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ヴィッセル神戸とソレッソ熊本の指導者から学ぶ、育成の本質〜JCY指導者向けセミナーレポート~

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2024年秋、COACH UNITED ACADEMYは、日本クラブユースサッカー連盟(JCY)との提携のもと、指導者向けオンラインセミナーを開催。今回の対談では、ヴィッセル神戸アカデミーのヘッド・オブ・コーチング後藤雄治氏と、2023年度全日本U-12サッカー選手権大会優勝監督の三角将行氏(ソレッソ熊本)が登壇した。

熊本県出身の両氏は、筑波大学時代にコーチと選手という関係で切磋琢磨した仲。互いを深く理解する二人が、現代サッカーにおける育成の本質に迫った。(文・鈴木智之)

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選手の成長と勝利は切り離せないもの

最初のテーマは「勝つチームを作るための戦略とメンタリティ~次の試合で結果を出す指導法」。育成年代ではよく「勝利か育成か」という切り口で語られるが、後藤氏は「育成と勝利は別物ではなく、むしろ良い育成をしているからこそ勝てるんだと思います」と話す。

ヴィッセル神戸アカデミーでは、科学的・組織的なアプローチを採用しており、後藤氏は「まず仮説を立てて、それをしっかり実行して、そこから得られた結果を評価・検証する。そして次のステップを考えていく。この繰り返しが大切なんです」と説明する。

注目すべきは、3ヶ月周期で実施されるIDPシステムだ。「技術、戦術、フィジカル、メンタル」という4つの観点から選手を多面的に評価し、成長をサポートする仕組みとなっている。

「選手一人ひとりが自分の強みと弱みを評価して、それを担当コーチと共有します。そこからチーム全体での多角的な評価も加えて、最終的に選手自身が自分のことをより深く理解していく。この過程がとても大切です」(後藤氏)

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ソレッソ熊本の三角氏は「選手の成長と勝利は切り離せないものだと思っています。上手くならないと勝てないし、勝つことで選手はさらに成長する。この相乗効果を大切にしています」と語る。

その上で重視するのが、日常の積み重ねと選手の自主性だ。

「私たちが大切にしているのは、試合は日頃の練習の延長線上にあるという考えです。特別なものとして捉えるのではなく、毎日の積み重ねの中で自然と力が発揮できるように『今日も普段通り』『今日も成長する1日』という意識で取り組むことが、全国優勝につながったと思います」

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ソレッソの子たちは裏切らない

ソレッソ熊本からヴィッセル神戸のアカデミーに進む選手もいる。2023年にトップに昇格した安達秀都も、そのひとりだ。彼を含むソレッソ出身の選手について、後藤氏は「ソレッソの選手で、うちの練習に参加してくれた子たちは努力家が多い」と評価する。

特に印象的なのは「矢印を常に自分に向ける子が多い」こと。「何かうまくいかなかった時に『じゃあどんな努力ができるんだろう』と考える選手が多い」と振り返る。

この言葉を受けて、三角氏は「スカウトの方によく言っていただくのは『ソレッソの子たちは裏切らない』ということ。『3年間どんなことが起きようと、頑張り抜いてくれる』という言葉をかけてもらうことは多いです。それは素直にうれしいですね」と笑みを浮かべる。

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セミナーの後半では「プロへの道を開く3年間の育成計画、 才能を引き出す指導術」をテーマに対談を実施。両氏は、プロ選手の育成において、メンタル面の重要性を強調する。

後藤氏は「今はサッカーが上手くて、体も強い選手がたくさんいます。その中で最後まで残っていく選手というのは、純粋にサッカーが大好きだったり、簡単には諦めない強さを持っている。最終的には、努力できる才能が明暗を分ける。僕はそう思っています」と話す。

三角氏はさらに興味深い観察を加える。「プロになるという夢は、遠い目標に感じられがちです。でも実際にプロになっている選手を見ていると、小学生ぐらいから『俺ってプロになれるんじゃね?』ぐらいのマインドを持っている。だから壁にぶつかったとしても『プロになるんだから、このぐらいの壁は乗り越えないとね』という姿勢で努力ができるんです」

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指導者自身が学ぶことの重要性

2時間近くに渡って行われた対談を通じ、浮かび上がった重要なメッセージは、指導者自身の学びに対する姿勢だ。後藤氏は「選手を成長させていくためには、私たち指導者も常に学び続けなければいけないと思っています」と強調する。

三角氏も「一人で考え続けていても、なかなか答えは見つからないし、成長にも限界があります。周りの方々との関わりや会話、他の指導者のトレーニングを見たりすることで、自分の成長のスピードも上がっていく。そういう機会がとても大切だと感じています」と、継続的な学びの重要性を説く。

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その学びの場として、両氏はコーチユナイテッドの価値を評価する。後藤氏は「今はたくさんの指導者の方が、様々な形で情報を発信してくださっています。そういった情報に触れることで、新しい視点や気づきが生まれる。それが選手を育てていく上で、とても重要なことだと思います」と話す。

三角氏も「常にアンテナを張って、いろんな意見や考えに触れることが大切です。その中から自分に必要なものを吸収していく。そういう姿勢を持ち続けることが大事だと思います」と、オープンな学びの姿勢を強調する。

コーチユナイテッドが果たす役割

この対談から見えてくるのは、育成の形は一つではないということ。Jクラブの組織的なアプローチと、街クラブの柔軟なアプローチ。互いの手法の中にある本質的な共通点は、「選手の可能性を最大限に引き出すために、指導者自身が学び続ける」という姿勢にある。

自分たちの環境や状況に合った育成モデルを確立しつつ、常に新しい知見を取り入れる柔軟さを持つこと。そしてその学びの場として、コーチユナイテッドが果たす役割は大きい。

なお、ここで紹介しきれなかった具体的な指導メソッドや、選手との向き合い方に関する詳細なエピソードは、コーチユナイテッドアカデミー会員向けの動画で視聴することができる。

豊富な指導経験を持つ後藤氏の体系的な育成論や、全国制覇を成し遂げた三角氏の指導法など、貴重な知見の数々が語られている。

指導者としてさらなる高みを目指したい方、より深い学びを得たい方にとって、コーチユナイテッドアカデミーへの入会は、新たなステップアップの機会となるはずだ。


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【出演】
後藤雄治(ごとう・ゆうじ)/ヴィッセル神戸アカデミーヘッドオブコーチング

1980年1月12日生まれ、熊本県出身。
熊本県立大津高校、佐賀大学、筑波大学院を経て2005年よりヴィッセル神戸ユースコーチに就任。
2019年にメソッドグループ最適化担当を務め、2020年にはヘッドオブコーチング、2022年よりアカデミーダイレクターに就任。
2024年よりアカデミーヘッドオブコーチングに就任。

三角将行(みすみ・まさゆき)/ソレッソ熊本コーチ
1981年6月27日生まれ、熊本県出身。
熊本県立玉名高校から筑波大学へ進学。
大学時代から少年サッカーの指導を経験。
大学卒業後は、熊本県内の高校で保健体育の教員として3年間勤務。
2007年よりソレッソ熊本のコーチとして活動し、第47回全日本U-12サッカー選手権大会でチームを初優勝に導く。