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自分とボールの関係に加えて仲間を意識!初心者から取り組める状況判断を伴うパス&コントロールの練習法

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前回より、香川真司選手などを輩出した、宮城県の強豪クラブ『FCみやぎバルセロナ』の石垣博氏による「出来る楽しさを伝える。初心者を指導するための基礎トレーニング」を公開している。

サッカー経験の乏しい子どもたちを、どのようなトレーニング、コーチングで向上させていけばいいのだろう? サッカーの楽しさと、技術、判断力にアプローチするトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)

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パス・コントロール・ドリブルの基本的なボール扱いを磨く練習

石垣コーチによる「出来る楽しさを伝える。初心者を指導するための基礎トレーニング」。後編では「ドリブルスピードの調整とボールコントロール」「観て・聞いて、状況判断しプレーを選ぶ」をテーマに行っていく。

まずは動きながらのパスにフォーカスした「ドリブルパス」を実施。マーカーとコーンをひし形に配置した状態でスタートし、一つ先のコーンまでドリブルで進み、前方にいる選手にパスを出す。

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プレーとしては、ドリブルをした後にパスを出すというシンプルなもの。指導対象がサッカー経験の少ない子たちなので、簡単なプレーで感覚をつかませていく。

石垣コーチは「ドリブルのスピードが上がりすぎると難しくなる。スピードを工夫しよう」「ボールと一緒に進んでいこう」「マーカーの間にパスが行っているかな」などの声をかけ、良いプレーには「上手!」と大きな声で褒めていく。

次に「ドリブルもパスと同じように、自分のおへそを次の友達の方に向けてパスをしよう」とわかりやすく実演。子どもたちの様子を見ながら「仲間の方に体をきちんと向けよう」とアドバイスをしていた。

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最初は右回り、次に左回りで行った後、ルールを追加。「ドリブルでコーンに到達したら、左側のコーンをドリブルで一周回り、前に進んでパスを出す」と、ドリブルでの方向転換を加えていく。

そうすることで運ぶドリブルだけでなく、ボールを操作するコントロールにもアプローチしていった。

これはサッカー経験の少ない子にありがちな、ドリブルスピードを上げすぎたり、ボールに対して適切な力でタッチすることができず、コントロールが乱れてしまうなどの現象に対応するトレーニングだ。

ボールを止めてから考えるのは遅い!判断が必要なパス&コントロール

続いてのトレーニングは「パスorドリブル」。このトレーニングのテーマである「観て・聞いて、状況判断し、プレーを選ぶ」能力を高めるために、ボールコントロールに加えて、周囲の様子を観て、プレーを選ぶ要素を加えていく。

設定としては、選手をひし形に配置してスタート。最初は斜め前の選手にパスを出し、リターンパスを受けて、前方へパスを出す動きを繰り返す。ここでは、パスを出すためにボールをしっかりと止める動きと、長短のパスを重点的に実施。

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次に、斜め前の選手にパスを出し、リターンパスを受ける際に、「前方の選手が立っていればパス、座っていたらドリブルをしてからパスをする」という要素を追加。そうすることで「味方の状況を観て、プレー選ぶ」ことにアプローチしていく。

石垣コーチは「どこを観たらいいかな?」「いつ観たらいいかな?」「次の人は立ってる? 座っている?」など簡潔に声をかけ、プレーを導いていく。

さらに「次の仲間を観るのはいつ?」「ボールをもらう前に観ていたら、速く次のプレーに行けるよね。観ていないと、ボールを止めてから観ることになる。パスが戻ってくる間に観て、立っていたら速くドリブル。座っていたらパスをしよう」と、プレーを成功させるために必要な要素をかみくだいて説明していた。

トレーニングを通じて、石垣コーチは子どもたちのプレーとシンクロしながら、わかりやすく声をかけ、ポイントを意識させていた。また、声かけによって、サッカー経験の少ない子たちが、プレーに対する集中を欠かないように意識を向けていた。

このあたりの声かけのトーンやタイミングなども、ぜひ注目していただければと思う。

最後に石垣コーチは、次のように話し、トレーニングを締めくくった。

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「今回ご紹介させて頂いたメニューは、基礎技術の積み上げをテーマに実戦しました。ボールを止める、蹴るの基礎技術が足りないとボールが移動中に見ることが難しくなってしまいます。今回はTr①~④まで基礎技術の積み上げを意識ているので、④のTrが難しい場合は、①~③の習得から進めてみてください。」

サッカーを始めた子どもたちへの前向けな声掛けと雰囲気づくり、何が成功で失敗だったかを伝え、繰り返しトレーニングを行い、成長を見守る指導方法をぜひ参考にしていただければと思う。

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【講師】石垣博/
18歳から指導に携わりスポーツ少年団での監督、宮城県のU-12年代の地区トレセン・県トレセンなどでも監督を務める。ジュニアユース年代ではFC FRESCAでの監督経験を経て、2005年より現在のFCみやぎバルセロナの監督に就任し15年目を迎える(2011年からは女子チームも立ち上げる)。また、宮城県サッカー協会 指導部 サブチーフインストラクター(47FA C級D級インストラクター)も務めている。