TOP > コラム > プレーの選択肢を増やすボールコントロール術 / 川崎フロンターレU-10が徹底する「ボールの置き所と運び方」

プレーの選択肢を増やすボールコントロール術 / 川崎フロンターレU-10が徹底する「ボールの置き所と運び方」

COACH UNITED ACADEMYでは、前回に続き川崎フロンターレU-10のトレーニングを紹介。近年、ジュニア年代の各大会で上位に進出し、強豪の地位を築くフロンターレのジュニアは、どのような考えのもとに指導をしているのか。U-10を指導する、玉置晴一コーチのトレーニングの様子をお届けしたい。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

KFU-10_006.png
<< 前回の記事を読む 

相手の位置も見ながらボールを動かす

前回の記事では、個人のウォーミングアップから始まり、コーンドリブルでボールタッチとボールを運ぶ際の身体の向きをトレーニングする所までをレポートした。続いては、トレーニングでトライした技術を、相手がいる中でどのように発揮するかという視点から、1対1のメニューが組まれていた。

設定としては、横長のグリッドに選手が2人入り、攻撃側と守備側に分かれる。守備側が攻撃側の選手にパスを出して、1対1がスタート。攻撃側は守備側の背後の両脇にある、2つの四角いグリッドのどちらかに入ることを狙う。守備側がボールを奪ったら攻守交代。そのまま続け、両脇にあるグリッドの中にドリブルで入ることを目指す。

ここで玉置コーチから攻撃側の選手(ボールを保持している選手)に対し、ボールを置く位置を気にしながら、相手と駆け引きをすること。どこにボールがあると方向を変えやすいか。相手に寄せられないように、角度をつけてボールを持つことなどのコーチングが行われていた。

また、守備側の選手には、攻撃側の選手に対して、簡単にドリブルの方向を変えさせないよう、コースを切りながら付いて行くこと。ボールにアタックし、相手から奪うことを意識するような声掛けがされていた。

KFU-10_007.png

ボールの置き所でプレーの幅が広がる

1対1でボールの持ち方、ドリブルの方向の意識付けがされたところで『2対2+2サーバー』に移行する。ここでは横長のグリッドの長い辺の中央にある、マーカーで区切られた2mほどのゾーンにサーバーが入り、グリッドの中では2対2が行われた。

攻撃側の選手が目指すのは、反対サイドのラインを突破すること。周りに味方がいる状況で、どのようにドリブルを使って前進すれば良いか。ドリブルをするのか、パスを出すのか。サーバーへのパスコースは空いているのかといった、複数の選択肢の中からプレーを選び、状況に応じた技術の発揮にトライしていく。

ここで玉置コーチは「プレーの選択肢を増やそう。ボールの置き所で、相手にプレーを読まれることもある。ボールの持ち方で、この方向にパスは来ないと考えられるよね。ボールの置き所でプレーの選択肢が変わるよ」とアドバイスを送っていた。

KFU-10_009.png

最後の練習は『2対2+2サーバー』の発展系として、『2対2+2対2+2サーバー』が行われた。これはひとつ前に行った『2対2+2サーバー』が2つ続く形。より実戦形式に近づき、高いプレーインテンシティの中で素早い判断、技術の発揮をすることが求められる。

具体的な選手のプレー、玉置コーチのコーチングについてはCOACH UNITED ACADEMY動画をご覧頂ければと思うが、U-10のカテゴリーであっても、ボールと自分との関係のみで行われるアナリティックトレーニングに終始するのではなく、試合に近い状況で技術と判断が同時に高められるグローバルトレーニングが実施されていたのが印象的だった。

川崎フロンターレの後藤静臣アカデミーダイレクターが「トレーニングで身につけた技術を試合の中で発揮することが大事」と話していたが、U-10のカテゴリーであっても、試合の中で発揮するための技術、判断にフォーカスしている部分は、多くの育成年代の指導者の参考になるだろう。

この内容を動画で詳しく見る

<< 前回の記事を読む 


<プロフィール>
後藤 静臣/
1966年生まれ、福岡県出身。福岡大学卒業後、富士通サッカー部(日本サッカーリーグ)に入部。その後、東芝サッカー部(日本サッカーリーグ)、コンサドーレ札幌、大分トリニータでプレーし、98年に現役を引退。大分トリニータU-18コーチを経て、2001年より川崎フロンターレでスクールやアカデミーのU-12及びU-15で監督などを務める。

玉置 晴一/
1982年生まれ、愛媛県今治市出身。今治工高を卒業後、川崎フロンターレに加入。 精度の高いパスを繰り出すレフティーとして活躍したが、ケガの影響もあり3年で現役引退。 2005年にスクールの担当コーチとして復帰後、U-12コーチ、U-10監督などを務める。