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海外トップチームでも実践!日本人スポーツセラピストが教える"ケガを防ぐ"ストレッチ

イングランド・プレミアリーグのアーセナルで、2015年よりスポーツセラピストとして活動する山本孝浩さん。ヨーロッパを中心に20年以上活動し、イタリア代表やイングランド代表でも選手のサポートをするなど、世界トップレベルのチームから絶大な信頼を得ています。

現在は、冨安健洋選手も所属するアーセナルで選手のケアを担当する山本さんに、ケガ予防とチームで活用しているストレッチ専用器具「フレックスクッション」の活用法をうかがいました。ページ下部には山本さんお勧めのストレッチ動画も掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。(取材・文 鈴木智之)

※この記事はサカイク9月28日掲載分からの転載です

山本コーチも愛用する
フレックスクッションの秘密>>

イタリアを皮切りに、欧州で20年以上活動

アーセナルのトップチームで、スポーツセラピストとして活動する山本孝浩さん。欧州で働くきっかけは中田英寿さんだったそうです。

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ヨーロッパ各国で活動している山本孝浩さん

「当時、私はベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)でトレーナーをしていて、そこで中田選手と知り合いました。その後、彼はイタリアに渡ったのですが、ペルージャからローマへ移籍するタイミングで『こっちに来て一緒にやってほしい』と言われたのがきっかけです」

2000年に渡欧すると、中田さんが引退後も欧州にとどまり、フィオレンティーナ、ウェストハムやウェールズ代表、イタリア代表、イングランド代表などで活動した後、2015年よりアーセナルで手腕を発揮しています。

「気づけば、海外生活もだいぶ長くなりました」と穏やかな笑顔を見せる山本さん。イタリアで活動していた頃に『フレックスクッション』の存在を知り、選手のケアやトレーニングに活用していると言います。

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プロにも愛用者が多いフレックスクッション

「ACミランで活動されていた、メディカルトレーナーの遠藤友則さんの紹介で、フレックスクッションを使うようになりました。体が硬いとケガや疲労回復に影響があるのですが、そもそも体が硬い選手はストレッチをやりたがりません。そこで、なにかいい方法はないかと探していたときに、フレックスクッションに出会いました

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ストレッチが苦手で続かない選手も使いやすい

ヨーロッパのトッププロの中にも、前屈で指先が床につかない選手もいるそうで、山本さんは「股関節のストレッチをやろうとしても、可動域が狭く、足が大きく開かない選手もいます。そういう選手に無理やりストレッチをさせても、痛くて続かないんです」と話します。

そのような選手でもフレックスクッションを使うと、ストレッチがしやすくなることから、愛用しているそうです。

「僕がいいなと感じるのが、硬すぎず、柔らかすぎないこと。絶妙な硬さなので、使いやすいです。ストレッチだけでなく、選手の体をトリートメントするときに、ひざの裏側にフレックスクッションを挟んで、腹部をマッサージしたりと、役立つ場面は多いです。練習前のストレッチやトレーニング、練習後のトリートメントと、両方に活用できるのもいいですよね」

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股関節の基本的なストレッチ「ランジ」を実演する山本さん

プレーだけではなく疲労回復にも影響する"柔軟性"

サッカー選手において、股関節の可動域、柔軟性は必須です。その理由を、山本さんは次のように説明します。

「股関節は体の中心で、上半身と下半身をつなぐ場所です。選手を診ていて思うのは、ケガをしやすい人は、股関節が硬いことが多いです。サッカーは自分が予期しない方向へ、360度動くことの多いスポーツです。その繰り返しなので、股関節が硬いと色々なケガにつながるパターンが多いですね」

股関節の柔軟性はスピードにも影響するそうで「股関節が硬いと、ボールへの対応や、相手の動きに対する反応が遅れたり、ボールのトラップやキックするときの眼とボールの距離がずれたりしやすくミスにつながることもある」と言います。

