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「奪われたら即座に奪い返す」攻守の切り替えに特徴を見せるMIRUMAE FCの守備トレーニング

現代サッカーにおいて、攻守の切り替えは重要な要素になっている。特に守備のボール奪取の重要性は増しており、ボール奪取後、素早く攻撃に転じることで、相手の守備が整う前に得点チャンスを作ることができる。

そこで今回より、岩手県盛岡市で活動する、MIRUMAE FCのFD(フットボールディレクター)である工藤浩三郎氏に「攻守の切り替えを意識した、ボールを奪う守備のトレーニング」を紹介してもらった。

MIRUMAE FCは、セレクションを実施しない街クラブながら、U-12、U-15とも東北で上位に位置し、岩手県代表として全国大会に出場。

昨年12月に行われた全日本U-12選手権では、センアーノ神戸、横浜F・マリノスプライマリーに敗れたものの、オオタFCに勝利。攻守の切り替えスピードを速くし、連動した守備でボールを奪う粘り強さを発揮した。

攻守の切り替えに特徴を見せるMIRUMAE FCでは、どのようなトレーニングを通じて、ボール奪取や攻守の切り替えを指導しているのだろうか?(文・鈴木智之)

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即座に奪い返す意識を持つ

トレーニング動画、前編のテーマは「個でボールを奪う基礎の習得」。工藤FDは「今回は1対1、3対1を行います。ここで大切なのは、即座に奪い返すという意識です」と説明し、トレーニングに入っていった。

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「1対1」では、8m四方のグリッドで実施し、対角線上から選手が出てきて、守備側が攻撃側にパスを出し、1対1がスタートする。

攻撃側は斜め前方のグリッドの辺をドリブルで通過することを目指し、守備側はボールを奪い、同じように斜め前の辺を目指す。

手前のグリッド辺からボールが出てもプレーを止めず、高い強度を保ったまま続けることもポイントだ。

MIRUMAE FCの選手たちは、球際激しくプレー。工藤FDは「ボールを奪われた後、プレーを止めないのが良かった」「追いかけていく姿勢が良いね」と、アグレッシブな姿勢を褒める声かけを行っていた。

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続いて、守備側がボールを奪ったら「次に待っている、守備側もしくは攻撃側の選手にパスを出す」というルールに変更。そうすることでボールを奪った後に、しっかり味方につなぐプレーを意識付けすることができる。

それにより、工藤FDは「状況を観て、どちらのパスコースを切ったほうがいいのか。相手がどっちにパスを狙っているのかを考えよう」とアドバイスを送っていく。

また、ボールを奪いに行く意識が強すぎる選手に対しては、パスコースを切るなど、状況に応じた対応に意識が回っていないことを指摘。変わりゆく状況を察知し、素早くポジションを取ることや、パスコースを切ることなどを求めていった。

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早く切り替えることで、味方が楽できる

2つ目のトレーニングは「3対1」。攻撃側3人の距離は5m以内と定め、守備側にボールを奪われないよう、パスを回してボールを保持していく。ボールを奪われた選手がすぐに守備になるので、攻守の切り替えを意識せざるを得ないトレーニングだ。

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攻撃側は1タッチでプレーし、パスがずれても全員が移動して、プレーを止めないことがポイントになる。

工藤FDは「ボールを奪われたら、すぐに取り返すことが大事。ポゼッションの練習というよりも、守備の練習だからね」と説明。

ここでも「ボールを奪われそうになったら、すぐに相手へプレスに行こう」と意識付けすることにより、攻守が連続して切り替わり、ボール奪取の意識が高まっていく。

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さらには「守備の時間が長いと疲れる。大変だけど、試合中は切り替えを早くしなければいけない。自分が早く切り替えることで、味方が楽することができる。自分の思いや意識が大事。疲れてもへこたれない」と、マインドの部分にアプローチしていった。

動画の最後には、トレーニング中に雪が降ってくる。東北地方ならではの雰囲気も感じていただけるだろう。

前編のトレーニング終了後、工藤FDは次のように振り返った。

「ボールを奪われた瞬間、または奪われそうになった瞬間に、ボールを奪い返しに行っているかどうかを見極めることが大切です。たとえ奪い返すことができなくても、選手の意識の変化、プレーの変化を見逃さないようにしましょう」

後編では、攻守の切り替えを意識してボールを奪う、グループでのトレーニングを行っていく。

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【講師】工藤浩三郎/
MIRUMAE・FCで指導を始め、クーバーコーチングやJ下部組織での指導を経て15年前にMIRUMAE・FCへ戻る。その後、人口の少ない北東北で育つ選手達にどのように関わったらいいのか、どのような指導をしたらいいのか、常に試行錯誤しながら選手達と関わっている。