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本当に実戦で使える技術トレーニングとは?/ミゲル・ロドリゴのインテグラルトレーニング<実践編>

COACH UNITED ACADEMYでは、元フットサル日本代表監督のミゲル・ロドリゴ氏によるトレーニングセッションの動画を11月4日まで期間限定で配信している。(文:COACH UNITED編集部)

ミゲル氏のトレーニング動画を11月4日まで配信中!詳しくはこちら>>

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フットボールに必要な要素を統合的にトレーニング

ミゲル氏は日本フットサル界の父とも呼ばれるレジェンド。2012年、2014年AFCフットサル選手権で優勝し2連覇を達成。2012 FIFAフットサルワールドカップでは日本代表史上初のベスト16に導いた。

また、彼の功績はフットサル界だけにとどまらない。サッカーのS級ライセンス講習会で講師を務めるなど、日本のサッカー指導者にも大きな影響を残した。特に育成年代の指導者に対しては延べ3,000人に対して講習会を行うなど、彼のトレーニングの代名詞でもある「インテグラルトレーニング」の理論をサッカー界に広めた。

2015年には「トレーニングデザイン」をテーマにCOACH UNITED ACADEMYにも講師として登場しており、読者の方にも馴染みある指導者の一人だろう。

現在は、ベトナム代表監督として活躍するミゲル氏だが、今年8月に来日しセミナーやクリニックを行った。今回配信するのは、U-12向けに行った90分のトレーニングセッションだ。

「インテグラル(統合的)トレーニング」とは、技術、戦術、フィジカル、認知、判断、集中力、精神力といったフットボールに必要な様々な要素を統合的にトレーニングする手法のこと。

以前、COACH UNITED ACADEMYではインテグラルトレーニングの概要と、その構築方法についてミゲル氏に解説いただいたが、今回は、実際に子ども達をトレーニングする場合、どのような指導を行うのか実践していただいた。

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日本とスペインではiPhone3GとiPhoneXくらいの差がある

ミゲル氏は日本とスペインの育成年代の選手を比べた時、見ること、決断すること、プレーすること、それぞれのスピードにおいてiPhone3GとiPhoneXくらいの差があると話す。

以前、ミゲル氏を取材した際、その理由についてこのように話していた。

「あくまでも個人的な意見ですが、日本のジュニア年代の練習は技術トレーニングに特化したものが多い印象です。もちろん、すべての現場を見ているわけではありません。ただ、この部分においては改善の余地があると考えています。指導現場に足を運ぶと、とりわけボールテクニックの練習をよく見かけます。ドリブルやパス、シュートといった技術トレーニングを同じ時間、同じ動作で繰り返し行なっています。一生懸命に汗を流しながらボールを扱っている姿は清々しく、選手もコーチも保護者も"練習をやっている"と感じています。しかし、どこかフットボールとは違う風景に見えて仕方ありません。この違和感にお気づきでしょうか。
その理由はトレーニングの要素にあります。小さい頃はボールテクニック向上のために一人でやる練習も必要かもしれませんが、複数人が同時に同じ練習を行ない、対人の中でも十分にボールテクニックを習得することができます。むしろ、対人要素が加わることで"頭を使う"必要、つまり「判断」が生じるのです。
技術トレーニングをやるときは、必ず戦術的な要素をセットにしなければなりません。技術と戦術は切り離してはいけないのです」

小さい頃から常に技術と戦術が融合され、認知・判断といった様々な要素を含んだ統合的なトレーニングを積んできたスペイン人とそうでない日本人ではインテリジェンスやスピードの部分で大きな差が開いてしまうというわけだ。

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ジュニア年代の成長に重要な「モチベーション」

さらにミゲル氏は、ジュニア年代の指導における「モチベーション」の重要性を説く。子どもにとってモチベーションにつながるのは「楽しむこと」だ。そして、子どもにとって楽しいことは「遊び」。ミゲル氏のトレーニングには遊びの要素が多く取り入れられている。

「ジュニア年代の成長にとって最も大切なのはモチベーションです。その要素は『参加時間』と『ボールに触る回数』ですが、スモールサイズのコートで行なうことでそれらの状況が満たされます。そこにいろいろなルールや形を設けることでたくさんのバリエーションが生まれ、様々なスキルを習得できるのです」

遊びを取り入れるというと大人には難しく感じるかもしれないが、指導者が子どもの頃に何が楽しかったか、好きだった遊びを思い出せばよいとミゲル氏は説明する。

「遊びは視覚や、身体の向きの要素もトレーニングできます。ただし、遊びなのだけどサッカーの実戦と切り離さないことが大事。実戦でおこりうる状況、スピードの中で行わなければなりません。そのためにはリスクやプレッシャーなどの緊張感も重要です。
日本では楽しんでトレーニングすると上手くならないと思われているかもしれませんが、私は違うと考えています。子どもはモチベーションが高まった方がコーチのアドバイスは耳に入るものです。子どもは遊んでいるけど、コーチはトレーニングしている。それが私の理想です」

状況やルール設定のアレンジで様々なトレーニングを体験させ、「もっと練習したい!」「サッカーっておもしろい!」という気持ちを感じさせることがスキル習得のスピードをアップさせるコツだという。その意味で、子どもにとって最高の喜びは「ゴール」である。ミゲル氏は練習ですべての子どもがゴールを体験できるように、トレーニングを工夫しているそうだ。

では、実際にミゲル氏はどのように子ども達を指導しているのだろう? その様子はぜひ、COACH UNITED ACADEMYの動画で確認していただきたい。

今回映像で紹介するトレーニングは、ボールキープ、ドリブル、パス、シュートといった基本的な技術の習得がテーマ。そういった基本的な技術を戦術と切り離すことなく、さらに認知・判断の要素も伴った状況でどのようにトレーニングしているのか、参考にしてみてほしい。

ミゲル氏のトレーニング動画を11月4日まで配信中!詳しくはこちら>>


【過去の配信記事】
■ミゲル・ロドリゴのインテグラルトレーニング入門

サッカーのトレーニングを見直す7つの原理原則
トレーニングデザインに重要な3つのフェーズ
認知・判断を伴った1日のトレーニングの作り方
フットサルがサッカーに役立つ理由は「6倍の差」にある


ミゲル・ロドリゴ(Miguel Rodrigo)
1970年生まれ。スペイン・ヴァレンシア出身。1986年スペインのフットサルチームで選手デビューし、1992年よりスペイン・イタリア・ロシアなどのクラブチームの監督を歴任。2009年~2015年までフットサル日本代表監督を務め、2012年FIFAフットサルワールドカップで日本代表史上初のベスト16に導く。その後はタイで監督を務め、2017年よりフットサルベトナム代表監督。NHK「奇跡のレッスン~世界の最強コーチと子どもたち~」出演や「子どもがみるみる変わる ミゲル流 人生を切り開く「自信」のつけ方」など著書多数。