11.21.2016
リーグ戦で生き残るにはどのようにして「シュート」へ結びつけるかがカギ / 得点力を高める実戦式シュートトレーニング
COACH UNITED ACADEMYでは、東京都渋谷区、町田市を拠点に活動するFCトリプレッタのトレーニング動画を公開中。トリプレッタU12渋谷は今季のT1リーグ前期で1勝1分7敗の窮地と苦しみながら、後期、夏以降は6勝2分の成績を収め、残留を決めた。はたして、T1で奇跡の残留を遂げる原動力になったトレーニングとは、どのようなものだろうか? 後編では実戦形式のトレーニングを紹介する。(文・鈴木智之)
「受け身にならない」つねに先手先手を心掛ける
指導をするU12渋谷の海老根宏コーチのもと、トレーニングは前編で紹介したウォーミングアップ、シュート練習を経て、より実戦に近い形の「2対2+3サーバー」が行われた。サーバーはグリッドの両外に2人、中央の下がり目の位置に1人を置く。グリッド内は2対2になるが、サーバーがいる分、攻撃側が数的優位となる。
攻撃側はゴールを決めることを目的とし、守備側はボールを奪い、中央下がり目の位置にいるサーバーへパスを渡せば、攻守交代となる。オフサイドラインを設定し、ラインの裏側に相手選手がいないときは、そのゾーンでパスを受けることはできないというルールを設け、プレーインテンシティを高めていく。
攻撃側は数的優位を活かし、サイドのサーバーを使って、クロスをゴール前に入れる。あるいは、グリッド内で2対2の状況になるため、パスの出し手は2人のDFの間のスペースを狙い、スルーパスからシュートまで行く形を意識する。このトレーニングは、前編で紹介したシュート練習を実戦形式にしたものである。
海老根コーチは「クロスを受ける選手は、ゴール前への入り方を考えよう。どこでボールを要求すれば、素早くシュートまで行くことができる?」「クロスに対して、相手が嫌がるところへ入っていこう」とコーチング。ゴールへの意識が低い選手に対しては、「1対1では、相手をかわしてシュートまで行こう!」と語気を強め、「ファーストタッチで相手をかわせるコースにボールを置き、ゴールまで行こう」とアドバイスを送っていた。
どんなシチュエーションからでも最終的にはシュートへと繋げていく
続いては「3対3+1サーバー」へ移行。ルールは先程のトレーニングと同じ。攻撃側はゴールを狙い、守備側は奪ったボールをサーバーに預けるか、ドリブルでラインを突破すれば攻守交代となる。ここでは海老根コーチから攻撃側に「ドリブル突破からのシュート。パスからのシュートなど、どんどんチャレンジしていこう」と指示があり、守備側へは「1対1、数的優位の状況ともに粘り強く、しっかりポジションをとろう」とポイントを説明した後、トレーニングがスタートする。
選手たちがプレーをしている間、海老根コーチがシンクロしてコーチングをしていく。攻撃側の選手には「どうすれば周りが見える?」と問いかけ「全体を見るためには、ワンタッチでパスをはたいてポジションを取り直すこと。前向きな選手をシンプルに使おう」とアドバイス。また「ボールを動かして、相手を混乱させる」「ボールだけを見ず、常にパスコースを作る」「シュートチャンスは絶対に逃さない」。と、ゴールへの意識を強く植え付けていく。
最後に、海老根コーチは指導の考え方について、次のようなメッセージをくれた。
「トリプレッタではトレーニングの内容だけでなく、選手の心に響くコーチングを心がけています。選手がどのような気持ちでグラウンドに来たか。どういう声をかけられたら、トレーニングに真剣に取り組めるかを、常に意識して取り組んでいます。指導者の方は練習メニューの作成に悩むこともあると思いますが、大切なのは、選手がどういう気持ちで取り組むかだと思います。練習メニューだけでなく、選手と向き合って全力で取り組んでいって頂ければと思います」
COACH UNITED ACADEMYでは、FCトリプレッタ渋谷U12のトレーニング動画を公開中。T1リーグでの絶望的な状況から立て直したチームが『攻撃』にフォーカスして行うトレーニングは、大いに参考になるだろう。
<プロフィール>
海老根宏(えびねひろし)
トリプレッタU-12渋谷監督/GKコーチ/レジスタスクールメインコーチ。
【選手歴】百合丘SC-読売日本SCJY-読売日本SCユース-拓殖大学
【指導歴】日本サッカー協会B級ライセンス/東京都サッカー協会GKプロジェクトスタッフ/渋谷区トレセンコーチ/東京都第7ブロックトレセンコーチ
取材・文 鈴木智之