05.01.2025
J1・J2で346試合出場の選手経験豊富な指導者が実演!ボールを奪いきる守備の基準を理解する実戦形式の練習法
サッカーの指導を学ぶことができる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-6~U-10年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。
今回のテーマは「ボールを奪い切るための守備トレーニング」。試合で勝つため、良い攻撃をするために、守備でのハードワーク、ハードなプレスは重要な役割を担っている。
そこで今回は、SALTZ FC U-15監督の中払大介氏に、ボールを奪い切るための実践的なトレーニングを紹介してもらった。中払氏はアビスパ福岡や京都サンガでMFとして活躍。プロサッカー選手として14年のキャリアを持ち、J1、J2通算346試合に出場した。A級ジェネラルライセンスを保持し、福岡県の強豪クラブSALTZ FCでU-15監督を務めている。
プロとして経験豊富な中払氏は、ジュニア年代の子どもたちに、どのようなトレーニング、声掛けを通じて、守備の意識を植え付けていくのだろうか?(文・鈴木智之)
ボールを奪いに行く、奪わせない攻守の攻防
前編のテーマは「ボールに行く、奪い切る1対1」。中払コーチは「ヨーロッパで評価されている遠藤航選手は、ボールを奪い切るところが評価されています。私たちも、どこまでそこに近づけるかを意識して、トレーニングを行っています」と話す。
最初のトレーニングは「1対1ボールキープ」。パス交換から、笛の合図で1対1のボールキープを行う。
指導のポイントとして、手の使い方やボールを奪う際の体のぶつけ方を重視し、「まずは抜かれてもいいからボールに行く。そこから始めて、次はボールを奪い切るところまでステップアップしていく」と説明する。
トレーニング中、中払コーチは「前腕で相手をブロックする」プレーを実演。そうすることで、相手とボールの間に距離を作り、ボールをキープすることができる。一方、守備側には「相手に対して腰を入れて取る」とアドバイス。下から覗いて、相手の重心を崩すというテクニックをデモンストレーションしているので、詳細は動画で確認してほしい。
また、中払コーチは「ゴー!」「ナイス!」「どこで相手を感じる?」などの声をかけながら、トレーニングの強度を上げていく。ほかに、腕をうまく使えていない、守備の選手に対して「相手の胸を押さえること」をアドバイスし、プレーの質を向上させていった。
豊富な実績を持つ中払コーチの言葉には重みがあり、選手たちも真剣に取り組んでいる様子が伝わってくる。

ボールを奪うとは?強度の高い守備を見に付ける練習法
2つ目のトレーニング。テーマは「強度の高い、守備の基準」。トレーニングでは16m×16mメートルのスペースで「5対5のボールポゼッション」を実施。中払コーチは「狭いスペースで相手との距離を近くします。その中で攻守の切り替えを早くして、複数でボールを奪い切ることを体感してもらうためのトレーニングです」と説明する。
中払コーチはプレーを見ながら、選手たちに「ボールを奪う守備をしてほしい」と明確な目標を示し、「もっと行かないと」と鼓舞。
特に印象的だったのは、消極的な守備に対する指導だ。「見ているのではなく、奪いに行く」「相手から離れない。体をぶつける」といった声かけで、守備の基準を高く求めていく。
ジュニア年代では「守備をしている風で、実は守備をしていないのと同じ」という現象がよく見られる。主な原因が「相手を見ているだけで、間合いを縮めて体をぶつけられない」ことだ。
あと1歩寄せることで、攻撃の自由を奪うことができる場面は多々ある。そこで「守備をしているふりはだめ。抜かれてもいいから、2度、3度行こう」と、まずは行く、寄せるといった部分を強調していった。
攻撃側に対しても「最初にトレーニングしたように、腕の使い方がもっと上手くならないと」「しっかり相手に腕ぶつけられれば、ボールを運べる」と、ボールを失わないための腕の使い方についても指導。
「守備がだいぶ良くなってきたので、攻撃側はそれを上回るために、ボールを失わないことを意識しよう」と声をかけ、攻守両面から、質の高いトレーニングを展開していった。
今回のトレーニングは、単なる技術だけでなく「ボールに対する姿勢」「積極的な守備」「腕の使い方」など、サッカーの本質的な部分を学ぶことができる。ジュニア年代から正しい体の使い方とボールを奪い切るための意識を身につけることは、選手としての成長に大きく貢献するだろう。
興味のある方は、ぜひCOACH UNITED ACADEMY動画を確認してほしい。たくさんの学びを得られるはずだ。
【講師】中払大介/
静岡県立清水東高校卒業後、アビスパ福岡や京都パープルサンガでMFとして活躍しプロサッカー選手として14年間プレー。京都では天皇杯優勝も経験。J1、J2通算346試合出場。引退後はサッカー解説者としてスカパー!のサッカー解説者や福岡のFBSでスポーツコメンテーター、そしてDAZNの解説者として活躍、福岡県SALTZFCではU-15監督を務める。
A級ジェネラルライセンス保持
取材・文 鈴木智之