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指導歴が浅くてもマネできるボールを保持して前進する練習法!前進に必要な考え方とプレー選択を学ぶ

サッカーの指導を学ぶことができる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-8~U-10年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。

U10年代では、せっかくボールを奪ったのに、その後の状況を認知できておらず、すぐに奪われてしまうことが多々ある。

そのため「顔を上げて周囲を見る」「味方の状況を確認する」といった、認知に働きかけることがポイントだ。

そこで前回より「ボールを持った時に、奪われない状況判断力を高めるトレーニング」をテーマに、クルブアトレティコ愛知の代表を務める、鈴木理一郎氏によるトレーニングを紹介中。

鈴木氏はクーバー・コーチングで長年指導した経験を持つほか、メキシコサッカー連盟アカデミー、FCバルセロナアカデミーキャンプでも活動。現在は自身のジュニアチームを指導しており、国内外で低学年の指導を熟知しているコーチだ。

経験豊富な鈴木氏による、技術とともに認知・判断を高めるトレーニング。後編では「攻撃の優先順位とプレー選択」「2対2でボールを保持して前進」をテーマに行った様子をお届けしたい。(文・鈴木智之)

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常にパスとドリブルが選べる状況を個人と仲間が作る

鈴木理一郎コーチによる「ボールを持った時に奪われない状況判断力を高めるトレーニング」。まずは「2対1+2フリーマン」から。

縦24m×横15mのグリッドで実施し、コーチからの配球でスタート。攻撃側は前後のフリーマンを使いながら、ラインをドリブル通過する。守備側はボールを奪ったら、攻撃側と同じようにラインゴールを目指す。

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鈴木コーチは「ゴール方向を意識してプレーすることが大事。前方にいるフリーマンにパスをし、リターンを受けてラインゴールを突破するのも良いプレーだよ」とアドバイス。

さらには「顔を上げて、パスがいいのかドリブルがいいのか判断しよう。どういうときにドリブルしたほうがいい?」と問いかけていく。

そこで「相手が前にいないときやスペースがあるときは、ドリブルができる」と話し、続いて「どういうときにパスしたほうがいい?」と付け加えていく。

「相手が来て、プレッシャーを受けている時はパスしたほうがいいよね。自分より前に、いい状態の人がいるときはパスをしよう」とわかりやすく説明していく。

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また、攻撃時に「ボールを取られないように工夫することも大切だよ」と声をかけ、相手とボールの間に体を入れて「ボールを守る」というプレーを紹介していた。

このトレーニングは守備側が1人、攻撃側が2人+フリーマンなので、守備側にとっては難しい状況だ。数的不利の中で、どのようにボールを奪うかがポイントになる。

鈴木コーチは「人数が少ないけどボールを奪いたい。どうすればいい?」と投げかけ、「ボールが転がっているときに、素早く寄せよう」とアドバイス。相手やボールの状況を認知し、いつアクションを起こすかという基準を提示していった。

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試合で活きるボールを保持しながら前進していくトレーニング

最後のトレーニングは「2対2+2フリーマン」。先程と設定は同じで、攻撃と守備が同数になる。

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攻撃側には「縦パスを入れる時が、スピードを上げるチャンス」と話し、まずは前方のフリーマンを観て、そこにパスを通すことを考えつつ、パスコースがなければ「プレッシャーがかかっていない人を使うことが大切」と、状況を判断してプレーすることの重要性を伝えていく。

技術面では「ドリブルをするときは、相手から遠い方の足で、相手が届かないところへ進んでいくこと」とデモンストレーション。U-10年代の指導では、言葉だけでなく、手本を見せることも大切だ。

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ほかにも、選手がミスをしたときに、それが技術的なミスであれば、プレーの狙いを褒めるなど、ミスを単純に指摘するのではなく、モチベーションを高める声かけに終止していた。こちらもU-10年代を指導する上で、見習いたい部分だ。

最後はチーム対抗で得点を争う形式に変更し、トレーニングの強度を高めて実施。終了後「ボールを持っている方はまずどこを見るんだっけ?」「守備で一生懸命追いかけた人?」などの声をかけながら、ポイントを振り返っていた。

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そうすることで、選手たちの記憶にも残りやすくなる。ベテラン指導者ならではの心配りだろう。

鈴木コーチは総括として「ボールを失わないために、大切なポイントは3つあります」と説明。それが「左右両足を使って、顔を上げてプレーすること」「前方の味方選手がどこにいるかを意識してプレーすること」「ボールを持っていない味方選手は、ボールを持ってる選手に合わせてポジションを取り続けること」だ。

この視点を踏まえてコーチングしていただけると、ポイントが整理されて、伝えやすくなるだろう。ぜひ参考にして、日々のトレーニングに活かしていただければと思う。

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【講師】鈴木理一郎/
大学生時代から母校(國學院大學栃木高等学校)のコーチとして指導者キャリアをスタート。プロのサッカー指導者への憧れを抱き、現クーバー・アカデミーオブコーチングへ入学。
卒業後はクーバー・コーチングにて11年間、関東・東海地域で5~15歳の少年少女を指導。

また、各県協会とのコラボレーションで、トレセン活動や協会主催行事をサポート。 2010年8月より日墨交換留学生(政府間同士の交換留学制度)として、(公財)日本サッカー協会より推薦を受けメキシコへ渡る。プロクラブ(UNAM PUMAS)での研修、メキシコサッカー連盟アカデミーでの指導、指導者養成学校でのライセンス取得など、多くの経験を積み2013年に帰国。

2014年3月よりClub Atletico GIRASOL(現Club Atletico Aichi)を立ち上げ活動。

FIFAワールドカップU17メキシコ大会において、サポートスタッフとして大会ベスト8、
第14回豊田国際ユース大会において、U16メキシコ代表の通訳兼サポートスタッフとして大会優勝に貢献。

JFA公認A級コーチライセンス、メキシコサッカー連盟レベル2ライセンス保持