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ボールを失った後は自由な時間を与えない。相手の攻撃を前進させない攻⇒守のトランジショントレーニング

『JFA 全日本U-12サッカー選手権大会』に3年連続で出場するソレッソ熊本U-12。松岡大起(清水エスパルス→ グレミオ・ノヴォリゾンチーノ)、満田誠(サンフレッチェ広島)ら、多くのJリーガーを輩出するクラブだ。

ボール奪取から素早く攻撃に転じる「トランジション」を特徴とするソレッソ熊本U-12。COACH UNITED ACADEMYでは、長年チームを率いる三角将行監督による「守備から攻撃、攻撃から守備のトランジション」をテーマにしたトレーニングを公開中だ。

後編のテーマは「相手の攻撃を前進させないための即時回収」。相手に時間を与えず、素早くボールを奪い返し、攻撃へつなげる意識を高める、実戦形式のトレーニングをお届けしたい。(文・鈴木智之)

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素早くボールを奪い返せると相手の早い攻撃を防ぐことができる

トレーニングは「6対3」。12m四方のグリッド内に、バランスよく攻撃側の選手5人が立ち、グリッド中央に1人立つ。守備側は3人で守り、攻撃側はボールを保持しながら、対辺への突破を図る。

守備側がボールを奪ったら、ドリブルでグリッドの外へ出る。(3回外へ出たら攻守交代)。攻撃側はボールを奪われた後、グリッドの外ヘ出られないように、素早くボールを奪い返すためのアクションを起こすことがポイントだ。

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三角監督は「攻撃側はボールを奪われた後、守備への切り替えが上手く行かないと、スピーディな攻撃を受けることになる」と説明。試合中、攻撃時は前がかりになっていることが多いので、すぐに奪い返すことができないと、後方のスペースを狙われる恐れがあるので気をつけたい。

攻撃側には「対角線へのパスと中央にいる選手を意識しよう。全体像をとらえて、攻撃方向を明確にしよう」とアドバイスをし、プレーの優先順位を考えることの重要性を説いていく。

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「中が通らなければ、外の選手にパスをしよう。ボールを失わなければ、切り替えをする必要がない。失う回数を減らすことで、無駄な運動量を減らすことができるよ」

さらに、選手たちのプレーを見ながら、ボールの持ち方、置きどころを指摘。「パスコースがわかりやすくなると、相手の守備が早くなる」とデモンストレーションを交えて説明し、プレッシャー回避の仕方を教えていく。

さらに「予測が大事」と話し、「ボール保持者のプレッシャーの状況を見て、プレーが成功しそうか、ボールを失いそうかがわかる。失った後が予測できていれば、近くにいると奪い返せるかもしれない」と、常に状況を観ながら、予測し続けることを意識させていった。

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ほかにも、「体が向いている方向にボールを回していくと、どこかでプレッシャーを受ける」と、ボールを奪われやすい状況を説明。

そうならないために、中央のパスコースをうかがいながら、中の選手にボールをつける、もしくは逆サイドの選手へパスを通すことで、守備側の狙いを絞らせないようにするといった、駆け引きの大切さを伝えていった。

三角監督のアドバイスによって、攻撃側はボールが回り始める。このあたりの変化は、動画から感じ取ってほしい。

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味方がボールを奪われそうか、保持できそうかを予測しておく

2つ目のトレーニングは「3対2+3対2+1フリーマン(7対4)」。12m四方のグリッドを2つ並べ、それぞれのグリッドに攻撃3人、守備2人、中央にフリーマンが1人入る。攻撃側は3対2+フリーマンでボールを保持しながら、逆サイドのグリッドにボールを運ぶ。

フリーマンはターンをして、逆サイドにパスをすることができないので、フリーマンからのリターンパスを受けて、隣のグリッドへパスを通すことがポイントだ。

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守備側はボールを奪ったら、ドリブルでグリッドの外に出る。(3回外に出たら攻守交代)。攻撃側はグリッドの外に逃げられる前にボールを奪い返せば、攻撃を続けることができるというルールだ。

三角監督は「大事なのは予測。ボール保持者の状況、ディフェンスのプレッシャーの状況を見て、ボールを失いそうなのか、アンテナを張っておかないと速い切り替えはできないよ」とアドバイスをし、選手たちの中から、素早い切り替えが出始める。

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最後は「8対8」のゲーム形式で締めくくり。この日のトレーニングで実施した、ボールを奪うこと。そして奪ったボールをすぐに前線へ入れるため、顔を上げてプレーし、前方の情報を入手すること。パスの受け手はいち早くアクションを起こすことがポイントだ。

以上でトレーニングは終了。三角監督は次のように締めくくった。

「今回はサッカーにおける4つの局面のうち、攻撃から守備、守備から攻撃をトレーニングしました。4つの局面のシームレス化(効率をよくする)が浸透している中で、素早い判断や確実な決断を意識することが大切になります。普段から攻守を一体化させたトレーニングを行うと、確実に攻守の切り替えのスピードは上がります。ぜひ参考にしてみてください」

熊本のチャンピオンチームによる、攻守の切り替えのトレーニング。強度の高いプレーを実現する上で、非常に参考になるトレーニングだ。全容はぜひ動画で確認してほしい。

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【講師】三角将行/
1981年6月27日生まれ。筑波大学時代に少年サッカーの指導をスタート。卒業後は熊本県の高校で3年間教員を務め、2007年からソレッソ熊本のコーチに就任した。2020年からU-12の監督に就任し、3大会連続で全日本U-12サッカー選手権大会出場に貢献した。