06.10.2024
守備は何から教える?低学年のうちに習得させたい切り替えの速さと体の使い方
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者による、トレーニング動画を配信中だ。
今回のテーマは「低学年のうちに習得したい守備のテクニック」。ボールを奪うための身体の使い方や、守備の仕方がなかなか上達しない選手にとってのファーストアプローチとしても最適だ。
トレーニングを実践してくれたのが、青森県の強豪クラブ、リベロ弘前SC U-12監督の住谷学氏。リベロ津軽監督時代には、全日本U-12選手権に複数回出場し、個性あふれる選手を輩出するなど、育成手腕に定評のある指導者だ。
過去に2度、COACH UNITED ACADEMYに出演し、好評を博す住谷監督による、わかりやすい指導は必見だ。(文・鈴木智之)
全力で追いかけて、相手を慌てさせる
個の守備力を高めるトレーニング。まずは「切り替えを速くする、1対1の鬼ごっこ」からスタートした。
設定としては、2m四方のグリッドで実施。グリッド内に4人が入り、そのうち2人が壁を作り、その周りで1対1の鬼ごっこを行う。
ルールとして、「壁の間を通ることはできない」「壁の周りしか逃げることができない」「鬼から10秒間逃げ続ける」「タッチされたら鬼が変わり、10秒間逃げ続ける」という中で繰り広げていく。
ウォーミングアップを兼ねたトレーニングながら、相手との駆け引きや全力で動くことなど、サッカーの要素に近いものが含まれている。
住谷監督は「鬼が全力で追いかけると、相手は背中を向けて逃げる。でも、ゆっくり追いかけると、背中を見せないので、(鬼が)どっちに来るかがわかる」と話し、「全力で追いかけていたら、背中が見える。そこで追いつけなくても、相手の逆をとれば捕まえられるので、全力で追いかけて、相手を慌てさせよう」とアドバイスを送っていた。
続いて、逃げる時間を8秒間に短縮。その中で全力を出すことや、タッチされた後の切り替えを素早くするよう、意識付けしていく。
次に「壁二人の間に、手だけを出してタッチするのはOK」というルールに変更。これにより、さらに細かい認知、判断、ステップワークが重要になる。
住谷監督は「相手との距離が大事。手が届かないところ、サッカーで言う『足の届かないところ』に逃げたほうがいい」と声をかけ、「スピードの中で、相手と駆け引きすること」をうながしていった。
「試合中、もしボールを取られたら、すぐに追いかけなければいけないよね。それと同じイメージを持って、鬼に捕まったら、すぐに振り向いて追いかけることを意識しよう」
ボール側に体重をかけ、相手を怖がらせる
2つ目のトレーニングは「1対1」。縦20m×横10mのグリッドで、1対1を行う。
攻撃側は全速力でドリブルをして、相手をかわしてゴールにドリブルインを目指す。(守備もボールを奪ったら同様)。
守備のポイントは「相手の正面に入って、ボールを奪う」こと。
住谷監督は「相手の正面に入るとき、大股で動くと、相手の動きに合わせてプレーを切り替えられない。相手に近づくにつれて、小股にしよう」とアドバイス。
また、相手がドリブルで向かって来たときに、正面に立つと、相手はどちらにも行けるので、必ずどちらかに相手を進ませる身体の向きを作り、コースを限定して、足のインサイドでボールを奪うことをデモンストレーションしていた。
「まずはボール側に体重をかけて、相手に身体をぶつけよう」と、1対1のポイントを的確に指導しているので、コーチングの参考になるだろう。
また、子どもたちに対して「まずは思い切って飛び込もう。大げさにやってごらん」と声をかけ、次のようにデモンストレーションを実施。
「ボールを奪いに行くときは、ボール側に自分の体重をかけること。足だけを出して、守備をしないように。相手を怖がらせるためにも、ボール側に体重をかけよう。そうすると、かわされても次の足が出しやすくなる」
さらに、ボールを奪われた後の切り替えも強調し、「さっきの鬼ごっこと同じだよ」とアドバイスしていた。
設定を柔軟に変更
このトレーニングでは、守備の選手がかわされてしまう場面が目立ったので、「攻撃側はフェイントなし。スピードの変化のみで相手を抜く」というルールにチェンジ。
子どもたちの上達具合に応じて、柔軟にルールを変え、導き出したいプレーにアプローチする様子は、さすが経験豊富な指導者だ。
1対1の守備となると「寄せの速さ」「気持ち」などのコーチングになりやすいが、住谷監督の指導は、そこから一歩踏み込み、具体的な方法と理由を提示している。
それにより、トレーニング終盤では良いプレーが出始めるので、その様子はぜひ、「COACH UNITED ACADEMY」の動画で確認していただければと思う。
【講師】住谷学/
2009年より指導者を始め、2015年より全国大会の常連である青森の強豪チームのリベロ津軽SCでの指導を開始。2018年から2020年までU-12監督を務め、2019年からは女子U-15監督を兼務しながら、2020年よりアカデミーダイレクターも務める。2023年よりU-12の監督に復帰した。
取材・文 鈴木智之