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U-10は集団で動きたくなる年代。トレーニングのポイントは「味方と協力する3人の関係性」を理解させること

『サッカー指導者のためのオンラインセミナー「COACH UNITED ACADEMY」』は、悩めるボランティアコーチに向けた新企画をスタートさせた。それが育成年代のスペシャリスト、池上正氏による「指導ビギナーに向けた動画配信」だ。指導についての知識が少なく、指導を学んだ経験のないコーチに対して、池上氏が指導のポイントやトレーニングメニューなどを、講義動画トレーニング動画で解説していく企画である。

今回の記事では「U-10年代の選手を指導する際のポイント」をテーマに、動画で説明されている内容の一部をお見せしたい。(文・鈴木智之)

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小学3~4年生はグループでのトレーニングを中心に取り入れていく

池上氏の動画U-8に対する指導から始まり、今回はU-10に向けた指導の解説となる。U-10は小学3~4年生のカテゴリーに該当する。池上氏は言う。

「小学3~4年生になると、学校でも個人という枠からステップアップし、グループとしての活動が始まります。特徴としては『ギャングエイジ』と呼ばれることからもわかるとおり、小さな集団で動きたくなる時期です。そのような特徴を利用して、トレーニング中には『好きな子と同じグループを組んでもいいよ』と言いながら、『チームとしてどういう風にプレーしたらいいか』を伝えていきます。

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前回の記事でもお伝えしたが、サッカーの入り口である小学1~2年生のときは、「サッカーは個人スポーツではなく、チームスポーツであること」を理解させることが大切だ。サッカーをするときは、周りに仲間がいることを伝え、3~4年生になると、「どうやって仲間と協力してプレーすればいいか?」を考えられるように導いていく。

「2人の関係性でプレーしていた1~2年生から、3~4年生になると3人の関係性になり、プレーの幅も広がっていきます。ボールに関わる人数が増える中で、チームとしてどのようにプレーするかを考え、判断するようなトレーニングにしていきます」

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技術面のトレーニングでも、ひとり1個ボールを持ち、個人でボールスキルを鍛えるというよりは、対人プレーやゲーム形式のトレーニングを通じて「実戦の中で、技術を身につけていく」ことが重要になる。

「この年代になると、走るスピードが上がり、蹴る力もついてきます。1~2年生の時よりもコートが少し広くなって、しっかりとボールを蹴ることや飛んできたボールを止めることが大切になります。それを試合(ゲーム形式)の中で繰り返し、トレーニングしていきます。技術練習を切り取ってトレーニングするよりは『試合の中で正確にやってみよう』という言い方をするのがいいと思います」

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試合形式にすると、勝ち負けが出てくる。子どもは誰しも勝ちたいもの。真剣に取り組む中で、技術や考える力が身についていく。

「トレーニングに常に勝ち負けがあると、負けても次があります。それがわかれば、負けたとしても『次、頑張ろう』『勝つためにどうしよう』『負けたけどもう1回やらせてよ』という気持ちになります。ぜひ、そうなるように接してあげてください」

視野を広げるために大切なのが「3人の関係性を理解すること」

U-10年代の指導のポイントは「3人の関係性をどう理解させるか」だ。3人いるとボール保持者を中央に、右、左とポジションをとることができる。いわゆる「トライアングル」と呼ばれるポジショニングだ。

「3対1だと、簡単に相手をかわすことができます。3人でプレーすることで、子どもたちの視野も広がっていきます。なおかつ真ん中にポジションをとると、右と左を常に意識をしながらプレーすることになります。そうして、ポジションを入れ替えながらトレーニングすることで、みんなの視野が広がることにつながります」

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池上氏が繰り返し説くのが「常に判断が伴うトレーニングをすること」だ。試合中はすべての選手が自分で判断し、プレーできるようになることが望ましい。そのためには、トレーニングの中に、選手自身で判断する要素を入れること。その観点からも、3人の関係性でプレーすることは、U-10における判断のスタート地点として、理解させやすい設定になっている。

「U-10は味方とどう協力してプレーするかを、子ども自身で理解しながらトレーニングを進めていく年代です。そのことを忘れずに、トレーニングを進めていただけたらと思います」

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トレーニング実践の動画は「3人の関係性をベースに、味方とどう関わるか?」というテーマで取り組んでいく。池上氏は「3人でうまくプレーすることが、8人制にもつながる」と説明する。

トレーニング実践は下記のテーマで、10分程度の動画が公開される。

・トレーニングの全体像の解説とゲームの実践「3対3(4ゴールゲーム)」
・ダイレクトプレーに慣れる「シザースパス」
・全体を見る重要性を理解する「4対1(ボール×2)」
・数的優位を作り出すことを理解する「2対2+2フリーマン」
・相手との駆け引きを理解する「2対1(マンマークからスタート)」
・幅を広く使うことを理解する「3対2(ラインゴール)」
・実践形式でこれまでの練習の成果を確認する「3対3(4ゴールゲーム)」

動画前半で理論を理解した上で、このとおりにトレーニングをすれば、非常に良いオーガナイズになるだろう。動画には池上氏のコーチングも収録されているので、声掛けの内容などもぜひ参考にしてほしい。池上氏は言う。

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「1~2年生の2年間かけて考えたことを、3~4年生でできるように、ゆっくりと急がず、指導することを心がけましょう。『4年生なのに、こんなこともできない』などと心配しなくても大丈夫です。ゆっくりと、忘れ物がないように育つ方が絶対にいいのです」

この「U-10年代の選手を指導する際のポイント」と指導実演の動画は1月28日(木)からCOACH UNITED ACADEMYで配信予定だ。

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【講師】池上正/

大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。 12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。