02.21.2025
独自のトレーニングで、選手個々の力を伸ばす。FC PORTA羽毛勇斗監督が目指す、育成の形
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
今回より、COACH UNITED ACADEMYに出演してくれた指導者による「サッカー指導を学ぶ」をテーマにしたインタビューをお届けしたい。第1回はFC PORTA羽毛勇斗監督だ。
神奈川県で活動するFC PORTAは2018年創設、ジュニアのチームとスクールがある。1期生のほとんどがJクラブのジュニアユースに進み、近年は『ジュニアサッカーワールドチャレンジ』にも出場。
また2025年2月に行われた『日産カップU-12』では、決勝で横浜F・マリノスプライマリーに競り勝ち、チャンピオンに輝くなど、着実に力をつけている。
クラブの創設者であり、監督を務める羽毛氏は、どのような考えでサッカーを学び、日々の指導に活かしているのだろうか?(取材・文 鈴木智之)
プロの練習に参加して受けた衝撃
羽毛氏は横浜FCの育成組織でプレーし、U-16日本代表に選ばれた経歴を持っている。現役時代はトップ下、ボランチ、センターバックなど、中央のエリアでプレーする選手だった。大学は東海大学に進み、そこでJFA 公認S級コーチライセンス(現・JFA Proライセンス)を持つ、今川正浩氏のゼミに所属。サッカー指導の基礎を学んだ。
とはいえ指導者になることは考えておらず、大学卒業後は一般企業に就職。転機となったのは、社会人1年目の夏。とある少年サッカーチームの練習を見たときのことだった。
「自分が受けてきた指導と、何十年経っても変わっていない感覚があり、子どもたち
を見ていて、このままでいいのかという思いが強くなりました。そこで自分の経験も含めて、教えられる範囲でやってみようと思ったんです」
脳裏によぎったのが、現役時代に体感したことだった。羽毛氏は中3のときには高3の、ユースに上がってからはトップチームの練習に参加する有望株だった。
「ユースの頃は判断力やポジショニングを意識して、少ないタッチでパスを回すといったスタイルで、それなりにやれていました。でもトップの練習に参加したときに、もっと個の力、いわゆる対人の能力を高めないと、プロでは通用しないと痛感したんです」
ドリブルで相手をかわす、奪われないようにキープする。守備では個人でボールを奪う。サッカーに必要なベースとなる能力が、プロのレベルに到達していないことを思い知らされたという。
「ユース同士で試合をするときは、ポジションをとって、ワンタッチ、ツータッチでプレーして、守備ではグループで守る。それで通用していましたが、いざ個人としてトップチームの練習に参加したときに、何もできなかった。そこで急にドリブルだったり、守備の対人能力を高めようと思っても、高校生なので遅いんですよね」
さらに続ける。「サッカー人生を振り返って、どのタイミングで変われば良かったのか。そう思ったときに、4種(小学生)でやっておかなければいけなかったと感じました。その後悔はいまだにありますね」
この経験から、羽毛氏はジュニアを対象にしたスクールを開設。その後、チームを立ち上げ「ポルタベース」と呼ばれる独自のトレーニング方法を確立していく。
時間のある限り、あらゆるサッカーを見る
「ポルタベース」は、テクニック、スピード、判断力、メンタリティなど、サッカー選手に必要な要素を総合的に育成するトレーニングだ。羽毛氏は「ポルタベースに半年ほど取り組めば、動きは良くなります」と自信をのぞかせる。
COACH UNITED ACADEMYには、ポルタベースのトレーニングが収録されている。
「他のコーチには『結構、見せちゃってますけど、大丈夫ですか?』と言われたりもします(笑)。でも僕らのトレーニングは日々アップデートしていますし、個人に加えて戦術のところも教えているので、そこは問題ないかなと思っています」
トレーニングをアップデートさせるために、日々の研究は怠らない。羽毛氏は「サッカーが好きなんですよ。海外サッカーからJリーグ、ユース年代まで、空いている時間があればサッカーを見ています。お風呂に入りながらも見ているので、妻からは呆れられますが」と笑顔を見せる。
「サッカーは常に進化しています。だからこそ自分が学んできたこと、体験してきたものが、時代によって変化することがあります。ポルタで今やっていることも、時代が変わって、求められる選手像が変わったら、すぐに変えなければいけません。そのためにアンテナを張って、変化に気づくこと。サッカーの進化に対応するためにも、学びは続けなければいけないと思っています」
COACH UNITED ACADEMYで視聴可能
FC PORTAの目標は明確だ。羽毛監督は「プロサッカー選手を育てたい」と言う。
「ナショナルトレセンやJリーグのアカデミーに入る選手は輩出してきました。これからは世代別日本代表の選手を出したいし、その先は一人でも多く、プロになる選手が出てくれればと思っています」
そのために「将来を見据えて、自分で考えて努力できる選手になってほしい」と言葉に力を込める。
「自分はサッカーを続けてきて、このままではプロになれないなって、最後の最後で気づきました。僕が教えている子たちには、そうはなってほしくないんです。常に1年後、2年後、3年後を見据えて、日々の練習や試合に向き合える選手になってほしいと思っています」
羽毛氏のトレーニング映像は、COACH UNITED ACADEMYで視聴することができる。FC PORTAの「ポルタベース」をはじめとする実践的なトレーニング方法は、多くの指導者から注目を集めている。サッカー指導者として学びを深めたい方は、ぜひチェックしてほしい。
「COACH UNITED ACADEMYには、何かしら自分のチームや選手に、必要なものが掲載されていると思います。今、チームに何を取り入れればいいのかという、考えるための選択肢でありヒントが詰まっているので、ぜひ参考にしてもらえたらと思います」
サッカーの進化に終わりがない以上、サッカーに対する学びに終わりはない。それを体現し、結果につなげる羽毛氏とFC PORTAの今後に注目だ。
取材・文 鈴木智之