03.06.2025
低学年の指導のポイントはコーチが「伝えすぎない」こと。プレーヤーズファーストでやる気を高める指導法
サッカーの指導を学ぶことができる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-6~U-10年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。
今回のテーマは「状況を見ながら攻める方向を変えて、ゴールに迫る」。サッカーでは、相手がいない場所から攻めることが定石だが、低学年の指導では理屈っぽい説明をすると、子どもたちは聞いていなかったり、集中力を低下させてしまう可能性がある。そのため、わかりやすい言葉で説明し、伝えすぎずにプレーさせる機会を多く作ることが求められる。
そこで今回は、FCトリム代表兼ジュニアチーム監督の宮村正志氏に、ドリブルの技術をベースに、相手のいない方向や空いているスペースへボールを運ぶトレーニングを実践してもらった。
東京都町田市出身の宮村氏は、読売クラブ(現・東京ヴェルディ1969)でジュニアからトップチームまで所属し、プロサッカー選手として湘南ベルマーレ、アビスパ福岡、水戸ホーリーホックでプレーした経験を持つ。
引退後は指導者として、FC町田ゼルビアジュニアユース、日テレ・ベレーザ(現・東京ヴェルディ日テレベレーザ)監督、ヴィットーリアスFC(旧三井千葉SC)を経て、現在はFCトリム代表兼ジュニアチーム監督・ジュニアユースチームコーチを務めている。
複数のJクラブで選手として活躍し、多数の強豪クラブで指導を積んできた宮村氏は、低学年の子どもに対し、どのようなトレーニング、コーチングで、基本スキルと観る力の向上に働きかけていくのだろうか?(文・鈴木智之)
相手がいない方向にボールを運ぶためのドリブル基本技術
最初の動画テーマは「方向を変えるドリブルのドリル」。宮村氏は「この年代はサッカーを楽しむことが大事なので、あまり理屈っぽくならず、失敗には目をつむってあげて、感性を磨くような形で指導してもらえればいいかなと思います」と話す。
トレーニングではウォーミングアップとして「基本的な動作」からスタート。アジリティとボールフィーリングを中心に、スキップやサイドステップ、後ろ走りなどの基本動作を実施。
「お互いにぶつからないようにね。右から行って左から帰るような感じで」と声をかけ、体を動かしていく。その後、腕と足を上げてスキップやサイドステップ、後ろ走りを行っていく。
ドリブルの練習では「足の内側、インサイド使って。右、左、右、左、右、左で、インサイドでボールにタッチする」と実演を交えながら説明。その後、インサイド、アウトサイドタッチ、逆足ドリブル、ジグザグドリブルなど、徐々に技術を発展させていく。
宮村コーチは「ドリブルで右に行った時は、右足の外側(アウトサイド)。左に行った時は左足の外側を使ってターンして方向を変える」とデモンストレーション。
さらに難易度を上げて「足の裏でボールを引いて、立ち足の裏を通して方向を変える」と実演し、「いきなりできなくてもいい」「失敗しても気にしないで」とチャレンジをうながしていった。
動画では、その他のドリブルメニューも収録しているので、全容は動画で確認してほしい。

相手や仲間の動きを観ながらスペースを見つける
2つ目の動画テーマは「観る力を磨く、ドリブル通過ゲーム」。四角形のスペース内に鬼役の選手を3~4人配置し、その中をドリブルで通過する練習を実施。
宮村氏は「四角形のどの方向から入っても構わないので、入った方向と逆サイドの辺に、鬼にボールを触られないで通過すれば1点となります」とルールを説明。
「ドリブルをしながら、相手のことが観えていることが大事」とポイントを伝え、トレーニングに入っていった。
子どもたちには「ドリブルしながら鬼のことを見て、危ないなと思ったら逃げる、行けると思ったら行ってみる」と声をかけ、状況判断の重要性を伝えていく。
さらに具体的な指導として「コーチがドリブルしています。左から鬼が来ました。鬼に触られたくないでしょ。左から鬼が来たら、ボールはどっちに置いておいたほうがいい? 右に置いておいたほうがいいよね」と、実演を交えながら説明。
「鬼が来るのと反対側でボールを持つと、触られないで済む」というアドバイスは、状況を観てプレーする上で参考になる。
プロ選手としてプレーしてきた経験を活かし、選手目線での指導をモットーとする宮村氏。今回の動画では、低学年の子どもたちに必要な基本スキルを、楽しみながら効果的に習得できるトレーニングが収録されている。
特に、わかりやすい言葉での説明や、チャレンジしやすい空間づくり、そしてプレーする機会を多く設けるという指導方針は、ビギナーコーチの方々にとって、大いに参考になるポイントと言えるだろう。
【講師】宮村正志/
東京都町田市出身。読売クラブ(現東京ヴェルディ1969)でジュニアからトップチームまで所属、プロサッカー選手として湘南ベルマーレーアビスパ福岡―水戸ホーリーホックでプレーし引退後サッカー指導者の道へ。
指導歴...FC町田ゼルビアジュニアユース、日テレベレーザ(現東京ヴェルディ日テレベレーザ)監督、ヴィットーリアスFC(旧三井千葉SC)、を経て現在はFCトリム代表兼ジュニアチーム監督・ジュニアユースチームコーチ。保有ライセンスは日本サッカー協会公認B級コーチングライセンス。
選手としてプレーしてきた経験を活かし、選手目線での指導がモットー。
取材・文 鈴木智之