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ヴィッセル神戸のスクールが実演!数的優位を活かし前にボールを運ぶ為のポジショニングとコンビネーション

COACH UNITED ACADEMYでは、指導経験の浅い指導者に向けた、ベーシックなトレーニング動画も配信している。今回、登場してもらったのが、ヴィッセル神戸サッカースクールでチーフスクールコーチを務める金正旭氏だ。

トレーニングのテーマは「攻撃における数的優位を作り出すポジショニング(サポート)」。同スクールのスーパークラスでは、個の強みや特徴、可能性を最大限引き上げることを目的とし、また主導権を握ったボール保持から、連動して攻め込むスタイルに取り組んでいる。

動画後編では「中盤での数的優位の活かし方」「ゴール前の局面で数的優位を活かす」をテーマに、どのようにしてボールを保持し、相手を崩すかにフォーカスしたトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)

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中盤で数的優位を形成し相手を崩すトレーニング

最初のトレーニング、テーマは「中盤での数的優位の活かし方」。設定としては、グリッドを3分割し、2対1、3対3、2対1に分かれた状態で「7対5」を実施する。

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3つに分かれたグリッドは、ディフェンシブサード→ミドルサード→アタッキングサードという設定で、前進(ビルドアップ)しながら、中盤で数的優位を作り、攻撃を組み立てるトレーニングだ。金コーチは言う。

「ドリブルでディフェンシブサードからミドルサードに侵入し、数的優位を形成した上でアタッキングサードにボールを運びます。誰がどのタイミングでミドルサードに侵入するのかを考え、ボール保持者は、良い状況で前進することを目的とします。ボールを持っていない選手は、良いサポートをすることで、数的優位を活かしながら前進していくことが狙いです」

ルールとしては、1から2のゾーンへはドリブルで侵入。2から3のゾーンへはパスで侵入する。一番前のゾーンに到達したところで、攻撃方向を変え、反対のゾーンを目指す。守備側はボールを奪ったらパスを3本繋ぐか、コーチへパスをする。

金コーチはプレーを見ながら「どうすれば縦に侵入できる?」と問いかける。

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「ゾーン1の2対1で前進できないとゴールに近づけないので、誰がどのタイミングで前のゾーンに入るかを考えよう。自分が侵入した方がいいのか。それともフリーの味方にパスをつけて、そこから侵入した方がいいのか」

また、サイドの位置から角度をつけて中に侵入することで、プレーの選択肢を増やすといったことを実演。

「いつ、誰が侵入するか、ドリブルをしながら判断しよう」「ボールを持っている選手は、フリーの選手をいつ使うかを判断しよう」「どの角度で入るかを考えよう」といった金コーチのアドバイスにより、良いプレーが出始める。選手たちの理解力と技術の高さも注目だ。

数的優位の状況下で3つの選択肢を持ちアタッキングサードへ侵入

続いてのテーマは「ゴール前の局面で数的優位を活かす」。トレーニングは「セパレートゲーム(4対4+GK)」。グリッドをミドルサードとアタッキングサードに分け、前方へタイミングよく侵入し、局面で数的優位、数的同数を作り出すことで、シュートに持ち込むことを狙いとする。

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設定としては、グリッドをミドルサードとアタッキングサードに分け、ミドルサードに攻撃3人、守備2人。アタッキングサードには攻撃1人、守備2人を配置。

アタッキングサードの選手にボールが入ったら、ミドルサードの選手から1人だけ、アタッキングサードに侵入する。(アタッキングサードとミドルサードの選手はプレー中に入れ替わってOK)。

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守備はボールを奪ったらコーチにパスか、縦のライン(コーチの横ライン)をドリブルで越える。その場合、セパレートの設定は無くなり、GKも加わってオープンな4対4+GKになる。

攻撃はドリブルかパス、スルーパスの選択肢がある中で、どのプレーが最適かを判断することがポイントだ。

金コーチは「奥のDFの状況を見ずに、何となく縦に入ってしまうと良い攻撃をするのが難しい。入り方はパス、ドリブル以外にスルーパスもある。3対2の状況で、誰がどのタイミングで前に入るかが大事だよ」と状況を認知して、プレーを判断することをうながしていく。ここでは、具体的な動きを提示しているので、ぜひ動画で確認してほしい。


ほかにも「相手、スペース、味方を見て、ボールを持っている選手が判断する。声をかけてコミュニケーションをとってプレーする」となどの連携面にも言及。

「前向きのパワーを持っている選手が(アタッキングサードに)入る」などの声かけもわかりやすく、選手たちの高い技術、判断、タイミングの合ったプレーなども収録されているので、どのようにプレーすればいいのかも参考にしてほしい。

金コーチはトレーニング後、「年代が上がるに連れて、より組織的な守備が形成されていきます。それを打開するためには、個の能力があるのは大前提で、その上で、局面で数的優位を作り出し、チーム全体で協力しながらプレーの選択肢を増やすことが重要です」と、アドバイスをくれた。

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今回紹介した動画は、グリッドの広さを変更することで、相手のプレッシャーがかかるまでの時間や周囲を見る時間、判断する時間を増やすことができる。

子どもたちの技術レベルが高くなくても取り組むことが可能なので、ぜひトライして、成長に役立てていただければと思う。

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【講師】金正旭/
セレッソ大阪ユースから神戸朝鮮高級学校、朝鮮大学校サッカー部を卒業後、ガイナーレ鳥取、ジェフユナイテッド市原・千葉リザーブズ、HOYO Atletico ELAN大分(現ヴェルスパ大分)でプレー。現役引退後、サラリーマンを経て2013年よりヴィッセル神戸のサッカースクールにて指導を始め、現在ではヴィッセル神戸サッカースクール・チーフスクールコーチを務める。
同時に(公財)西宮スポーツセンター主催のイベント講師やアスレチック・リエゾン・西宮主催のイベント講師としても活動。AFC公認A級コーチ、JFA公認B級コーチ、JFA公認キッズリーダー。