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呼吸で"ゾーン"の状態を作り出す / フットサル日本代表選手も取り入れたヨガトレーニング

日本におけるヨガの第一人者、ケン・ハラクマ氏は、ヨガでアスリートを支え、アスリートを応援することを目的に、2015年に『一般社団法人アスリートヨガ事務局』を立ち上げた。そこでは『アスリートヨガ指導員』という資格を作り、アスリートがヨガを取り入れるときに、正しい知識で教えられる人材を育成している。

スポーツにおけるヨガの有用性は年々広まってきており、日本代表の長友佑都選手は『ヨガ友』という本を出版するなど、サッカー界にもヨガの波は押し寄せてきている。サッカー界と共通の話題の多いフットサルにおいても、感度の高い選手はヨガを取り入れ始めており、日本代表の滝田学選手(ペスカドーラ町田)もそのひとりだ。

この日は滝田選手の希望により、チームメイトの日本代表GKイゴール選手、そして原辰介選手、中村充選手の3名がケン・ハラクマ氏のもとで『アスリートのためのヨガ』を体験した。その様子を2回に分けてレポートしたい。(取材・文/鈴木智之、協力/一般社団法人アスリートヨガ事務局)

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■意識と身体のつながりを感じる

ケン・ハラクマ氏は集まった4名の選手に向けて「ヨガは幅広いので、何が皆さんにとって適切なものかを、見極めることから始めたいと思います。そうしないと、たとえば体を柔らかくしすぎてしまうと、フットサルの動きとあわなくなり、怪我をしてしまうこともあるんです」と語る。

そして「普段の動きで一番使っているところ、気になるところはどこですか?」と、選手達にたずねる。

「股関節とお尻周りです」(滝田選手)
「股関節が固くて可動域が狭いので、疲労が溜まった時に痛みが出やすい」(原選手)
「無理な体勢からシュートを打つことが多いので、股関節を柔らかくしたい」(中村選手)
「股関節が固いのと、フットサルのキーパーは足でのセービングが多いので、足が素早く柔軟に動くようになりたい」(イゴール選手)

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選手達から「股関節の柔軟性」というキーワードが出てきた。そこで、ケン・ハラクマ氏は「まずはウォーミングアップとして、全身を温めて体をほぐしましょう」と一言。

「体全体にある60兆の細胞を刺激することで、細胞が目覚めます。そうすると、意識と身体がつながりやすくなるんです。選手のみなさんは、普段ゼロコンマ何秒というスピードの中で判断をして、プレーをしていますよね。練習や試合のときは、敏感に意識で体をコントロールしていると思いますが、日常生活ではそれほど意識はしていないと思います。そこで、まずは"呼吸"をすることで、どうやって意識して身体が動いているかを感じましょう」

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■鼻呼吸を練習すれば自分の意識を操作できる

まずは鼻呼吸からスタート。ケン・ハラクマ氏が4つ数え、それにあわせて選手達が鼻から息を吸い、鼻から吐いていく。鼻呼吸について、ケン・ハラクマ氏は「空気が脳に近い鼻の内側を通っていくので、意識を覚醒させやすくなります。意識が敏感になることで集中力が高まり、物事の全体を観察することができるようになります」と説明し、次のように続ける。

「呼吸でエネルギーをたくさん取り込むことで、交感神経が高まり、興奮気味になります。次に、吐くことで副交感神経が優位になり、気持ちが落ち着いていきます。これを交互に行うことで、心身のバランスが取れていきます」

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近年『マインドフルネス』という言葉を耳にするが、これには "集中"や"瞑想"など、様々なトピックがある。集中することでひとつのものに意識を向け、瞑想をすることで自分を含めた全体を俯瞰で眺める。内側と外側という、2つの視点から同時に見ることで、意識を覚醒させていくのだ。これはスポーツでいう『ゾーン(理想的な精神状態)』と呼ばれるものであり、精神が落ち着いて、周りの動きがスローに見えるといった心理状態につながっていく。

「鼻呼吸をたくさん練習することで、自分の意識を操作することができるようになります。フットサルの試合中に『ここは集中しなきゃ』というときと『コート全体を見なければ』というときに、使い分けができるようになると良いと思います」

鼻呼吸で意識を鋭敏にしたところで、普段、意識をせずに動かしている体の部位に注意を向けていく。いよいよ、実践のスタートだ。ここでケン・ハラクマ氏が選手達にアドバイスを送る。

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「可動域を大きくする、頭が床につくといったことは気にしないでください。大切なのは、意識が体にどう向き合っているかです。肩や膝やお尻、股関節など複数の場所を同時に意識する感覚を、私のガイドに沿って探ってみてください。意識が体に対してどう向き合っているか。それを感じ取ることが、一番大事なポイントです。『こんな感覚かな?』と感じることができれば、他の選手と違うプレーができるようになると思います」

次回の記事では、実際に体を動かす様子をレポートしたい。はたして、フットサルのトップレベル選手は、どのような反応を見せるのだろうか?

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