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大阪屈指の育成クラブが実践する「2対2」などの個を強化するトレーニングを少年団で実践するには?

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、Jクラブや街クラブの指導者が実演する、トレーニング動画を配信中だ。

動画の視聴者や読者から「トレーニングの内容が、自分のチームには難しく、どうやって、自分のチームに取り入れればいいの?」という悩みをいただいた。

そこで今回は、筑波大学大学院サッカーコーチング論研究室で研究活動をする傍ら、選手育成や普及活動を行う内藤清志氏に、COACH UNITED ACADEMYで配信している動画を、「どのようにアレンジすれば、自分が指導している年代やレベルのチームでも実施できるのか」をテーマに解説してもらった。

対象となる動画は、大阪の強豪クラブ「SSクリエイト」が実践するドリブルとシュートのトレーニングだ。SSクリエイトは髙木彰人(ザスパクサツ群馬)を始め、ガンバ大阪の川崎修平(ガンバ大阪→ポルティモネンセ)、塚元大(ガンバ大阪→ツエーゲン金沢)、横浜F・マリノスの樺山諒乃介など、個性的なアタッカーを多く輩出するクラブだ。

彼らが実践したトレーニングを、どのようにして設定を変え、選手のレベルに合わせていけばいいのだろうか?(文・鈴木智之)

SSクリエイトのトレーニングの詳細はこちら

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2対2の突破がうまくいかないときはグリッド内に「目印(レーン)」を作る

SSクリエイトが実施する「2対2」のトレーニング。

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設定としては、グリッドの各コーナーから攻撃2人、守備2人が出てきて、2対2の攻防を行う。ドリブルで突破し、相手のコーナーにボールを運べば勝ちというルールだ。

【内藤さんの提案】
2対2の突破がうまくいかないときによく見られるのが、ボールを持って仕掛ける選手が、意図もなく相手が2人いる方へとドリブルをしてしまうことです。ほかには、サポートをする選手が味方の近くに寄りすぎてしまい、パスはつながるけど、突破を見すえた効果的なパスになっていないケースがあります。

どちらもプレー中の認知に課題があると考えます。具体的には、体の向きなどが悪く、認知のための情報収集ができていないのか。あるいは、視野内に入ってはいるのですが、そもそも何を見たらよいのかがわからない場合があります。

つまり、指導者の中では当たり前の「基準」が、子どもたちにはわかっていないのです。それなのに、「今のはパスの方が良い」「今のは右に動いた方が良い」と言われても「なぜ?」となってしまいます。

解決策として、グリッド内にレーンを作ってみてはいかがでしょうか。グリッドの中央に線を引いて、右と左に分けます。そうすると、選手は「自分は右にいる」「相手は左にいる」など、視覚的に認知しやすくなります。

たとえば、守備の選手が2人とも左のレーンにいたときに、攻撃の選手に対して「2人とも同じレーンにいた方がいい?」「相手が左に寄っているのだから、1人は右のレーンに入った方がいいんじゃない?」など、わかりやすく伝えることができます。うまくいかない理由を視覚的に理解させるために、グリッドを分けるのは有効ではないでしょうか。

もう1つレベルを上げたいときは、レーンを3つに区切るのもいいと思います。攻撃の選手には「守備の選手が1と2のレーンにいるのだから、自分は3にいた方がいいよね」「守備が1を守っているのなら、1のレーンに行くふりをして、最後のところでスピードを上げて、2のレーンに行けば、ドリブルで抜けたかもしれないよ」といったアドバイスをして、認知や判断にアプローチしていきます。

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レーンを3つにすると、必ずどこか1つが空いています。そこにドリブルで進入するのか、ボール持ってない選手がそのレーンに走り込んで、スルーパスを受けるのかなど、プレーの説明がしやすく、選手にとってもわかりやすいと思います。

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シュートが入らない時はGKが左右のどちらかに動く設定を入れてみる

2つ目は「1対1のシュート」。

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ゴールキーパーと1対1の場面を想定し、ボールに対して半身の体勢を作ることで、ゴールに対して角度をつけ、インフロントキックでシュートを打つことをトレーニングしていく。

【内藤さんの提案】
このトレーニングは「ゴールキーパーの動きを見て、シュートを蹴り分けるのが難しい」「ボールコントロールから、半身の姿勢を作るところがうまくいかない」などの、難しいポイントがあるかと思います。PKの際にもありますが、ボールに対して回り込むような助走を取ることで、GKの判断を惑わす要素があると考えられます。

このトレーニングの難易度を下げるとすると、シュートを打つ直前(キッカーがワンタッチコントロールをした瞬間)に、ゴールキーパーが必ず左右のどちらかに動くという設定にしてみてはいかがでしょうか。

ボールに対して回り込んで蹴るためには、身体の軸の強さやフォームの安定性が求められます。それに加えて、キーパーの動きを見て瞬時に蹴り分けることは、レベルの高い要求です。そのため、キーパーに少しだけ先に動いてもらい、空いている方に流し込むようなイメージでシュートを打ちます。

大切なのは、ゴールキーパーが左右どちらに動いてもいいように、どこにでも蹴ることができる位置にボールをコントロールし、相手の動きを見て、ボールに対して半身の姿勢を作り、角度をつけた動きでシュートに持ち込むことです。

そして、ゴールを決めるためには、ゴールの右上、右下、左上、左下の4つのコースに蹴り分けることがポイントです。とはいえ、最初のうちは蹴り分けるのは難しいと思うので、ゴールキーパーが左右に動いてコースを空けたのを見て、シュートを打つのがいいと思います。

発展としては、左右にコーンゴールを設置し、キッカーが蹴る直前にDF役がどちらかのコーンへ動き、空いているゴールへ狙って蹴る形が考えられます。

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遊びの要素も含まれるので、子どもたちが楽しみながらトレーニングすることができます。こちらも合わせてチャレンジしてみてください。

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【講師】内藤清志/
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。