02.03.2025
「チームの守備に貢献できる選手を育てる」神奈川の強豪街クラブが取り組む、守備の個人戦術を身につける方法
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
サッカーにおいて、攻撃的なプレーは華やかで注目されがちだが、強いチームづくりの土台となるのは堅固な守備である。特に守備の個人戦術、グループ戦術の土台となる認知力、判断力は、ジュニア年代で身につけておきたい。
前回より、神奈川県の強豪街クラブ、中野島FCの岡本一輝監督による「守備に必要な個人戦術の確認と実践トレーニング」動画を公開中だ。
セレクションを行わない街クラブながら、多くの選手をJクラブに送り出してきた同クラブの指導法から、守備戦術の本質を探っていく。(文・鈴木智之)
背後のスペースを意識した守備
後編最初のトレーニングは「4対4+1フリーマン+2サーバー」。攻撃・守備ともに2-2のポジションで、攻撃方向は片方のみ。サーバーのラインを突破することが目標となる。グリッド中央のみを移動可能なフリーマンを配置し、より実戦的な状況を作り出す。
岡本監督は「(前編のトレーニングに比べて)サーバーが動ける範囲が広がっているので、パスコースを背中で消す意識を持とう」とアドバイス。
さらに「相手ゴールの近くにいる選手に、パスを出されるとピンチになる」と説明し、「縦へのパスコースを消しながら、自分のマークにも寄せる意識を持ってポジションをとる」という具体的な判断基準を示していく。
続いて岡本監督は、インターセプトから得点につながったプレーを取り上げ、「3人に守備に行けるポジションにいた。そこがベスト。集中していたからそこに立てた」と、良い判断の理由を具体的に解説。
ほかに「なるべく相手ゴールの前でボールを奪いたい。2-2の前の選手が良い立ち位置をとることで、後列の選手がインターセプトしやすくなる」と、チーム全体での連動の重要性を強調していた。

ボールを奪う、ゴールを守るバランス意識
また、岡本監督は「守備の目的は?」と選手に問いかけ、「ボールを奪う」「ゴールに決められてはいけない」という二つの答えを引き出す。そして「ゴールを守る意識が強くなると、ボールを奪う意識が低くなる。反対にボールを奪う意識が強すぎると、ゴールを守る意識が低くなる」と、両者のバランスの重要性を説いていた。
最後は「5対5+2GK」のゲーム形式へ。グリッド中央にマーカーを設置し、「そこにボールが入ったらピンチになる」と、マーカー間にボールを通させないことを強調。
さらに「ただ楽しくゲームをしないように。ゲームのためにいままでの練習があったんだよ。どんなことをやったのか思い出しながらやろう。チームで賢くプレーしよう」と、これまでの学びを実践に活かすよう促していた。このあたりも大事なポイントだ。
ほかに、GKがボールを持った際の立ち位置や連動した守備など、具体的なシチュエーションでの判断基準を丁寧に解説。
「ボールを奪うために、ボールサイドの選手は強く行きたい」「後ろの選手が声をかける」「背後の選手へのパスコースを切りながら寄せる」といった要素も、子どもたちにわかりやすく伝えていった。
チームの守備に貢献できる選手を育てる
以上でトレーニングは終了。岡本監督は次のように総括した。
「後編のトレーニングは、より実際に近いオーガナイズとなっています。特に重要なのは、整える時、奪いに行く時の、いつ行くのかの共有です。高いレベルで守備の個人戦術が身につけば、チームとして強固な守備が完成します。相手の攻撃の狙いを察知し、自らアクションを起こし、チームの守備に貢献できる選手を育てることが、このトレーニングの最大の狙いです」
さらに「中野島FCでは、自分から行動を起こせる、自立した選手の育成を目指します。ぜひ皆さまも、今回紹介したものを日々の活動やトレーニングの参考にしてみてください。日本サッカーを一緒に盛り上げていきましょう」と締めくくった。
今回のトレーニングはU-9の、年齢の低い子どもたちを対象に行なっている。
サッカー経験が少なく、理解する力も低い年齢だが、指導者がわかりやすい言葉遣いやデモンストレーションをすることで、子どもたちのプレーが向上していく様子が収録されている。ぜひそのあたりも参考に、「COACH UNITED ACADEMY」の動画を見ていただければと思う。
【講師】岡本一輝/
日本サッカー協会公認A級コーチU-12及び同U-15ライセンスを保持。中野島FC、川崎フロンターレU-15、川崎フロンターレU-18、桐蔭横浜大学、Angkor Tiger FC(カンボジアプロ1部リーグ)でプレーし、2019年から中野島FCの監督に就任し指導者としてのキャリアをスタート。2022年夏に行われた「アイリスオーヤマ第7回プレミアリーグチャンピオンシップ」でクラブ初となる全国大会優勝を達成した。
取材・文 鈴木智之