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選手の自主的な学びを促進!ジュニア年代の指導者が知っておくべきスモールサイドゲームの利点と活用法

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近年の育成年代においては、スモールサイドゲームが推奨されている。スモールサイドゲームとは、3対3や4対4など、少人数制のミニゲームのことで、JFA(日本サッカー協会)が運用のガイドラインを発表するなど、育成年代での導入が進んでいる。

今回のCOACH UNITED ACADEMYでは、サッカー界で注目を集めるスモールサイドゲームが、育成年代で推奨される理由と効果について、「サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで解決するためのトレーニングデザイン入門」などの著書を持つ、筑波大学サッカーコーチング論研究室所属の内藤清志氏による講義をお届けしたい。

とくにジュニア年代の指導者にとって「なぜスモールサイドゲームが、子どもたちの成長に効果的なのか?」を理解するための、絶好の教材になるだろう。(文・鈴木智之)

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スモールサイドゲームで体験できる4つの局面

スモールサイドゲームについて、内藤氏は「簡単に言えば、ゲーム形式の練習です。ミニゲームのようなイメージで差し支えないと思います」と話し、こう続ける。

「スモールサイドゲームの本質は、サッカーの競技特性である、4つの局面(攻撃、守備、攻撃から守備、守備から攻撃への切り替え)が、リアルタイムで存在することにあります」

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ゲーム形式なので、自然と4局面が発生し、少人数ゆえプレーに関わる機会も多い。内藤氏はスモールサイドゲームの利点を「選手一人ひとりのプレー機会が大幅に増えること」と語る。

「少ない人数、小さいコートなどでプレーすることによって、選手一人ひとりのプレー機会が増えます。そして数多くの経験の中から、成功や失敗を学んでいく。それがスモールサイドゲームの利点と言えるでしょう」

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スモールサイドゲームは、選手の自主的な学びを促進する。内藤氏は最近の指導法のトレンドについて、次のように説明する。

「最近は、ティーチングからコーチングへの移行が進んでいます。つまり、一方的に教えるのではなく、選手の気づきを促す指導です。ゲームの中で失敗や成功を繰り返すことによって、自分の中で経験を得て、自分の形やうまくいく確率が高いプレーを学んでいきます。それはスモールサイドゲームの利点と一致しているのではないでしょうか」

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日本サッカー協会のガイドライン

日本サッカー協会のガイドラインでは、年齢に応じて以下のような形式を提案している。

U- 6:3対3
U- 8:4対4
U- 10:5対5
U- 12:8対8

内藤氏はこれらの形式について、次のように解説する。

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「3対3では、ボールを中心とした『一人称』のプレーから、味方との動きやパスによるコミュニケーションを意識した『二人称』、さらにそこに相手の存在を意識した『三人称』のプレーへの移行が促されます。4対4、5対5と人数が増えていくにつれ、より複雑な『三人称』のプレー、つまりチーム全体を見渡した戦術的な判断が求められるようになります」

スモールサイドゲームの効果は、データによっても裏付けられている。

「8対8のゲームと4対4のゲームを比較すると、4対4の方が明らかにプレー回数、シュート数、ゴール数が増加しています。これは、選手一人ひとりの関与が増え、より多くの学習機会が生まれていることを示しています」

年齢や発達段階に応じて、柔軟にカスタマイズできることも、スモールサイドゲームの特徴だ。

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「例えば低学年なら、蹴られる距離や見える範囲に合わせて、コートサイズを調整します。体が小さく、筋力がないため、20メートルしか蹴れない選手に、50メートル先の選手がパスを要求しても、そこにいないのと同じことですからね」

選手の成長に応じて、コートサイズを設定し、適切な負荷や強度をコントロールするのが、指導者の腕の見せ所と言えるだろう。

エコロジカルアプローチとの関連性

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近年、サッカー界では「エコロジカルアプローチ」と呼ばれる学習理論が話題になっている。

これは「さまざまな制約を工夫することで、選手が自然と望ましい行動を取るように導く」という考え方で、具体的にはコートサイズや使うボール、人数、ルールなど、環境にともなう制約を加えることで、学習を促進させるという指導方法だ。

内藤氏はこの考え方を踏まえた上で「例えば、縦長のピッチにすれば、縦へのドリブルや背後へのパスが増えます。横長にすれば、横パスやクロスが増える。制約を変化させることで、出てくる現象は変わってきます」と説明する。

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「育成年代の指導では、個人の能力を伸ばすことが大切です。子どもたちは実際にプレーすることで、たくさんの経験を積み、学んでいきます。そのため、たくさんプレーさせること、全員が積極的に動ける環境を作ることが重要になります」

さらに、こう続ける。

「忘れてはいけないのは、最終的には11対11のゲームに戻っていくこと。だからこそ指導するときは、サッカーの本質から離れないように気をつける必要があります。その観点からも、スモールサイドゲームを利用しながら、子どもたちの成長を促すことは、大きな利点があると考えています」

前編の講義はここまで。次回の「COACH UNITED ACADEMY」の動画では、スモールサイドゲームを「8人制サッカーにつなげるためのポイント」「練習メニューの構築の仕方」について、深堀りしていく。

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【講師】内藤清志/
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。