとんどない二人が、現役時代の経験、指導者として大切なことを語ってくれているので、興味のある方はぜひ動画をご覧頂ければと思う。
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<プロフィール>
川村元雄(かわむらもとお)
東京都豊島区出身。徳島で育成普及に携わり、JFAキッズプロジェクトのメンバーやJFA公認指導者インストラクターとして活動。2010年のFC東京へ加入後、子どもたちへの指導に加え、指導者インストラクターとしても豊富な経験を活かす。2015年、普及部長に就任。

佐藤由紀彦(さとうゆきひこ)
普及部/U12育成担当。静岡県富士市出身。現役時代は清水商業高校のエースとして全国選手権で優勝し、鳴り物入りで清水エスパルスに加入。山形、FC東京、横浜F・マリノス、柏、仙台を経て、2014年に長崎で現役を引退。2015年よりFC東京普及部にて、ジュニア年代の指導に当たっている。

権東勇介(ごんどうゆうすけ)
東京都町田市出身。町田JFC、桐光学園、道都大学を卒業し、札幌に加入。その後、水戸、金沢でプレーし、2008年の引退後、指導の道に入る。札幌のスカウトを経て、2012年にFC東京の普及部へ加入。2014、15年はアーセナル市川サッカースクールのチーフコーチとして活動し、2016年より復帰。

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