TOP > コラム > 子供たちのパフォーマンスを引き出す為に必要な安心安全の場作りとコミュニケーションを活性化する練習法

子供たちのパフォーマンスを引き出す為に必要な安心安全の場作りとコミュニケーションを活性化する練習法

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、指導経験の浅いコーチに向けて「U-8年代の指導動画」を配信中だ。

今回、登場してもらったのは、蹴和サッカースクール代表の上田原剛コーチ。指導歴17年のベテラン指導者は、初めて指導するU-8の子どもたちに対し、どのようなトレーニングを通じて「ポジショニングとパス交換の基準」を指導するのだろうか?(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

uedahara.png

次回の記事を読む >>

トレーニングの雰囲気に影響する子供たちの不安や緊張を和らげる

上田原コーチは鹿島アントラーズのアカデミーで15年間指導をし、ブラジルでの指導経験を持つ指導者だ。まずは初対面の子どもたちに「ここは安心で安全な場所なんだ」と感じてもらうために、ミーティングからスタートした。

uedahara002.png

「みんなとは普段一緒に練習をしていないけど、ここに来てくれた子たち同士で仲良くなって、サッカーが少しでも上手になって帰ってくれたら嬉しいです」と話し、子どもたちの緊張を解いていく。

最初の自己紹介では「名前」「なんと呼ばれたいか」「どんな言葉をかけられたら嬉しいか」「将来の夢」について、発言をうながしていく。

その理由について「人によって嬉しい言葉は違います。コーチが良いと思っていても、本人にとっては嬉しくない場合があるので、事前に確認が必要です」と説明する。

また「将来の夢を言ってもらうことで、自分のことを知ってもらうことにつながります。他の選手と共通点があると、仲良くなるのが早くなります」とメリットを教えてくれた。

子どもたちには「自己紹介が上手だと、すぐに仲良くなることができる。これからみんなが、新しいチームやトレセン、代表に行ったときに、ちゃんと自己紹介ができると、チームにすぐ溶け込めるよ」と伝えていた。

子どもたちは名前や希望の呼ばれ方を伝えた後に、「どんな言葉をかけられたら嬉しいですか?」という質問に「どんまい」「ナイスシュート」「ナイスディフェンス」などと答え、将来の夢は「日本代表」「海外のチームで活躍したい」など、元気に発表していた。

uedahara003.png

自己紹介を終えたところで、上田原コーチは「今日の練習をどんな雰囲気でするか、みんなで決めよう」と提案。その狙いを、次のように明かす。

「トレーニングをどんな雰囲気でやりたいかを、子どもたちに決めてもらいます。自分たちで決めたことは責任が伴うので、それを守るようにうながします」

ここで子どもたちからは「仲良く、楽しく」「真剣にやるけど楽しく」「喧嘩せずにやろう」「ネガティブな発言をしない」などの回答が飛び出した。

uedahara004.png

そこで上田原コーチは「ネガティブな発言ってどんなの?」といったように質問をし、深堀りしていく。さらには「みんな、それでいい?」と問いかけることで、当事者意識を持たせるとともに「自分で決めたことを守る」ことをうながしていく。このあたりの進め方は、ベテランコーチならではである。

続いて「サッカーって、ミスの方が多いよね。ということは、ミスってそもそも悪いことなのかな?」と質問。そこで子どもたちが首を振るので「ミスは悪いことじゃないよね。だからミスを怖がる必要はないよ。良くないのは、ミスした後にボールを取り返しに行かないとか、誰かのせいにすること。ミスを恐れずに、どんどんチャレンジしてください」と話し、最初のトレーニングに移っていった。

頭の回転とグループのコミュニケーションを活性化させるトレーニング

uedahara008.png

まずは「戦術的要素の入った、スポーツ鬼ごっこ」からスタート。6対6の状態でグリッドを半分に分け、それぞれの陣地にコーンを1つ配置。相手チームのコーンを取ると1点となる。ただし、コーンに到達する前に相手陣内でタッチされると、一度コートの外に出て、四隅にある安全地帯に入らなければいけない。(安全地帯に入ると復活できる)。

uedahara005.png

上田原コーチは「チームで戦わないと勝てない鬼ごっこです。駆け引きやコミュニケーションが大事だよ」と話し、始まる前に作戦タイムを設定。どうやってコーンを取るか、話し合いの時間を作っていく。

スタートしてからは、コーチはスコアを管理。同時に「全体をよく見て」「声をかけあおう」「行くか行かないか判断しよう」などのアドバイスを送っていく。

uedahara006.png

さらには前半終了時点で作戦タイムを実施し、前半を踏まえて、後半どのようにプレーするかを考えさせていく。そこでコーチは口出しをせず、子どもたちからは「俺、真ん中」「俺は右から行く」などの意見が出ていた。

続いて、「相手にタッチする際は両手」というルールにチェンジ。上田原コーチは「そこまで寄せると、実際の試合で守備をするときに、相手からボールを取れるからです。その距離感をつかんでほしいので、両手タッチにしよう」と理由を説明。そうすることで、鬼ごっことサッカーの試合をリンクさせていった。

uedahara007.png

今回の動画はここまで。「スポーツ鬼ごっこ」には、認知、スプリント、方向転換、運動量、コミュニケーションなどの要素が豊富に含まれている。さらには競争形式なので、子どもたちの意欲も落ちない。秀逸な設定である。ぜひトライして、日々のトレーニングで活用してほしい。

次回の記事を読む >>

この内容を動画で詳しく見る

【講師】上田原剛/

15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。