03.14.2025
初心を忘れず、学び続ける。クラッキス松戸ジュニアユース 廣田大輔コーチの指導哲学
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や指導理論を配信中だ。
COACH UNITED ACADEMYに出演してくれた指導者による「サッカー指導を学ぶ」をテーマにしたインタビュー第3回は、クラッキス松戸ジュアユースの廣田大輔コーチだ。
クラッキス松戸は、高校年代へ有望な選手を送り出すクラブとして知られている。なかでもジュニアユースは、ジュニアと高校年代の橋渡しとして、大事な時期でもある。
育成年代の指導経験が豊富な廣田コーチは、日々どのようにしてサッカーを学んでいるのだろうか?
COACH UNITED ACADEMYのトレーニング動画が好評を博した、廣田コーチのインタビューをお届けしたい。(文・鈴木智之)
サッカーの本質を教えてくれた恩師
廣田コーチのサッカー人生は、小学生時代から始まった。名古屋で育ち、中学生の途中で松戸に転居。市立松戸高校でサッカーを続けた。当時の市立松戸は、千葉県でベスト4に入る強豪だった。
その後、大学進学先のサッカー部で人生の転機を迎える。自身のサッカー観を変えた『恩師』との出会いだ。
「高校までは理屈を理解せず、ただやらされていた感覚でした。でも大学の恩師はサッカーを理論的に整理して伝えてくれて、サッカーの奥深さや面白さを教えてくれたんです。指導者ってこういう人なんだ! と衝撃を受けました」
その経験から「自分も若い選手たちに、気づきを与えられる指導者になりたい」と思うようになったという。
指導者として見聞を広げる
指導者としての第一歩は、高校時代に教わった先生の学校で半年間の経験からだった。しかし、当時を振り返り「大学までの選手経験で、サッカーをわかっている気になっていて、いま思うとサッカーそのものが整理できていなかった」と率直に語る。
本格的な転機は、恩師の下で過ごした5年間だった。
「師匠のもとにいた5年間、理詰めで『なんでそのトレーニングをするの?』『なんで? なんで?』って、徹底的に詰められました。自分の指導に対するフィードバックをもらえたことは、大きな財産です。他には、知り合いのコーチの指導現場を見に行ったり、見聞を広げるために、順天堂大学健康・スポーツ科学科目に履修生として通いながら、栄養学や心理学などを学びました」
廣田コーチは、指導者にとってフィードバックの大切さを強調する。
「コーチを始めた頃の自分もそうでしたが、一人でやっていると勘違いしちゃうんですよね。とくに経験の浅い頃は、観えていない部分も正直多いと思います。僕は師匠にフィードバックをもらえたことで成長できました。そのような関係の人がいない場合でも、客観的な視点を持つために、同じクラブの指導者とディスカッションすることは必要だと思います」

10年以上続ける、試合観戦
廣田コーチの学びの方法として特徴的なのは、毎日1試合はサッカーの試合を観ることだ。
「自チームの試合やJリーグの試合、海外の試合を分析しながら見ています。そうすることで、世界のサッカーはこうなっているんだ、Jリーグではこういう現象が起きているんだとわかります。そこから逆算して、自分が教えている子たちには、これが必要だなと考えたりもします」
この習慣は10年以上続いているという。その根底にあるのは「より良い指導者になりたい」という思いだ。
「僕は完璧な指導者ではないので、より多くのことに気づけるようになるための素材であり、引き出しを増やすために続けています。自分は指導者なので、なるべく理路整然としていたい。メンタルをコントロールする意味でも、できる限り毎日継続するようにしています」
初心を忘れない指導者でありたい
廣田コーチも出演し、トレーニング動画が好評を博した、COACH UNITED ACADEMYについては「指導を始めたばかりの方にとって、非常に価値のあるサービス」と評価する。
「トレーニングがメニューや指導の内容にしても、最初は模倣から始まるものだと思います。COACH UNITED ACADEMYを通じて、いろんな方の指導法を知ることで、たくさんの情報や視点を持つことができます。それをベースに、自分なりの色をつけていくためのツールとして、すごく有益だと思います」
廣田コーチは同じく千葉県で活動する、ジェフユナイテッド市原・千葉の茂垣将太監督やブロッソンフットボールクラブの堀中陽介監督の動画に触れ、「彼らとは親しくさせてもらっていますが、動画を観て、素晴らしいトレーニングをしているなと刺激をもらいました」と印象を語る。
そんな廣田コーチに、指導者としての目標を尋ねると、「関わった子どもたちがプロや社会で活躍できる人間になってほしい」と話す。
「自分が恩師との出会いで人生が変わったように、選手たちにとってそんな存在になれたらと思います。キャリアを重ねても、初心を忘れない指導者でありたいです」
恩師との出会いが人生を変えたように、廣田コーチも多くの若い選手たちの人生に影響を与え続けている。初心を忘れず、日々研鑽を重ねる彼の姿勢は、同じ道を志す指導者にとって、大きな励みになるだろう。
取材・文 鈴木智之