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「チビリンピック2021」優勝。オオタFCが拘った「選手の体温管理」と「3ピリオド制を考慮したメンバー選考」

2022年1月に行われた「チビリンピック2021 JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権決勝大会」。優勝を果たしたのが、オオタFC(岡山県)だ。

個の技術に優れた選手が中心となり、攻撃的なサッカーを展開。圧巻の強さを見せつけた。チームを率いたのが、COACH UNITED ACADEMYにも出演経験のある今井大悟コーチ。元Jリーガーの今井コーチに、岡山県の街クラブが日本一になった裏側を明かしてもらった。(取材・文:鈴木智之/写真:日刊スポーツ)

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選手のコンディションを整えるために意識したのが「体温管理」

今年度のチビリンピックは、年が明けた1月に行われた。オオタFCは12月末に行われた「全日本U-12サッカー選手権大会」にも出場しており、短期間で2度目の全国大会だった。今井コーチは言う。

「年末の全日本U-12サッカー選手権では、思っていたような結果が出せませんでした(注・グループリーグ敗退)。子どもたちはその悔しさ、経験を生かし、チビリンピックに高い集中力で臨んでくれました」

オオタFCは、試合前のウォーミングアップは子どもたちに任せ、コーチはあまり口出ししない。今井コーチは「遠くから見ていたのですが、ダッシュする姿が普段とは違い、気合が入っているのが伝わってきた」と振り返る。

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(オオタFCで指導する今井大悟コーチ)

チビリンピックの山場は、準々決勝だった。相手はレジスタFC。年末に行われた、全日本U-12選手権のチャンピオンである。オオタFCとは過去に何度か対戦しており、4年生時に関東で行われた大会では、レジスタに勝って優勝している。

「この学年はレジスタさんと比較されることが多くて...(苦笑)。過去の対戦では勝つこともあったので、子どもたちの中では、うちが劣っているという感覚はなかったと思います」

ライバルと目されている相手が、全日本U-12選手権で日本一になった。オオタFCの面々にとって期するものがあり、それがウォーミングアップでの気合につながっていた。

今井コーチは、全日本U-12選手権での反省を生かし、チビリンピックに臨んでいた。それが「試合に向けた準備」だ。全日本U-12選手権が行われた鹿児島は、粉雪が吹き荒れるほど寒く、「子どもたちの体が固まっちゃって、思うように動けなかった」という。

「全日本U-12で対戦した北関東のチームは、キックオフ直前までダウンベストを着て、寒さ対策をしていました。うちの子たちは寒さに震えていて、体が動かず、局面のバトルでも勝てない。後手に回って、あっという間に失点してしまいました」

チビリンピックも、気温の低い中で行われる試合だ。大会規模が大きくなると、ウォーミングアップ終了からキックオフまで、セレモニー等で時間がかかる。

今井コーチは「ウォーミングアップで温めた体を冷やさないようにするため、直前までベンチコートを着るなどして、体温管理に万全の注意を払った」と対策を明かす。

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全日本U-12で体感した「わずかな違いで、プレーが変わる」という反省を生かし、チビリンピックでは、最初からギアを上げてプレーすることができた。

「レジスタ戦は、試合の立ち上がりから、気持ちが前面に出ていました。技術的なところはずっとやってきたので、そこに対する自信はありました。試合の入り方さえ間違えなければ大丈夫だと思っていたら、結果がついてきてくれました」

オオタFCは開始直後にPKを獲得し、そこで得た1点を守り抜いて勝利。難敵を退けると、準決勝ではヴィッセル神戸U-12を1対0で撃破した。

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決勝戦ではジンガ三木SCに4対0と完勝。見事、初優勝を果たした。なかでも決勝戦は、個人の突破力、グループとして連動した攻撃が見事だった。

全選手が交代する3ピリオド制ルール。メンバーは個性重視で選出

チビリンピックは3ピリオド制で、「1ピリオドと2ピリオドで全選手が交代しなければいけない」というルールがある。そのため、チームによってはピリオドごとに戦力に差が出てしまうこともあり、指導者からすると悩みの種だった。

しかしオオタFCは、どのピリオドも力の差がなかった。3ピリオド制のメンバー選出について、今井コーチは次のように語る。

「各ピリオドのメンバーは個性重視で決めています。1ピリオド目は技術があって、ショートパスやスルーなど、攻撃のアイデアが合う子たち。2ピリオド目は身体能力が高かったりと、個性がはっきりしている子を起用しています」

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たしかにオオタFCの1、2ピリオドに出場した選手を見ると、異なる個性の持ち主が出場しており、それが戦い方に変化をもたらしていた。

たとえば2ピリオド目の得点場面、左サイドをドリブルで切り裂いた子はスピードがあり、ゴールを決めた子はフィジカルに特徴があった。

「僕の中では、2ピリオドの目の子たちに技術で劣るイメージはなくて、1ピリオド目の子たちとは違う個性、キャラクターの持ち主がピッチに立っているという感じです」

チビリンピック決勝戦の1ピリオド目では、攻撃面のコンビネーションが機能。選手が連動する形で先制点を決め、2ピリオド目は個の力を生かしてゴールを奪った。3ピリオド目にも追加点をあげ、4対0の圧勝。いわば"二刀流"の選手起用がもたらした勝利だった。

次回の記事では、今井コーチが考える選手育成、ジュニア年代で大切なことに迫っていく。

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【講師】今井大悟/
福山大学を卒業後、 佐川急便大阪SC、カターレ富山、ブラウブリッツ秋田でプレー。2015年からOBであるオオタFCのU-11、12年代のトップチームのコーチを務めている。