09.04.2023
勝負どころで100%以上のパワーを出す方法とは?中学生から技術とフィジカルを同時に鍛えるトレーニング
現代サッカーに必要な「素早い攻守の切り替え」や「勝負どころで100%以上のパワーを出すプレー」を高めるために、どのようなトレーニングをすればいいのだろうか?
この疑問に答えてくれるのが、国分寺フットボールアカデミー監督で、ビーチサッカー日本代表のフィジカルコーチを務める鎌田豊氏だ。
テーマは「ジュニアユース年代で実践できる、ボールを使ったフィジカルトレーニング」。動画後編では「ボールを使ったスピードトレーニング」を行っていく。
スピードと技術、判断を同時に鍛えるトレーニングは、日々の活動の参考になること間違いなしだ。(文・鈴木智之)
1度プレーをしてから10倍程度の時間で休息を入れる
トレーニング前、鎌田氏は「ボールを使ったスピードトレーニング」を行う上でのポイントを「運動した時間(5~7秒)に対して、10倍程度の時間で休むこと」と解説する。
「トレーニングでは、一定の休み時間の中で、より速いスピードを発揮できるようにアプローチしていきます。また、フィジカル面に加えて、技術向上のポイントも意識してコーチングすることを心がけましょう」
鎌田氏のトレーニングの特徴は、「試合の状況を想定して取り組むこと」にある。今回、実施する「スピードトレーニング 1対1の攻防」は、攻撃側がシュートに持ち込むまでに、背後から追いかけられる/守備側は背後から追いかけるシチュエーションを想定している。
鎌田氏は守備側の選手に対して「少しぐらい遅れても、絶対に最後まで追いかけよう。そうすることで相手にプレッシャーをかけられるし、シュートミスをするかもしれない。走り込むことによって、GKから見たファーサイドのコースを消すこともできる」と声をかけていく。
「スピードトレーニング 1対1の攻防①」は、2人組を8組作って実施。ワンプレーを5、6秒とすると、一度プレーした選手に次の番が回ってくるのが、プレー時間の8から9倍、休憩した後となる。
そのときに、再度フルパワーを出すことがポイントで、鎌田氏は「最後のきついところで休むのではなく、頑張って走り切ろう。1対1のデュエルにこだわってやろう」と話し、トレーニングに入っていった。
設定としては、縦50m×横68mでゴールをつけて実施。攻撃側が守備側へパスをし、リターンパスをもらったら、左右どちらかのゲートをドリブルで通過してゴールを目指す。
守備側は、攻撃側がドリブル突破したのと反対側のコーンゲートを通過してから、シュートをブロックしに行く(攻撃側はペナルティエリアに入ってからシュートを打つ)。
ここでも前編同様、各選手の走るスピードによってグループ分けをし、同レベルの選手同士でトレーニングをさせていく。
攻撃側には「ゴール前で力尽きないこと。シュートのところでバランスを崩したら入らないよね。バランスを崩さないように、片足でしっかりと踏み込んでコースを狙おう」と、フィジカル面と技術面の指導を実施。
守備側には「最後の局面では、相手のシュートやドリブルに対応するために、細かいステップで対応すること」と話し、「ボールへの最短距離を走ろう。ふくらんで走ると時間がかかってしまう」とアドバイスしていた。
スピードのあるグループは、守備側がターンするときはマーカーの内側、攻撃側のドリブルはマーカーの外側を回るというルールにチェンジし、難易度を調節していた。
フィジカルだけを切り取らず、試合の状況を想定して取り組む
続く「スピードトレーニング 1対1の攻防②」は、設定は同じでスタート位置を変更。攻撃側がゴールに背を向けた状態でコーンゲートの間に立ち、守備側からボールを受け、ターンをして左右どちらかのコーンゲートをドリブルで通過し、ゴールを目指す。
守備側はコーンゲートを通過するときに、最短距離で進むための足の運び、コース取りを意識することがポイントだ。
その後、スピードのあるグループの場合は、守備側はマーカーの内側、攻撃側がターンをしてドリブルで通過するときは、マーカーの外側を回るというルールにチェンジ。
守備側の方が有利な状況なので、攻撃側はフェイントやスピードの緩急などで相手をかわすプレーも求められる。
最後の「スピードトレーニング 1対1の攻防③」では、2人が同じタイミングでスタートしてコーンへ進み、スタート位置に戻ってきたらコーチがボールを出し、ボールを受けた方が攻撃側になり、1対1がスタートする。
鎌田氏は「ステップは細かく」「粘り強く」などの声をかけ、コーチの配球はグラウンダーや浮き球など変化をつけていた。
以上でトレーニングは終了。鎌田氏は「この練習では、カウンターを意識させながらトレーニングをすることが大切です。チームの戦い方に応じて、トレーニングを変化させていきましょう」と話して締めくくった。
今回の動画は、スピードや強度、持久力といった、サッカーに必要なフィジカル要素に加えて、技術や認知、判断にもアプローチできるトレーニングになっている。
スピード持久力アップに適した年代である、ジュニアユース年代の指導者は、日々の活動の参考にしていただければと思う。
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【講師】鎌田豊/
1982年3月19日生。東京都出身。母校の中学校で指導者としてのキャリアをスタート。現在は、ワセダJFC と国分寺FAで監督兼代表を務め、日本初U-12専属フィジカルコーチとしても活動中。フィジカルコーチとして、RENOVA FC(山梨県)と立川高校サッカー部(東京都)、西南学院大学サッカー部(福岡県)でも指導を行っている。また、ビーチサッカー日本代表フィジカルコーチとしても活躍する。
取材・文 鈴木智之