11.08.2021
技術の発揮に大切な周りを観る力を身に付ける方法/自陣エリアでボールを失わないポゼッショントレーニング
Jクラブ、街クラブがひしめく熊本で存在感を放つのがブレイズ熊本だ。自陣エリアから丁寧にポゼッションを行い、ボールを保持するサッカーを標榜し、2017年には「全日本U-12サッカー選手権大会」にも出場を果たした。
そこで今回はU-12を率いる桑原太一コーチに「自陣エリアでボールを失わないポゼッショントレーニング」を紹介してもらった。前編は「ポゼッションに必要な基本技術とサポートの動きの習得」。ボール保持からの攻撃を目指すチームは、ぜひ参考にしてほしい。(文・鈴木智之)
パスコースが塞がれている時はぎりぎりまで相手を見て、判断を変える
トレーニング開始前、桑原太一コーチは「ブレイズ熊本では、ボールを失わないためにポゼッションを高めることを大切にトレーニングしています。前編ではポゼッションに必要な観る、止める、蹴る、サポートのトレーニングを行っていきます」と話し、実践に移っていった。
最初のトレーニングは「1対1対1」。グリッドの両端に選手をそれぞれ配置し、中央のライン上に守備役を1人配置。守備役はライン間を動くというルールなので、横の動きのみとなる。
攻撃役が対面の状態でパスをし、守備側にインターセプトされないようにパス交換していく。攻撃側のポイントは、ファーストタッチで体の斜め前にボールを置くこと。相手をギリギリまで見て、相手の動きの反対側にパスを通していく。
桑原コーチは「テンポをあげよう。ボールを止めてゆっくり蹴るのではなく、パスを受ける前の移動中に、守備側がどこにいるかを見て、ボールを止めてから素早く蹴るようにしよう」「相手の逆をとろう」「ぎりぎりまで相手を見て、判断を変えよう」と声をかけていく。
守備側に寄せられたらワンタッチ。ブレスが来なければコントロール
2つ目のトレーニングは「3対1」。正方形のグリッドの中央にコーンを置き、攻撃3人、守備1人でボールポゼッションを行う。攻撃側はパスを15本通すか、中央のコーンにボールを当てたら勝ちとなる。
守備側はコーンを守りながら、ボールを奪う意識を持つこと。攻撃側は三角形を作り、味方の選手がどこにいるかを把握する。1つ目のトレーニングと同じように、ファーストタッチで、どこにでもボールを蹴られるように置き所を工夫することがポイントだ。
守備側の目的はボールを奪うことなので、コーンを守りながらボールを奪いに行く。攻撃側は、パスラインを作ることが重要になる。三角形を作り、ボールの移動中に周囲を観て、次のプレーを判断していく。
桑原コーチは「パスがずれたときに、しっかりステップを踏んで移動しよう。守備側の位置、狙いを見て、逆をとる意識を持とう。守備側に寄せられたらワンタッチ。プレッシャーが来なければコントロールすること」と重点を伝えていた。
続いて、パスを15本から10本に変更。そうすることで守備の強度が増していく。攻撃側は、ボールが来る前に周囲を観ること、ファーストタッチのコントロールがより重要になる。
桑原コーチは攻撃側の選手に「ワンタッチでボールを返すこと」と「相手の逆をとること」の判断に言及し、「守備の強度が上がると、相手の逆をとりやすくなる」とアドバイスを送っていた。
周囲の様子を観ることが、良い状況判断をするために必要なこと
前編最後のトレーニングは「4対2」。グリッドの中央にコーンを2つ置いてゲートを作り、攻撃側はその間にパスを通すか、15本パスを繋げば勝ちとなる。
守備側は「2人のうち、1人が必ずボールを奪いに行くこと」を徹底。1人目がプレッシャーをかけることで、2人目の選手がどう動けばいいかが決まるので、役割を分担しながらボールを奪いに行く。
攻撃側は三角形を作り、味方をよく観ること。他のトレーニング同様、ファーストタッチでパスもゴールも狙えるところにボールを置くことがポイントになる。
桑原コーチは「ボールの移動中に周りを観よう」「ファーストタッチで、ゴールもパスを狙える位置に置こう」「守備は速く寄せることを意識しよう」など、シンクロしながら声をかけることで、プレー強度を高めていくとともに、ラスト2分間は「パス10本」にルールを変更。より難しい状況でトレーニングを行った。
練習後、桑原コーチは「周囲の様子を観ることが、良い状況判断をするために必要なことです。周りを観ることで、その状況に必要な技術の発揮につながっていきます」と話し、前編のトレーニングを締めくくった。
後編では、実戦をイメージした応用的なトレーニングに発展させていく。
撮影協力:「鯛生スポーツセンター」
【講師】桑原太一/
1981年4月5日生まれ。佐賀県鳥栖市出身。佐賀で指導者をスタートし、2012年よりブレイズ熊本で活動し、現在11年目を迎える。2017年にはチームの「全日本U-12サッカー大会選手権大会」出場に貢献した。
取材・文 鈴木智之