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子どもを楽しませる具体的な練習メニュー/U-8におけるサッカーを始めたばかりの子を指導する際のポイント

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、この春から小学校低学年の指導を始める、経験の浅いコーチに向けて「7、8歳向けの指導コンテンツ」を公開予定だ。

講師は、香川真司選手を輩出した、宮城県の名門『FCみやぎバルセロナ』で指導を続ける石垣博さん。ジュニア年代の指導経験が豊富な石垣氏による、「サッカーを始めたばかりの子を指導する際のポイント」。後編では具体的な練習メニューを紹介したい。(文・鈴木智之)

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(石垣氏の取材はオンラインで実施。)

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「鬼ごっこ」はコーディネーションのトレーニングに最適

サッカーを始めたばかりの7、8歳向けトレーニング。全体の構成は60~70分程度。1つのトレーニングは10分前後で設定されている。

トレーニング全体を通じてポイントになるのが「活動時間を確保すること」。7、8歳は運動の初期段階なので、なるべくボールに触ったり、動いたりといった、プレー時間を確保することを大切にしたい。

その上で、楽しみながら動き回る環境を作り、良くできたプレーには褒めてあげること。このあたりは前編の記事で詳しく紹介しているので、参考にしていただければと思う。

最初のメニューは「じゃんけん鬼ごっこ(二人一組)」。石垣氏は鬼ごっこの有効性について、次のように説明する。

「鬼ごっこはコーディネーションのトレーニングに最適です。サッカーに必要な『判断』をするためには、相手の動きを観ることや、あらかじめ周囲を観ておくことが大切です。鬼ごっこにはその要素が入っていますし、相手に近寄ったり、離れたりと、駆け引きの要素も含まれています」

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遊びの要素を入れることで、子どもたちは楽しんで体を動かすことができる。鬼ごっこにはダッシュや方向転換など、サッカーの動きに必要なものが含まれているので、ウォーミングアップとしてはうってつけだ。

「スタート時のバリエーション(立ったまま、座って、寝た状態)を増やすことで、飽きずに取り組むことができると思います。秒数を決めてじゃんけんし、『5秒以内に終わり』などのルールにすると、反応スピードや走るスピードも一気に変わります」

発展系としては、「しっぽ取り鬼ごっこ」がある。各自、腰にビブスをつけて、それを取ったら1点というルールだ。

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「しっぽ取り鬼ごっこは腰にビブスをつけているので、直線的な動きだけでなく、相手の背後に回り込むなど、様々なステップが必要になります。しっぽを取られたら終わりだと活動量が少なくなってしまうので、時間内にどれだけ取れるかを競い合います」

"楽しめる"レクレーション要素の多いメニューを行うことも大切

次の「だるまさんが転んだ」からは、ボールを使って行う。コーチ世代の人であれば、子どもの頃に遊んだことのあるメニューだろう。コーチの合図で子どもたちがドリブルでスタートし、「足の裏」「ひざ」「お尻」「頭」などの声に合わせて、言われた部位でボールを止めて静止する。

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「だるまさんが転んだは、コーチの動きを見ること、指示を聞くこと、指示通りに体を動かすことの3つの要素が含まれています。洞察力とボールフィーリングにアプローチすることが狙いです」

「探検脱出島」は、あらかじめコーチがマーカーを使ってグリッドを準備しておき、コーチの掛け声で島へ移動していく。

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「島の名前を『ドイツ』『スペイン』『ブラジル』など、子どもたちに決めさせると良いでしょう。コーチが島の名前を呼び『5人で移動』などと言うので、それに合わせて島へ移動します。最初はボールなしからスタートして、次にドリブルで移動したり、鬼を決めて、タッチされないようにするなど、飽きないようにルールを変えていきます」

この練習の途中に、子どもたちだけでミーティングをして「どうすれば、みんなで素早く移動できるか」などを話し合わせるのも良いという。

「話し合いの中で、リーダーシップをとる子が出てきたりと、個性が見えます。サッカーはチームスポーツなので、レクレーション要素の強いメニューを通じて、みんなで協力する部分にもアプローチしていきます」

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練習の一番最後に必ず「試合」を取り入れる

トレーニングの最後は実践形式で締めくくり。「3対3(大幅ゴール)」は横20メートル、縦15メートルほどのグリッドに、コーンを使って大きなゴールを作り、3対3を行う。

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「ゴールが広いので、シュートチャンスがたくさんありますし、ボールの配球をコーチからにしているので、全員にシュートチャンスを与えることができます。上手な子にはバウンドボールを出したり、サッカーに慣れていない子には足元にボールを入れてあげたりと、工夫しながら行います」

発展系として「3対3(5ゴール)」がある。コーンを複数置き、コーンの間を抜けたらゴールにすることで、コースを狙ってボールを蹴ることにフォーカスしていく。

「試合形式(ゲーム)の練習を取り入れることで、サッカーの原理原則にアプローチすることができます。なにより試合が一番楽しいので、必ず最後に取り入れましょう。ゴールが小さい、遠いとなると、シュートを打つチャンスが限られますし、決められる子も限定的です。サッカーの楽しさを知ってもらうためにも、シュートの場面がたくさん出る設定にすると良いと思います」

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コーチの立場としては、それぞれの練習の合間に、できたこと、できなかったことを、子どもたちに説明したくなるが、石垣氏は「それはとくに必要ないと思います」と言う。

「トレーニング直後に言葉で説明しても、子どもたちは理解して、整理できる状態ではないので、練習を振り返りたいのであれば、『手に出来たことはなに?』と聞くぐらいでいいと思います。もしフィードバックをしたいのであれば、次回の練習で同じメニューに取り組んで『前回はどうだったか覚えている?』といった質問を通じて、ポイントにアプローチしていけばいいと思います」

最後に石垣氏は、新たにコーチを始める人、指導経験の浅い人にメッセージをくれた。

「当たり前のことですが、誰しも最初はコーチ初心者です。コーチだからといって肩に力を入れるのではなく、子どもと一緒に、子どもの目線でサッカーを楽しみ、上達に導くスタンスがいいと思います。一緒にサッカーを楽しむ気持ちを忘れず、子どもたちに接してもらえたらと思います」

※石垣氏による7~8歳向けの指導実演の動画配信は、現時点で6月頃を予定しています。

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【講師】石垣博/

18歳から指導に携わりスポーツ少年団での監督、宮城県のU-12年代の地区トレセン・県トレセンなどでも監督を務める。ジュニアユース年代ではFC FRESCAでの監督経験を経て、2005年より現在のFCみやぎバルセロナの監督に就任し16年目を迎える(2011年からは女子チームも立ち上げる)。また、宮城県サッカー協会 指導部 サブチーフインストラクター(47FA C級D級インストラクター)も務めている。