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「体を動かすことを好きにさせるのが大切」/U-8におけるサッカーを始めたばかりの子を指導する際のポイント

この春から小学校低学年の指導を始めるコーチは、サッカーとの出会いであるこの年代に、どのようなアプローチをすればいいのだろうか?

日本代表でも長らく活躍した香川真司選手を輩出した、宮城県の名門『FCみやぎバルセロナ』の石垣博氏に、「サッカーを始めたばかりの子を指導する際のポイント」についてを話を伺った。(文・鈴木智之)

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ishigaki_pro.JPG(FCみやぎバルセロナの石垣博氏。)

子どものトレーニングに対するモチベーションを確認する

今回の記事は「理論編」と題し、サッカーを始めたばかりの子どもに対して、指導経験の浅いコーチはどのような心構えで接すればいいのか。具体的な方法を紹介していく。

石垣氏はまず「子どもたちが、どのようなモチベーションでグラウンドに来ているかに目を向けましょう」と語りかける。

「小学校に入ってサッカーを始めるきっかけは、いくつかあります。まずは子ども自身がサッカーを好きで始めるパターン。モチベーションが高いタイプです。次が、友達が入ってるからという理由で来るパターン。三つ目は、親御さんがサッカーを習わせたいケースです」

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サッカーにそれほど興味がない子に、最初から専門的なアプローチをしてしまうと、拒否反応を示すことがある。そうならないためにも、普段の何気ない会話の中から「その子はどのぐらいの熱量でサッカーと向き合っているか」を知っておくと良いという。

「子どもと会話をする中で、『なんでサッカーをやろうと思ったの?』『サッカー好きなの?』と聞くだけでも、色々なことがわかります。サッカーに対する熱量、運動に対する得意、不得意などがあるので、まずは子どもたちの熱量を探ってみてください」

7、8歳の練習では、サッカーという競技に固執しすぎないこと

子どもたちのモチベーションがわかれば、適したアプローチを探りやすい。その際に気をつけたいのが、「サッカーという競技に固執しすぎないこと」だ。

「7、8歳の年代で大切なのは、サッカーというスポーツを通じて、運動能力の向上や運動欲求に対してアプローチすることです。この年代はサッカーの専門的な動作というよりも、運動全般の能力向上をテーマに取り組む方が良いと思っています。サッカーというスポーツを通じて、体を動かすことが好きになってもらうことが、運動の入り口としては適切なのかなと思います」

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サッカーを始めたばかりの子どもたちには「グラウンドで身体を動かすのは楽しい」「ボールを追いかけるのって、楽しいんだ」と思ってもらうことができれば、それで十分。コーチが「サッカーのトレーニングをちゃんとしなければ」と構えるのではなく、「ボールを使って子どもたちと運動をして、楽しい時間を過ごそう」という観点でグラウンドに立つと、結果としてより良いサッカー環境を提供できるのではないだろうか。

「練習メニューにしても、言葉で丁寧に説明したとしても、7、8歳の子が理解するのは難しい面もあるので、簡単なデモンストレーションを見せて、まずはやらせてみるのが良いと思います。そして、やりながら説明すると、子どもたちも理解しやすいはずです」

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(COACH UNITED ACADEMYで配信中の石垣氏のトレーニング映像より。)

年齢の低い子どもは、わからない、単調、つまらないなどの要素で集中が切れやすい。指導者はそれを頭に入れておくことで、練習メニューを工夫することにつながるという。

「子どもが飽きずに没頭できる練習は、どのようなものか? そこに目を向けてみてください。遊びや競争の要素が入ると、子どもは夢中になって取り組みます。その観点でメニューを組み立てて、7、8歳の場合、1つのトレーニングは10分程度、1回の練習は60~70分が適切だと思います」

とくに年齢が低い場合、自分の意志でモチベーションを高く保ち、サッカーに向き合うのは難しい。その場合、「コーチも一緒になって取り組む」ことで、楽しみながら集中して取り組むことができるという。

「コーチが練習の中に入って、一緒にボールを追いかけることは、ぜひやってみてほしいです。試合形式の練習にしても、コーチが中に入って一緒にプレーすることで、上手な子には難しいパスを出したり、運動経験の少ない子にはコントロールしやすいパスを出したりと、調節することができます」

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(COACH UNITED ACADEMYで配信中の石垣氏のトレーニング映像より。)

サッカー経験のないコーチは、一緒にプレーすることに抵抗があるかもしれないが、対象が7、8歳の子であれば、それほど心配はいらないだろう。

「子ども大人もチャレンジ&エラーの精神で、まずは一緒にやってみるのがいいと思います。お父さんコーチは、子どもからすると『○○君のお父さん』という感じだと思うので、コーチという肩書きにとらわれず、子どもたちと一緒にボールを追いかけるスタンスが、最初は良いと思います」

コーチングはできるだけ短くし、体を動かす時間を多く確保する

サッカーと出会い、運動体験を積み重ね始める7、8歳において、なによりも大切なのが「活動時間の確保」である。コーチの話はなるべく短くし、少しでも長く、体を動かす時間を作ってあげるのが理想だ。

「将来的にサッカー選手として育っていくために、『うまくなる楽しさ』も与えてあげたいですね。そのためには、できたことを褒めてあげてください。我々指導者は、子どもたちができなかったことを見つけて、修正するという考え方があり、できたことはスルーし、できなかったことだけに目を向けがちです。小学生年代はできたことを褒めてあげて、それを見た他の子が『ああすれば褒められるのか。自分もやってみよう』という動機づけも大事だと思います」

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(石垣氏の取材はオンラインで実施。)

単純なことだが、誰しも褒められるとうれしいもの。サッカーを始めたばかりの子どもであれば、なおのことだろう。

「たとえば、リフティングが3回しかできなかった子が、10回できるようになったら、家に帰って『今日は楽しかった!』と言うと思うんです。その、『できるようになる楽しさ』を引き出すためにはコツが必要で、『ボールをこういう風に蹴ったらうまくいくよ』など、ポイントを教えるのは指導者の役目です。コーチは楽しい雰囲気づくりに加えて、技術的な事ができるようになる楽しさも与えられるようになってほしいと思います」

石垣氏による「指導の心構え」は、サッカーを始めたばかりの子どもと接する際に、大切なことが詰まっているので、ぜひ心のどこかに留めておいていただければと思う。

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【講師】石垣博/
18歳から指導に携わりスポーツ少年団での監督、宮城県のU-12年代の地区トレセン・県トレセンなどでも監督を務める。ジュニアユース年代ではFC FRESCAでの監督経験を経て、2005年より現在のFCみやぎバルセロナの監督に就任し16年目を迎える(2011年からは女子チームも立ち上げる)。また、宮城県サッカー協会 指導部 サブチーフインストラクター(47FA C級D級インストラクター)も務めている。