02.20.2025
「楽しい」の延長線上に基本技術の向上がある!U6年代のトレーニングは仕掛け1つで取り組み方が変わる!
サッカーの指導を学ぶことができる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-6~U-10年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。
前回より「サッカーを始めたばかりの子が、楽しく夢中になれるトレーニングの仕掛け」をテーマに、エルマルカサッカースクール代表の山本雅史氏によるトレーニングを公開中。
今回のトレーニング対象はU-6の子どもたち。サッカーの指導現場において、未就学児を対象とする際には、普段以上に配慮と工夫が求められる。基本スキルの習得は重要だが、単調な練習では子どもたちの興味を維持することが難しく、結果として効果的な指導に結びつかなくなってしまう。
そこで今回は、遊び感覚を取り入れながら、基本スキルの習得とチームプレーの基礎を育むアプローチを紹介したい。未就学児を指導するコーチにとって、参考になること間違いなしだ。(文・鈴木智之)
楽しみながらドリブル・キックなど基本技術を総合的に磨ける練習法
トレーニングのテーマは「止める・蹴る・運ぶにアプローチ」。ここでは「コーン倒し」を行う。山本コーチは「運ぶことや蹴ることを、飽きずに何度もチャレンジすることが狙いです」と説明。
具体的なルールは、コース上に配置された3種類のコーン(ミニコーン、赤いコーン、王様コーン)を倒すことで得点を競う。ミニコーンは1点、赤いコーンは3点、王様コーンは5点と、難易度に応じて得点が設定されている。
やり方としては、コーンをドリブルでかわし(ジグザグ)、ゴールエリア内に入ったところで、設置してあるコーンにボールを当てて倒す。さらにボールを手で持ち、「ストーン」と呼ぶ、障害物エリアにある石に見立てたクッションの上を踏んで、スタート地点に戻り、次の選手にボールを渡すという流れだ。
ここでは「かかとを上げて走りましょう」「ボールに触るときも、前足部で触りましょう」とデモンストレーション。サッカーを始めたばかりの未就学児に対し、基本的な動作を見せて、やり方を提示していく。
また、いきなり実戦に入るのではなく、最初に練習をして、流れを体験させていた。このようなトレーニングの進め方も参考になるだろう。
ほかに、チーム戦という形式を活かし、「チームのためにできることをやる」という意識付けも行っていく。「ボールがコーンに当たらなくて、ガクッとなるのもわかるけど、何度もチャレンジするためには、すぐに戻ってくることが大事だよ」と助言し、個人プレーとチームプレーのバランスを学ばせていた。このあたりの指導のスタンス、声掛けの仕方はぜひ動画で確認してほしい。
続いてはトレーニングを発展させ、味方のパスをゴール前で受け、反転してコーンをめがけてボールを蹴る形にチャレンジ。パス、コントロール、ターン、シュートという、様々な動作を複合させていく。
山本コーチは「浮いているパスのほうが良さそう?」「もっと早く」「惜しい」など、アドバイスと励ましの声を織り交ぜ、子どもたちの集中を切らさないようにしていった。

U6でも取り組める「とりかご」とは?認知・判断にも働きかけられる
最後のトレーニングは「状況判断も磨ける、温泉とりかご」。5対1(もしくは4対1)の形式で行い、限られたスペース内でパスを回しながら、ボール保持の練習を行う。
設定としては、四角形の中で5対1を実施。鬼はコーチが担当し、鬼にボールを奪われるかパスミスをして四角形の外にボールが出たら、鬼が子どもたちを捕まえに行く。その際、四角の外にあるリング(安全地帯)へ移動すると、鬼につかまらないというルールだ。
最初に何度かトライした後、「同じ色のリングには連続して入れない」というルールを追加。認知や状況判断にもアプローチしていく。
山本コーチは「ボール持っている人のところへ、鬼が来るので怖いよね」と話し、「ボール持ってない人はどう?」「もっとボール呼んであげよう」といった声かけを行うことで、周りの選手がボール保持者を助けることを、自然と学ばせていく。
さらに練習が進むにつれて「パスを出した相手には、ボールを戻せない」というルールを追加。こまめにルールを説明することで、うやむやのままプレーすることをなくしていく。
今回のトレーニングは基本スキルの習得だけでなく、チームプレーの基礎となるコミュニケーションや判断力にもアプローチすることができる。年齢に応じた適切な難易度設定と雰囲気づくり、遊び感覚を取り入れたトレーニング構成は、未就学児の指導において、非常に参考になるだろう。
山本コーチの秀逸な雰囲気づくり、レクレーションの要素を入れた練習メニューの詳細は、ぜひCOACH UNITED ACADEMY動画で確認して頂ければと思う。
【講師】山本雅史/
埼玉スタジアム2002サッカースクールで長年指導し、専門学校講師やスポーツ幼児園コンサルタントなどを経験。各年代の監督・ヘッドコーチを歴任し、
現在は、///自己肯定感を高める///をコンセプトとした【エルマルカサッカースクール】の代表として活動している。
→2022年度U-16サッカー 日本代表2名輩出。
また、(一社)日本凸凹支援スポーツ協会の代表理事として、発達障がい児たちにサッカー教室を通じてスポーツ療育『ジャッジをしない個育て』を行っている。
取材・文 鈴木智之