03.17.2025
「ゲームから逆算したトレーニング」がレベルアップへの道。実践的なキーファクターとトレーニング構築法を公開!
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前編に引き続き「チームと選手を進化させるトレーニングの作り方」をテーマに、SC豊橋アゼリアGM兼ヘッドコーチの加藤到氏による講義を紹介する。後編では、実際のトレーニングの構築方法や具体例、テーマとキーファクターについて解説していく。(文・鈴木智之)
まずは「テーマ」を設定する
加藤氏はまず、自身がトレーニングを構築する際の基本的な考え方について説明する。
「私がトレーニングを構築する際には、『ウォーミングアップ』『トレーニング1』『トレーニング2』そして『ゲーム』という4つの要素から考えています。日によってはトレーニング3を追加したり、ウォーミングアップを複数に分けることもありますが、基本的にはこの4つから組み立てています」
加藤氏が重視するのは「テーマの設定」だ。前編でも触れた「ゴールを奪う」「前進する」「ゴールを守る」「ボールを奪う」といったテーマを設定することが、トレーニングの目的を明確にする上で欠かせないという。
「選手たちはゲームで勝つため、上手くなるためにトレーニングしています。しかし『今日のテーマは何だろう』『何のためにこれをやっているんだろう』という疑問が頭の中にあると、集中力が低下してしまいます。私も選手時代、目的がはっきりしている時の方が集中力が高まったという経験があります。テーマが明確で目的がはっきりしていることで、上達も早くなると考えています」

トレーニング構築の具体的な流れ
加藤氏が提唱するトレーニング構築の流れは、「ゲームから逆算する」という考え方が基本となっている。
「まず最初に『ゲーム』を考えます。例えば5対5のゲームを想定し、そのゲームの中で獲得させたいテーマに沿った内容を考えます。そして、そのゲームで必要となる『キーファクター』、つまり獲得させたい要素を明確にします」
キーファクターとは、例えばビルドアップをテーマとした場合、「しっかりとポジションを取ること」「パスとコントロールの質を上げること」「優先順位を見た上でプレーすること」「無理に前進せず、ボールを動かすこと」などが含まれるという。
「ゲームとキーファクターが決まれば、そこから逆算して『トレーニング2』を考えます。ここがポイントなのですが、トレーニング2はゲームより難しくなることはありません。逆に『トレーニング1』は『トレーニング2』より難しくなることはなく、『ウォーミングアップ』も同様です。ゲームから少しずつ要素を減らしていくイメージで構築していきます」
例えば、ゲームでは2つのゴールを設置するが、トレーニング2ではゴールを1つにして、攻撃と守備を明確に分けることで、攻守の切り替えという要素を削る。攻撃のトレーニングであれば、攻撃する回数が増えるような内容にする。
トレーニング1ではさらに人数を減らし、ウォーミングアップではパス&コントロールに特化したものを行うなど、要素を削っていきながら構築することがポイントになる。
トレーニングのつながりを意識する
加藤氏が特に強調するのは、「ゲームとトレーニングのつながり」の重要性だ。
「ゲームを2トップのシステムで行うのに、トレーニング1やウォーミングアップで1トップのシステムを採用すると、ゲームとトレーニングのつながりが持てなくなってしまいます。同様に、4バックで守るトレーニングをしているのに、トレーニング1で3バックを採用すると、要素が変わってしまいます。このつながりはとても大事にしています」
最終的には、ウォーミングアップからトレーニング1、トレーニング2、そしてゲームへと積み上げられていくか確認し、実際のトレーニングに臨むという流れだ。
動画では「フィニッシュ」をテーマにした、トレーニングの構成要素と例を紹介。具体的には、シュートの質、コントロールの質、観る、良いポジション、良い準備、リバウンドの意識、動き出しの質(関わり)、シュートの意識といった、キーファクターを挙げている。
トレーニングの流れとしては、ウォーミングアップで「シュートドリル」を行い、トレーニング1では「3対2+GK」、トレーニング2では「3対3+GK」、ゲームでは「5対5+GK」という流れだ。詳細は「COACH UNITED ACADEMY」の動画を見て、深堀りしていただければと思う。
指導者が頭の中を整理する
加藤氏は講義のまとめとして、トレーニングの目的の重要性を再度強調する。
「指導者がしっかりと頭の中を整理して、トレーニングを系統立てて考えていくことは、選手の成長には欠かせない要素です。『今日のトレーニングの目的は何か』『どんな要素を獲得させたいか』『どんなプレーを獲得させたいか』を常に考えながらトレーニングを作ることで、トレーニングを組み立てる楽しさも生まれてきます。そして、それがゲームの中で表現されたときに、指導者としての喜びにつながるのです」
加藤氏が提唱する「ゲームから逆算するトレーニング構築法」は、質の高いトレーニングを構築するための、具体的な方法論になっている。
動画では攻守におけるキーファクターも紹介しているので、ぜひ動画を見て、トレーニングの組み立て方を学んで頂ければと思う。
【講師】加藤到/
愛知県名古屋市出身。大学卒業後公立高校教諭を経て、現在へ。現在ここいの株式会社ものづくり部所属し、ITARU METHODFOOTBALL 代表(著書「ITARUメソッドの教科書」)、社会人チーム「S C豊橋アゼリア」ヘッドコーチ兼G M、サッカー指導者勉強塾「蹴到ラボ」代表をしている。海外でのプロジェクトも着々と進めており、台湾「EC.DESAFIO TAIPEI」のコーチデベロッパーとして約2ヶ月に1度台湾に赴き現地の選手・コーチたちとチームの強化に当たっている。また指導者講習会やクリニックを展開して指導者養成・選手育成に力を注いでいる。ネパールやウガンダのサッカーアカデミーのコーチとしても活動をしている。JFA 公認 A 級ジェネラルライセンスを所持。
取材・文 鈴木智之