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ボールを前に運ぶパスの優先順位とポジションの習得。U-15年代のビルドアップに必要な基本トレーニング

東京都足立区を中心に、幼児・小学生・中学生を対象に活動するオーパスワン。2023年度の日本クラブユース選手権U-15では、関東大会へ出場するなど、着実に力をつけているクラブだ。

同クラブは、ボールを保持するサッカーを標榜し、そのためのトレーニングを行っている。そこで今回はU-14の監督を務める大森正義コーチに、「自陣でボールを保持して前進するポゼッショントレーニング」を実施してもらった。

前編のテーマは、ボールを保持するために必要な「パスとポジショニングの基本の習得」。ジュニアユース年代におけるビルドアップを実行するには、どのような練習が効果的なのか?参考になるトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)

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ファーストタッチで前進するために、フリーな時に攻撃方向を確認する

トレーニング開始前、大森コーチは「オーパスワンでは、相手チームの出方に対して、効果的な戦術を判断、実行することで、ゲームを支配する状態を作り、見ている人々の心を動かすサッカーを目指しています」と、クラブの哲学を説明。

今回のトレーニングで大切なのは「攻撃方向を意識したオフザボールでのアクション、相手との駆け引きで優位性を保つこと」と話す。

最初のトレーニングは「パス&コントロール」から。3人が縦関係に立ち、中央の選手が相手に見立てたコーンから離れてパスを受け、背後の選手に出す動きを繰り返す。

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大森コーチは「出し手が蹴られるタイミングで動き出そう」と声をかけ「相手の背中から動き出すのだから、どういう動き出しが必要?」「ボールを受ける前は何が大事?」と問いかけていく。

そこで「パスの出し手が蹴ることのできるタイミングで、パスの受け手がコーンから離れる動き」の重要性を伝えていった。

「相手の背中をとって、瞬間的にマークを外そう。そのために速いスピードで動き、ボールを受けて、次にパスを出せる体の向きを作ろう」

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ほかに、縦パスを受けて、ファーストタッチで前進したいので、ボールを受ける前に攻撃方向を見ることにも言及。

試合中、ボールばかりに意識が向くと、せっかくパスを受けることができたのに、パスコースをみつけられず、ボールを奪われてしまうことがある。

「パスを受ける前に周りを見よう。パスの出し手は、どこに出すかわからないような体の向きで出そう。右に出すと見せかけて左に出すなど、相手の逆をとるイメージを持とう」

続いて、パスを受けた選手が背後の選手にパスを出し、リターンパスを受け、ワンタッチで縦パスを刺すという流れにチェンジ。

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大森コーチは「ボールを持った選手が中央で出し入れして、相手を引き付けて、外の選手に速いボールを出すイメージ」と説明し、「ミスしてもいいから、速いボールをつけよう」と、試合をイメージしてプレーすることを強調していた。

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数的優位のボール保持で意識したい2つのポイント

2つ目のトレーニングは「3対1」。6m×6mのグリッド内で3対1のボール保持を行う。ルールは2タッチ以下で、ファーストタッチはボールから遠い方の足で行い、ワンタッチの場合はどちらの足でもOKだ。

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ここでも大森コーチは「ミスをしてもいいから、受け手の体の中心に速いボールをつけよう」とチャレンジすることを訴えていく。

さらには「意識してほしいのは2つ。サポートの選手が、ボールホルダーにプレッシャーが掛かっていない状況で近づくと、プレーするスペースが狭くなる。プレッシャーが掛かっていないのであれば、ボール保持者から離れてサポートする」と説明し、「ボール保持者に対してプレッシャーが掛かっているかいないかでサポートの質を変えよう」とアドバイスしていった。

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また、ポイントとなるボールの置きどころについては「パスの出し手は、受け手の体の中心に出そう。受ける方の選手は、利き足であれば、オープンの位置に置くこと。そうすると縦にもパスを出せるし、相手が食いついてきたら反対にも蹴ることができる。周りの選手とのつながりによって、ボールの置所を変えよう」と声をかけていた。

途中から「ワンツーOK」、もしくはパスを15本つなぐというルールを追加し「相手の矢印を見ながら背後をとろう。ただ速いパスだと、相手の矢印は出ない。パスに強弱をつけよう」と考え方を提示していた。

ビルドアップにおけるパスの優先順位は「縦パス」

前編最後のトレーニングは「4対2」。8m×8mのグリッドで4対2のボール保持を実施。2タッチ以下で、縦パスに対しては必ずワンタッチというルールだ。

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ポイントは、縦パスが入った瞬間、両脇の選手は素早くサポートに入ること。ボールを取られたら、取られた選手と、その前の選手が交代なので、取られた瞬間に素早く守備へ切り替える。

大森コーチは「優先順位は縦パス。相手にバレないように、目線、体の向き、ボールを置く位置を意識して。誰がフリー? どこにスペースがある?」と声をかけ、「相手の矢印を操った上で、相手のライン間やファーストラインを越えよう」とアドバイスを送っていた。

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以上で前編のトレーニングは終了。大森コーチは「パス&コントロールのトレーニングでは、出し手と受け手がタイミングを合わせることや、素早いパススピードで行うことによって、受け手が良い状態でプレーすることが可能になります」と振り返り、「3対1、4対2のトレーニングでは、パススピードの強弱やファーストタッチで相手の矢印を操ること。相手の背後を狙うための、オフザボールの駆け引きが大切です」と総括した。

後編では、人数を増やしたポゼッショントレーニングを行っていく。

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【講師】大森正義/
2000年12月3日生まれ。18歳から地元の街クラブで指導者としてのキャリアをスタート。現在はFCオーパスワンのU-14カテゴリーを務める。5年生JA東京カップでは、3年連続の東京都ベスト8に貢献。