06.03.2024
栃木の強豪・ヴェルフェ矢板U-12が取り組む、攻守が一体化した、現代サッカーに適応するためのトレーニング
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前回より、セレクションをしない街クラブながら、3年連続で全日本U-12サッカー選手権大会に出場している、栃木県の強豪・ヴェルフェ矢板U-12のトレーニングを公開している。
テーマは「ポゼッションとボールを奪うスキルを同時に高めるトレーニング」。今回の後編では「ゴール前の攻防と守備を強化するトレーニング」と題し、U-12の監督を務める、福田丞太郎氏にトレーニングを実施してもらった。
現代サッカーに必要な「攻守が一体化したプレー」を実現させるために、ゲーム形式のトレーニングを通じて、どこにフォーカスし、選手を上達に導いていくのだろうか?(文・鈴木智之)
まず相手の背後を狙う
ヴェルフェ矢板U-12を率いる、福田丞太郎監督によるトレーニング。前編では、攻撃、守備どちらかのテーマに偏ることなく、両方の能力を高めることを目指し、パス&コントロール、シュート、ポゼッションを実施した。
後編では、実践に近い形式に移行し、「ゴール前の攻防(3対3+2GK)」からスタート。縦44m×横40mのグリッドで行い、ゴールを奪ったチームは、待機しているチームと交代し、決められた側はすぐにプレーを再開するというルールだ(オフサイドあり)。
攻守が目まぐるしく切り替わる設定のため、攻撃、守備ともに連続して行うことがポイントだ。ゴールが決まった後に素早くピッチに入り、プレーを継続するため、強度の高いトレーニングになっている。
福田監督は「まずどこを狙うんだっけ?相手の背後だよね」と投げかけ、前編から通じて行ってきた、ゴールへの意識を植え付けていく。
さらには「パススピードはどう? そのパスにメッセージはある?」と、パスの受け手に時間を与えるために、パススピードを上げること。さらには前進するのか、ボールを保持するのかなど、メッセージを込めたパスを出すように、アドバイスしていた。
また、GKは基本的に前を向き、フリーな状態でプレーすることができるので、「GKはどこにでもパスを出せるので、どこを狙う?」と声をかけ、GKから相手の背後へパスを出し、ワンプレーで最終ラインを突破する動きを称賛していた。
「(パスを出す選手が)前向きでフリーであれば、相手の背後を目指そう。そこにパスが出れば、ゴールを狙えるよ。背後を相手に消されたら、横パスをもらえるポジションをとれば、ボールを失わない」
中盤では、「動きながらスペースや背後でボールを受けること」の重要性を指摘。3対3の数的同数のため、パスの受け手が止まっていると、相手はマークしやすい。
そこで、動きながら相手のマークを外し、スペースでボールを受けると、次のプレーへと素早く移ることができる。常に状況を認知し、足を止めないことも重要なポイントだ。
前線から連動してボールを奪う
トレーニングの最後は「6対6+2GK」。縦60m×横50mのグリッド内で、1-2-3-1のシステムで実施する。
ここでも「前からボールを奪いに行く」ことを徹底。相手が前からボールを奪いに来るので、裏を返せば、背後にスペースがある。
そこを狙うのがポイントで、守備から攻撃への切り替えを早くすることにより、素早く相手のゴール前に進入することができる。
福田監督は「後ろの選手が、前の選手をコントロールして、方向を限定しよう」と声をかけ、グループの守備でボールを奪い、攻撃へと素早く転じることを徹底。
「GKからDFにボールが入るとき、ボールに近い選手が全速力でダッシュし、プレッシャーをかけることで、どこにボールが出そうかが予測できる。2列目の選手がボールを奪いやすくなるよ」
また「守備の要求は出てきたけど、攻撃の要求がない。いつ、どこでボールが欲しいのか要求しよう」と声をかけることで、最後は華麗な連携からゴールが出始めていた。
以上で、熱のこもったトレーニングは終了。福田監督は、次のように締めくくった。
「現代サッカーは、攻守が一体化された、シームレスな状況になっています。トレーニングに際して、どのようなテーマであろうと、コーチが攻守に働きかけることで、将来的に、現代サッカーに対応できる選手になるのではないでしょうか」
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今回の記事で紹介した、トレーニングメニュー、コーチングの内容、ポイントの詳細は、ぜひ動画で確認してほしい。多くの学びを得られるはずだ。
【講師】福田丞太郎/
2006年よりヴェルフェ矢板U-12の監督となり「全日本U-12サッカー選手権大会」には5回(2015・2016・2021・2022・2023)出場。2022年には初のベスト16進出を果たす。JFA A級コーチジェネラル・U-15・U-12ライセンス等を保有。
クラブ出身の主なOBは土屋巧(J1柏レイソル)、後藤裕二(JFLソニー仙台)等がいる。
取材・文 鈴木智之