股関節の硬さは、疲労回復にも影響があり「股関節周りの筋肉が慢性的に硬くなっていると、血液の流れも悪くなる可能性もある、血液に乗って運ばれる酸素や栄養素が入ってくるのが遅くなれば、その結果、筋肉の疲労回復が遅くなる」と説明します。

「シーズン開幕前のキャンプなど、オフシーズンで体が休んでいた状態からハードなトレーニングに入ると、疲労が溜まりやすくなります。股関節を含め、全身の柔軟性のある選手は疲労回復も早いですが、体が硬い選手はキャンプ中に疲労が蓄積されていき、ケアをしても追いつかないことがあります。最終的に、グロインペインのような筋や腱のオーバーロードによる痛みなどが起こる選手が多いと感じます」

これまで山本さんが診てきた、ヨーロッパのトップレベルの選手の中にも、股関節やハムストリング(太もも裏の筋肉)の腱を使いすぎて硬くなり、可動域に影響が出ている選手もいるそうです。それも18歳など、若い選手にもいるのだから驚きです。

「そうなってから治すのは大変なので、子どもの頃からストレッチなどセルフケアを習慣にすることは、すごく意味のあることだと思います」

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ケガ予防のためのおすすめなストレッチ

サッカー選手によく起こるのが、ハムストリングのケガです。そこに怪我や痛みが起きた場合、山本さんは「トリートメントをする時に、怪我が起きた状況、怪我をした部位に関係する他の筋などに問題、原因は無いか探します」と話し、次のように続けます。

「例えば、拮抗筋と呼ばれる反対側の筋肉に目を向けます。ハムストリングであれば、反対側の太ももの前にある四頭筋です。そこがしっかり動いていないと、反対側のハムストリングに影響が出ることがあるので、マッサージやストレッチをしてバランスを戻してあげることなどをします」

その際に活用できるのが、フレックスクッションです。様々な使い方により、股関節や太ももの前にある四頭筋、ハムストリング、お尻の筋肉や体の側面、上半身など、すべての部位をストレッチさせることができます。

山本さんは「ランジの体勢で、後方の脚の下にフレックスクッションを置きます。そうすると、反対の股関節が伸びますし、後方の足首を持って上に引っ張ると、四頭筋のストレッチができます」と実演してくれました。

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ランジの体勢から足をもって四頭筋を伸ばす
(画像はフレックスクッション付属のトレーニング動画より)

「僕はフレックスクッションのアーチ型のもの(バレル)も使っていますが、これは体の横、側部をストレッチするときにすごくいいんです。体を横にしてフレックスクッションに乗せ、手を挙げて伸ばすと、体の側部が伸びます。また、足を伸ばして下げていくと、お尻の横、いわゆる中殿筋と太ももの外側の大腿筋膜張筋などが伸びます。そこの柔軟性が悪いと片足立ちのバランスが悪くなったり、股関節の内旋の動きが硬くなったりするので、ストレッチなどでほぐすことは大切だと思います」

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体の側面を伸ばすストレッチ

アイデア次第でいろんな使い方できるフレックスクッション

山本さんはほかにも「フレックスクッションの斜めになっている部分に足をかけて、片足で立つと、バランストレーニングができますよね。工夫次第で、使い方はたくさんあると思います」と活用法を教えてくれました。

サッカーを頑張る子どもたちだけでなく、日頃の姿勢や運動不足が気になる保護者の力にもなってくれるフレックスクッション。ケガ予防に加えて、健康な生活を送るためにも、日常に取り入れてみてはいかがでしょうか?

次回の記事では、サッカーをする子どもたちに向けた、ストレッチや柔軟性アップなど、ケガ予防のアドバイスをお届けします。

やってみよう!山本さんお勧めのストレッチ

■足首のストレッチ(ねんざ予防・リハビリ)

■股関節(内旋・外旋)と体の側面のストレッチ

山本コーチが使っている
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