03.10.2025
チームと選手を進化させる、トレーニング構築法を公開!「トレーニングに組み込みたい、4つの要素」とは?
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
今回のテーマは「チームと選手を進化させるトレーニングの作り方」。講師はSC豊橋アゼリアGM兼ヘッドコーチの加藤到氏だ。公立教員のキャリアを経て、愛知県国体選抜チームの監督や愛知県トレセンU-15の監督などを歴任してきた加藤氏。現在は愛知県リーグに所属するSC豊橋アゼリアでヘッドコーチとして活動している。
COACH UNITED ACADEMYでは、現役Jリーガーの個人分析官や指導者向けのセミナーを開催するなど、サッカーを多角的に捉える加藤氏に「トレーニング設計の前に押さえるべき、基礎と要素」について講義をしてもらった。
サッカー指導者として日々のトレーニングをどのように構築するか、その考え方と実践例を知りたい人、必見の内容だ。(文・鈴木智之)
トレーニング構築前に抑えておくべき要素
前編は「トレーニングを考える前に押さえておきたいこと」と「トレーニングの中に組み込みたい要素」について言及。加藤氏は「ゲームから逆算する」という考え方を軸に、トレーニング構築の基本について解説する。
「指導者の方々は、選手やチームの課題を見極め、それぞれの経験や知識を活かしながら日々のトレーニングを考えていると思います」と前置きした上で、加藤氏は重要な要素として「サッカーの目的」を挙げる。
「サッカーのトレーニングを考える際、サッカーの目的を常に頭に入れておく必要があります。大きな目的は『ゴールを奪う』ことと『ゴールを守る』ことです。サッカーは勝敗があるスポーツで、相手より1点でも多く取ったチームが勝ちます。ここから逆算して、どのような方法で攻撃、守備するかを考えていくことが重要です」
さらに加藤氏は、サッカーの4つの局面について説明。それが「攻撃」「攻撃から守備への切り替え」「守備」「守備から攻撃への切り替え」だ。
現代サッカーはこれらの局面が明確に分かれているわけではなく、すべてが繋がりを持って進行していくが、トレーニングを考える上では、この4つの局面を意識することで構築しやすくなる。

エリア区分による指導方針の違い
続いて加藤氏は、ピッチを3つのエリアに区分して考えることの重要性を指摘。それが「自陣ゴール近くのエリア」「中央エリア」「相手ゴール近くのエリア」だ。
「自陣ゴール近くのエリアでは、安全確実なプレーが求められ、チャレンジの要素は少なくなります。中央エリアでは、チャレンジと安全確実さが半々の要素になります。そして相手ゴール近くのエリアでは、チャレンジの要素が大きな部分を占めます」
この考え方は指導者の方針によってウェイトが変わることはあるものの、「今日のトレーニングはどのエリアのプレーをイメージしているのか」を明確にすることで、選手たちに目的が伝わりやすくなるという。
「例えばゴール前の守備のトレーニングなのに、守備陣がどんどんボールを奪いに行ってしまい、後方にスペースを空けてしまうようなことになると、選手たちはどこで何のトレーニングをしているのか理解できず、積み上がっていきません。どのエリアのどのトレーニングをしているのか。選手に伝える必要はありませんが、指導者は理解しておく必要があります」
個人戦術の基本を押さえる
加藤氏の講義はさらに進み、「攻撃」「攻撃から守備への切り替え」「守備」「守備から攻撃への切り替え」の目的を整理。
「ゴールを奪うことが目的なのか、前進が目的なのか。一緒でも構いませんが、どの要素を獲得するためのトレーニングなのかを整理しておくと、選手たちにも伝わりやすいです。一日ですべてを網羅することはできないので、要素を分けて考えると、トレーニングを構築しやすくなります」
さらに「チーム全体の戦術に加えて、個人戦術の基本も抑えておく必要がある」とアドバイス。攻撃面では、ボールを持った選手は「シュート」「ドリブル」「パス」の優先順位を理解し、パスについても「相手の背後」「前を向かせるパス」「相手から遠い足へのパス」という優先順位があることを押さえておく。
守備の個人戦術では「ボールを奪えたら一番いいですが、相手がいい状況でボールを持っていたら、奪うのは難しいもの。そこで『他に奪えるものはない?』と質問をします」と具体例を挙げて説明。
そこで「相手の視野を奪ったり、時間やスペース、自由に攻撃することを奪いましょう」といった話に結びつけていくという。
トレーニングに組み込みたい4つの要素
動画の最後には、1つのトレーニングに組み込みたい4つの要素として「Brain(脳)」「Technique(技術)」「Coordination(調整力)」「Personality(人間性)」を挙げている。
これらのキーワードに1つでもピンと来た人は、ぜひ詳細を「COACH UNITED ACADEMY」の動画で確認してほしい。トレーニング構築の参考になる部分を見つけられるはずだ。
後編では、さらに実践的なトレーニング構築の方法について、解説を行っていく。
【講師】加藤到/
愛知県名古屋市出身。大学卒業後公立高校教諭を経て、現在へ。現在ここいの株式会社ものづくり部所属し、ITARU METHODFOOTBALL 代表(著書「ITARUメソッドの教科書」)、社会人チーム「S C豊橋アゼリア」ヘッドコーチ兼G M、サッカー指導者勉強塾「蹴到ラボ」代表をしている。海外でのプロジェクトも着々と進めており、台湾「EC.DESAFIO TAIPEI」のコーチデベロッパーとして約2ヶ月に1度台湾に赴き現地の選手・コーチたちとチームの強化に当たっている。また指導者講習会やクリニックを展開して指導者養成・選手育成に力を注いでいる。ネパールやウガンダのサッカーアカデミーのコーチとしても活動をしている。JFA 公認 A 級ジェネラルライセンスを所持。
取材・文 鈴木智之